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【第2部】1秒ストライカー 〜1秒先の未来が見えるおっさん、サッカーで人生やり直す〜  作者: そきおこ
第1章 テンリーグ

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4/8

第4話 7/19日曜 どうしたら良いか分からない

“知らない天井だ。

……テンプレだね”


 春斗は目を覚ますと、くだらないことを考えながらまどろんでいる。


“さて、サッカーやるって言ったけど、何すればいいんだ?”


 昨日はぐっすり寝たらしい。

春斗は起き上がり、部屋の中を見渡す。


 時計は5:00を示している。


 部屋の中は、大学受験の時に何度か利用したことがあるビジネスホテルのようなつくりになっており、洗面台にはフェイスタオルとバスタオル、それに歯ブラシが置いてあった。


 部屋のカーテンを開けて外を眺めると、芝生が敷き詰められたサッカー場の景色が目に飛びこんできた。


 まだ早朝だからか、人の姿はない。

昨晩は疲れもあり、そのまま寝てしまった。

春斗はすぐにシャワーを浴び、歯を磨いた。

下着も含め、着替えはない。


“おれって、ほんとにノープランだな”


 今さら反省してもどうしようもない。

とにかく昨日と同じ物に着替えた。


“えっと、部屋の鍵は……

あった、これか。

まだ早いけど、とりあえず部屋を出てみよう”


 春斗の部屋は2階にあったので、廊下の中央にある階段から1階に降りた。


 1階はロビーになっており、受付カウンターもあるが人の気配はない。


 ロビーの横にはレストランがあり、そちらから忙しく準備する音と味噌汁の香りが漂っている。


“ここで朝飯食えるのか。

おれって食っていいのかな?”


 ヨウには、「ここでの生活は自分で考えて解決しろ」と言われている。


 よって、未だに何も分からない。


 説明資料も要約すれば、「がんばれ」としか書いていなかった。


 夏海が補足説明をしたのだが、春斗は聞いていなかったので自業自得である。


“まだ人も少ないみたいだし、散歩するか”


 食堂の厨房に入って聞くような勇気もない春斗は、やることもないのでクラブハウスから外に出た。


“え?これどうなってるんだ?”


 春斗は泊まっていたクラブハウスを見上げて足を止めた。


 説明資料を再度ぱらぱらとめくってみるが、地図などの情報は記載されていない。


“なんだこの建物……

めちゃくちゃデカい。

朝食まで時間もありそうだから、ぐるっと見てくるか”


 時間を潰そうと思いつつクラブハウスを一周してきたが、春斗は完全に圧倒されてしまった。


 とにかく広い。

歩いても歩いても、クラブハウスが終わらない。


“あっちの建物なんて、もう高級リゾートホテルじゃん……”


 テレビで見た高級ホテルよりも、よっぽど高そうに見える。


“おれ、こんなとこにいてもいいのかな”


 高級エリアが見えてきた辺りで、気後れして引き返してしまった。


 朝日が昇り、緑の芝生や庭園風景が美しく照らされている。


 だが、春斗の頭の中は今をどうすればいいかでいっぱいで、その景色はほとんど目に入ってこなかった。


 そんな気持ちでふらふらとクラブハウスの入口に向かって歩いていると、不意に前方から若い男性が近づいてくるのに気づいた。


「おはようございます!!」


 その若い男性は、場違いなくらい元気な声で挨拶してきた。


 春斗も慌てて挨拶を返したが、不安のにじんだ小さな声しか出なかった。


「お兄さん、初めて会いますね。

いつここに来たんですか?」


「えっと、昨日からです」


 問われた春斗は、咳払いをしてから小さく答えた。

自分でも情けなくなるくらい、小さな声だった。


「そうですか〜。さっぱり分からないですよね、ここのルールとか。

良かったら、朝食一緒に食べませんか?

情報共有しましょうよ!」


“あ、あやしい”


 そう思った春斗だが、相手は見たところ高校生くらいの年下だ。


 警戒心は持ちつつも、朝食くらい大丈夫だろうと考えて彼の提案に乗ることにした。


「僕の名前は真壁秋人まかべしゅうとっていいます。

高校2年なんで、年下だと思います。

シュートって、呼び捨てしてもらっていいっすよ」


「初めまして。

おれは山崎春斗、大学2年生です。

昨日、ここに来たんだけど、ほんとに右も左も分からないんだ。

シュート君、いろいろ教えてください」


 シュートは頷くと、春斗を促してクラブハウスのロビーに向かって歩き出した。


「朝食は6時からなんだけど、もう入れますよ。

ほら、もう開いてる」


 言われるがままについていくと、シュートはレストランの入口で係員にコインを数枚手渡した。


「え?おれ、いまお金持ってないよ?」


 春斗が慌ててシュートに声をかけた。


「春斗さん、部屋のカードキーありますよね?

カードキーをここにかざしてください」


 言われるがままに、春斗はズボンのポケットからカードキーを取り出して受付にある端末にかざした。


 ピピ。


 電子音が鳴るのを確認して、係員が中に入れてくれた。


“分かんないことが多すぎる……”


 春斗は落ち着かず、朝から冷や汗をかきながら朝食会場に入っていった。

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