表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/68

___________________

 祐樹(ゆうき)がまた真向(まこ)へ走り出した。

 真向がハ、とそれに気づくや否やギッと祐樹を睨みつけたが、すぐにううっと眉尻をたらす。

 心の底から怯えているように。

 僕はハ、となった。真向のそれが、強がったように見えたから。

 間違いなく真向は無理して強がったのだから。

 やめろお!! と叫びながら僕も、反射的に走り出そうとした。なのに藤谷(ふじたに)が僕の服の右腕を(つか)んで必死に引っ張ってきたから、行けない。

「どうしてっ」と振り返るが、不安一色で眉尻を下げる藤谷が弱々しく(かぶり)を振った。

 さらにはそれとほぼ同時に「なめるなぁあッ!!」の真向の怒声(どせい)を聞いた自分の耳を疑った。

 は!? と真向の方へ顔を戻した自分の目も、疑った。

 なんと真向が気合一番、強気の顔で()んだと思えば祐樹を踏み台にしたからだ。なんでだよ。

 無理して強がったんじゃなかったのかよ!?

 そんな真向さんが器用に今、透明な仕切りの上に下り立った。

 それを見て僕は、本当は強がっていない!? と思ったがすぐに、眉根を寄せ上げる真向の、食いしばる歯が少し見えるほど仕切りの方を睨みつける(さま)に気づいて、かなり強がっているのが分かった。真向の睨みつける先の仕切りでは、前のめりの祐樹の顔面がメコリと潰れるほどぶつかったままでいる。

 マジかよ……とも僕は思った。なんと真向が瞬間的に両膝を曲げたかと思えば、急激に跳び上がったからだ。スケート靴でやったとは思えない跳躍(ちょうやく)

 そしてちょうど、透明な仕切りの直前にまで(かぶ)さっている二階席の裏側(てんじょう)に脳天を思いっきりぶつけた。ゴーンという音どころではなさそうなほど。

 それで死んだかのように、透明な仕切りの向こう側へ、落ちた。あああああああああああ!

 叫んでしまう。「真向ォォォォ!」と思わず叫んでしまう。そして藤谷の忍び笑いが笑いを(こら)えているように聞こえている。そういえば真向が頭をぶつけた直後にも、藤谷の「むッ!!」と吹き出したのが聞こえた気がした。

 そのことが思い出された時にちょうど僕は叫び終えていた。だから藤谷の方を見てみると、藤谷がしゃがみ込みながら顔を両手で隠している。「ごめん……真向ごめん」とお腹の辺りが苦しそうに震えている。でも、真向は!? と僕は顔を戻した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ