表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/68

__________________

「ここだって祐樹(ゆうき)のおかげなのにね」と藤谷(ふじたに)が少し残念そうに言った。

 僕もそうも思う。そして、それも一つだ。

 ルニは基本、複数人で空間創造(かんそう)すると、複数の空間が別々に創造される。しかし共通の願いがあれば融合することができるのだが、それについてをウェブサイトで見つけたのが祐樹だ。実際にやってみせた人が載せたブログを読んだとのこと。実験するのも、失敗したって、ただ別々に間創(かんそう)されるだけだから安全だという。

 成功するのも簡単だった。

 みんなに共通した願いがもう、二つもあったから。

 この天山層建山脈(あめやまのそうけんざんみゃく)の最上階。四県も五県も遠くにある、陸上の端までも望めるのは高度一千メートルを越えているからだ。そういうところにあるこのスケート場がお気に入りだったのに、去年の夏に閉鎖されてしまったのが本当に残念だった。

 フィギュアスケートの公演が行われた場所でもあったし、中学一年の頃、芸術鑑賞の授業でその公演を観ることができた。PCゲームの舞台になったことだってあるのは、幸生(こうき)の買ったゲームを貸してもらった時に知った。閉鎖される前に、遊びにだってきたことがあるが、僕は二回だけだ。

 しかしである。祐樹は真向(まこ)と藤谷よりも、春夏秋冬、何度もきたことがあった。

 だから祐樹は、ここも、ここから望める景色も記憶してくれていた。

 現実(あっち)は冬だが、ルニ・オーソナー(こっち)では春である。

 今では新京(あらみやこ)多摩崎(たまさき)も、土地の七割が自然になっている。だから春には満開な桜が、河川(かせん)のように続いているところがあるほど、たくさん見れる。

 不規則に濃さの違う葉緑(はみどり)の海の、その中に馴染む桜色のグラデーションも不規則だ。葉っぱの落ちた枝木の乾いた茶色も点々とある。見上げるように顔を上げると海原の入口に到達する。

 なんだか清々しい、そんな気持ちにさせてくれただけではない。次に同じ気持ちで観れるか分からない。その景色に元気付けられるかもしれない。感動だってするかも分からない。写真を見るのとは違う。なのに、諸行無常の現実でもない。恐らく永遠に変わらない現実として、これからもずっと同じ姿を、目の前に展開してくれるのだと思う。

 それは嬉しいことだとも、僕は感じた。同じ姿にまた会えるのだから。

 それほどのことをしてくれたのになんだあの「おーい」と祐樹が今、叫んできたような気がしたが気のせいだと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ