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未だにメコリと潰れている顔面が仕切りから離れない、そんな祐樹も見える。そして、その向こう側では真向が、ふらふらと左へ走っている。ふぇぇぇと目を閉めて、泣いているような顔で頭を押さえながら、恥ずかしそうに。まるで舞台裏へ消えてゆくかのようだ。
スケートリンクへの入口とは逆方向に進んでいるから、そんな風に見えなくもなかった。
「真向あっちっ! あっち逆!」と僕は思わず右腕がピンとなったほど右へ指差した。
途端、真向がピタリと止まって、ほんと? と上目遣いで泣き止んだように見てきた。
そしてまたすぐに、ふぇぇぇと目を閉めながら、右のスケートリンクへの入口へ走り出す。本当に「はじゅかしぃよ〜」という顔だ。それを見て僕は思った。ババアであってたまるかと。
今の真向がイラストチックだからなおさらそう思う。現実での真向だって普通にかわいいと思う。ババアなのは笑い方だけだ。なのに真向の全部がババアなように言っている祐樹には、これが良い薬になってくれればと思う。
そして、祐樹の方はと顔を向けた。祐樹の顔面が仕切りから離れていた。ようやくである。しかし体の方は爪先をつけて正座を始めた。
祐樹の頭も、全身も震えている。それは恐れではないはずだ。怒りの震えか。反省の震えか。男の涙は見せられねぇYOってことなのかも分からない。ただ「やっ……」と微かに聞こえた祐樹の声が、泣いているように聞こえた。
が、「ッ――てくれたぁああああああッ!!」と祐樹が、ガアッ!! と振り返り返りながら立ち上がった。
ハ、と僕も祐樹の視線の先へ顔を向ける。真向がスケートリンクに足を踏み入れている。




