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なにかが違う気がする。
全力疾走が必死過ぎるし、なにかが違う気がするのは勘違いではなさそうだ。
そうだ。感動の再会は純粋のはず。気配とか、嫌な予感なんて感じるはずがない。
「しかし!」と声を荒らげた祐樹のそれは、「櫻は別だ!!」
怒号だった。ばっちりブチ切れていた。
――っていうか僕なのかよ!?
「今に見てろよっ。ただで済むと思う」と祐樹が言ったあたりで、真向が何をしたのか分からなかった。
祐樹へ急接近していったところは分かる。
その後だ。勢いに乗って流れるように、そして豪快に肘鉄でかっ飛ばした。
だから祐樹がギュンと、白い氷の床に倒れこみながらふっ飛んでゆく。なんとまた見えない壁を突き破って、なぜかその時にゴングが鳴った。
真向が「あ」とようやく我に返ったように言う。
もう僕は藤谷と一緒に叫んでいた。「真向ぉおおおおお!!」と思わず、バカーという感じで。
今度は桶の音がカコーンと鳴った。温泉ではないのに突然。
はぁ!? と思って音のした、祐樹のふっ飛んでいった方へ振り向くと、防爆ガラスの壁のところで祐樹が頭をぶつけて跳ね返ったらしく、じわじわとこっちの方へ滑り戻ってきている。
「ダメだよ!」と藤谷が、声が上ずるほど言った。「ダメだよ、打ち返すのは!」と。
僕もハ、と顔を戻しながらそうだよ! と思う。
「そーだよっ、いい感じっぽくなったし、打ち返すほどじゃなかったって!」
肝心の真向の方は、硬直を続けていた。顔も青ざめていて、危機感の真っ只中である。
が、てへっという感じで手を後頭部に回してニシシと笑いだした。
「いや笑っちゃダメだよ!」と藤谷が声を上ずらせた後に、僕も声が上ずった。「っていうか桶の音って、」と言い出しながら。
「どういう感じなんだ!? 思いっきりぶつかった音なの!?」
「櫻、それは後で考えよう」
「いいよ!」
と僕が藤谷に頷いた途端、真向が「しょーがないでしょ!」と祐樹へ指を差した。
ガッと、あいつのせいだと言わんばかりに。うん。
確かに感じた。
感じましたとも、守ってやったんだぜっという愛を。愛かどうかはよくわからないけれど。




