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僕の笑顔が好きだと、そして、その笑顔を二度と見られなくなるのは嫌だと、言ってくれた。また一緒に遊びたいとも言ってくれた。
今でもやっぱり、信じられないくらいだ。
誰も気づいてくれない、みんな関わりたくないと無視しているはずなのだから。
なのに、僕に気づいてくれた。
信じられないくらい嬉しかった。忘れていたものを思い出すことができた。
両手を首から離して振り返る。その時にはもう、抱きしめられていた。
その温かくて柔らかい感覚も、心地いい香りも、あの頃のそれらとなにも変わらない。
そしてその時に、僕は名前を思い出したんだ。
「YO」
まるで真右から冷たい水をぶっかけられた。ひっ! と目を見開いた。
知らない。知らない、初めて聞いた女の子の声。
幼い感じは微かにするが、妙に大人びたような言い方の声。
さっきと全く、なにもかもが違う。
囁かれたのは右の耳元。まるで昔に見た怖い夢の、その中で聞いた声のようにしか思えない。
ゾ、としているのが治まらない。
背骨の上の皮膚をナイフの切っ先で、ゆったりとなぞられているような感覚。鮮明な感覚。
そうだよ。
投げかけられた言葉は受話器越しからのものだ。
抱きしめられたのは家の門の前でじゃないか。
見たい。
あんたはいったい誰なんだって、気になる。
もう、完全になにもかもを鮮明に感じられて、起きている時と同じ感覚に戻ったんだと思う。
目だけでも向ければ少しは見えるだろう。怖いもの見たさだということも解っている。
でももし後悔するものいや、……見たい。
見たいんだ。
なのに、まばたきさえもできない。
目だって乾き切りそうで。
心臓も破裂しそうなくらいで。
見たいのに、どうして。
「YOU REMEMBER NOW?」




