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序:夕日と少年

あれは陽が空を半分赤にもう半分を紫にしていた時に起こった。

僕はその頃小学三年生で、友達と山の開けた場所にある空き地で遊んだ帰り道にその赤と紫の空を見ていた。 体が赤と紫に貫かれてゆくのがなんとなく嬉しい。そう感じた。


友達は先に帰ってしまった。

でも僕はさみしくなんかなくて、陽に照らされて誇らしいと思った。

空き地で転けた時にできたキズも陽を浴びて痛みがなくなっていた。太陽は偉大だ、と思う一瞬。


「太陽はね、生命エネルギーの源なんだ」


紫が赤を浸食しはじめたのを僕が気づいたのと同時に、横にいつの間にか男の子が立っていて太陽の沈むのを見ながら僕に言った。


「だから君の傷も癒せる。ほら、」



あったかいと感じる。

膝に手が触れている。

男の子の手だった。手の隙間から光が漏れる。太陽の陽に似ている。


「これでいい」

男の子が手をのけると膝の傷がなくなっていた。治っていた。

「ありがとう」

僕は心から言った。不思議だと思ったけど太陽の力ならなっとくできると思った。


「いいんだよ。でも太陽の力は太陽が出ている時にしか効果はないんだ。力の源はあくまでも太陽自身だからね」


僕はうなずく。

筋が通っていると思う。

そして、太陽はもう空にはなかった。紫が今度は完璧な黒になろうとしている。

あたりまえのように、僕の横にはあの男の子はいなかった。

あたりまえのように消えた。

でも僕はまた会えるような、なんの根拠もない考えがあった。

考えというより願いに近い、もっとも薄く弱いものだった。

僕はその薄く弱いものを抱えて、完璧な黒が侵した空間を走った。自分の家を目指して。


これはアニメとか本でよくある始まりまたは序章とかいうものだったのかもしれない。

何か不思議で心踊る冒険とかの選ばれた者だけが入ることの許される秘密の入り口だったんだ。

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