<第七話>
商店街の界隈は小降りの雨で霞んで、濡れている。
どこか、冷ややかな雰囲気が漂っている。 人通りはまばらだ。
傘もささずジーパンのポケットに手を入れてすたすたと歩く金髪のお兄さんや、傘をさし杖をつきながら歩いているお婆さんなど、みんな自分の用事に合わせて行動している。
僕はといえば、坂城の歩幅に合わして駅に続いて真っ直ぐに伸びた道路の右側、錆びた色の低い塀で囲ってある路地を歩いている。
路地に沿って様々な店が並んでいる。
低料金散髪屋、古本屋、レンタルビデオ屋、どの店も自分を主張するようにネオンを輝かせている。
どんより暗い雰囲気の漂っている駅前はネオンの光で居たたまれない場所のように見える。
「まるで都会の歓楽街に訪れたような気分だね」
僕たちがちょうど一番光を出しているレンタルビデオ屋を通り過ぎた時に坂城が言った。 僕たちのいる此処。
つまりこの市はあまり都会じゃない。
地方都市とはまだ呼べないかもしれない。
だが、この駅前のネオン煌めかせる店が立ち並ぶ辺り一帯はテレビでよく見る東京の歓楽街を想起させた。
「天候が天候だからね。そう思うのも無理はないよ。 それにどの店も駅に集まる人を呼び込みたいだろうし、目立つ手段は厭わないんだよ」
「それは大変だね。でもなぜか僕には疲れてしまうよ。そういうのは」
坂城は上半身を曲げて後ろを振り返りネオン煌めかせる店を見ながら言った。
「本当にまったく」
坂城の生き方に少し親近感を覚えた。
「そうだね」
そんな会話をしているうちに坂城は目的地に向かう確実な歩幅になった。
僕もそれに合わせる。
坂城が向かおうとしているのは店と店の間にある人が横に3人並んで通れる程の道だと分かった。
「ここだ」
坂城は道の入り口で立ち止まって言った。
道は淡い闇に続いていた。
ネオンの光が入ってくることもない。
なぜ坂城がこの道を探していたのかは分からない。ただ僕は坂城についてきた。
「この道がなんなの?」
僕はそう聞いた。
僕たちはとっくに傘をさすのを辞めていた。
弱い雨の線が坂城の横顔を突っ切っている。
坂城は僕のほうに顔を向けて言った。
「ここに影がいる」




