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第十一話 言葉にしないと伝わらないと言っても過言ではないのだ(part3)

 優希から、全てを丸く収めることが出来るかもしれない『魔法の答え』を教えてもらった拓人。

優希はそれを言うと、『健闘を祈る』との言葉を残し、足早に拓人の元を後にした。

そして拓人は、再び公園に一人となった。


「鏑木さん……絶対楽しんでるよ」


 優希の言葉を聞いた拓人が、嘆息交じりに呟いた。


「どうしたらいいんだろうなぁ……」


 誰に言うでもなく、そう言葉を漏らした拓人。

すると、背後からその言葉に返答があった。


「何があったか知らないが、随分と疲れた背中をしているな、霧島」


 拓人は慌てて振り向く。

そこにはここしばらく顔を見なかった、相馬の姿があった。


「相馬さん!?なんでこんなところに居るんですか!?」


 相馬――優希と同じ三年生で人間行動研究会の一人である。

めったに顔を出さないことで、サークル内では知られている人物。

そんな遭遇率の低い相馬が拓人の後ろに、まるで背後霊のように立っていた。


「何故と言われてもな。偶然としか言えない」


「はあ……」


「隣、良いか?」


「あ、どうぞ」


 拓人の隣、先程まで優希がいた所に相馬が座った。


「それで、何があったんだ?話してみろ」


「……実は――」


 拓人は湊と香織の二人から告白されて困っていること。

自分としては今の関係を崩したくないと思っていること掻い摘んで話した。


「サークル内でそんな事が起こっていたのか」


 相馬は腕を組んでしみじみとした口調で言った。


「たまには顔を出してくださいよ……」


「それは拒否する」


「そうですか……。まあ、言って顔を出すならとっくに来てますよね」


 拓人は大きなため息をついた。


「それで、どうしたら良いですか、僕は……」


 拓人には優希から授かった『魔法の答え』もあるが、それは最終手段にしたかった。

 藁にもすがるような気持ちで、拓人は相馬に聞いた。


「それはお前が決めることだろう。お前は、俺の答えをそのまま相手に伝える気か?」


「いや、そんなつもりは――」


 相馬に痛いところをつかれ、口ごもってしまう拓人。

 確かに、自分で考えることをしていなかった。

拓人は自分の優柔不断さを呪った。


「俺が気になっていること、聞いても良いか?」


「なんですか?」


 相馬はそう前置きをして拓人に聞く。


「お前に付き合う気はあるのか?」


「え?」


 拓人は素っ頓狂な声を上げた。

拓人にとっては、それ程意外性のある質問だった。


「だから、お前に付き合う気はあるのかと聞いているんだ。さっきお前は『今のままの関係が良い』と言っていたな。だが、現状だとそれは不可能に近い。出来たとしても心の整理が付いた当分先のことになるだろう。この場合お前には『付き合う』か『振る』の二択しか残されていない。そうなると、お前に付き合う気があるかないかが重要だと思うんだが……どうだ?」


「それは――」


 拓人は答えを出せない。


「だったら言い方を変えよう。実際には二人から告白されたわけだが――仮に、もしも片方から――法月から、あるいは橘から告白を受けていた場合は、どうしていた?」


 相馬は拓人の目を見て言った。

その目からは、拓人の為に真剣に考えていることが覗えた。

拓人はそれに応えるため、考える。

 熟考に熟考を重ねる。

その結果、出た結論は――


「付き合っていたでしょうね」


 ぽつりと拓人は言った。


「それは、どう言う理由からだ?告白を無下にしたら相手が可哀そうだからか?今までのように仲良く出来る自信がないからか?」


 相馬は矢継ぎ早に言った。

拓人は首を横に振る。

どちらでもないと、首を横に振る。


「今気が付いたんですけど……好きだから、付き合おうと思いました」


「と言うことは何か?二人とも好きと言うことか?」


 相馬は尋ねる。


「はい。二人とも好きだから、二人から告白されたら――応えられない」


 拓人は知っ歌詞とした口調で、自ら言い聞かせるよう言った。


「ならば二つ、選択肢をやろう。どの選択肢がバッドエンドに行くか、トゥルーエンドに行くかは俺も分からん。全ては神のみぞ知る。いいか、これはギャルゲーだ」


「急に安っぽくなりましたね、僕の恋路」


 そう言えば相馬はそういう類のゲームが大好物だったなと今更ながら拓人は思い出していた。


「まずは――二人とも振る。堅実な策だな。これを取れば、今は気まずいかもしれないが、その内時間が解決して、今と同じような関係に戻れるかもしれない。もちろん、今と全く同じと言う訳にはいかないだろう。どちらも必ず、拓人への好意を完全に忘れることが出来るとも限らないからな。相手への負担も大きい」


「…………」


 拓人は無言でうなずく。

相馬は話を続ける。


「次の選択肢だが――二人と付き合う。大冒険だな。この選択肢を取れば、どうなるかは俺も分からない。二人からビンタの制裁を受けるかもしれないし、ひょっとしたら大団円なんてこともあるかもしれない。何が起こるか分からない選択肢だな」


「……鏑木さんと同じ意見ですね、これは」


 拓人は言った。

そう、優希が拓人に言った『魔法の答え』とはこのことだ。

二人と同時に付き合ってしまえば良い――それが優希の出した答えだった。

 相馬はそれを聞いて、


「ほう、そうなのか。それは知らなかったな」


 拓人から視線を逸らして、そう言った。


「まあ、俺から言えるのはこれくらいだ。後は自力で考えろ。俺は帰る」


 相馬はベンチから腰を上げる。

そして何も言わずに、拓人の元を後にした。

 拓人は思った。


「……相馬さん、鏑木さんに言われてきたんだろうなぁ」


 最初から相馬はおかしかった。

拓人の隣に座って早々『何があったんだ?』と言った。

これは既に拓人の身に何かがあったからこその言葉だ。

普通ならば『どうした?』と言うのが自然である。

 次に物分かりの良さだ。

拓人はかなり端折って、あらましを説明していた。

にも拘らず、相馬はかなり深いところまで知っていた。

これは事前に誰かから拓人にあったことを聞いていなければ不可能なことだ。

 拓人に告白した二人がこんな根回しをするとは思えない。

となると、消去法で優希しか残らない。

恐らく、優希が拓人のもとを去った後に、相馬に連絡したのだろう。

『たまにはサークルの為に力を貸せ』とでも脅して。


「鏑木さんらしいな……」


 そんな事を呟く拓人の気持ちは、既に決まっていた。

拓人はおもむろに、ベンチから重い腰を上げた。

向かうは部室――湊と香織の元である。

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