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27話 なにが見える

神様サバイバル6日目

街は、静かだった。


いや。

正確には、“息を潜めていた”。


黒闇破滅が歩いている。

それだけで、人は道を空けた。


武装した男たち。

銃。

鉄パイプ。

刃物。


そして、その中心。

黒いコートを羽織った男。

黒闇破滅。


住民たちは窓を閉める。

視線だけが、隙間から覗いていた。


「……肉まで消えるとはなぁ」


部下の一人がぼやく。

コンビニを漁りながら。


「缶詰もスッカスカっすよ」


「野菜嫌いなんすけど」


別の部下が笑う。

黒闇は答えない。


周囲を見ている。

人の流れ。

物資。

逃げ道。

癖みたいに。


「黒闇さん」


後ろから声。


「女と子供は、また攫ってくんですよね?」


黒闇は歩きながら答える。


「あぁ」


短い返事。


「傷はつけるなよ」


「へいへい」


部下が軽く返す。


「分かってやすって」


その会話を、遠くの住民たちは怯えながら聞いていた。


まるで。

“悪党の王”を見るみたいに。



しばらく歩いたところで。

一軒の店が目に入る。


古い建物。

看板には、


【夢見館】


と書かれていた。


「……占い館?」


部下が呟く。


「ここ、よく当たるって有名でしたぜ」


「予約も取れねぇとか」


「今はやってないでしょうが」


黒闇は数秒だけ店を見る。


「入るぞ」


そのまま扉を開ける。

鍵は意味を失っている。


部下たちが雪崩れ込む。


引き出し。

棚。

キッチン。

遠慮なく漁る。


「食い物ねぇな」


「婆さん一人暮らしか?」


そのとき。

押し入れが揺れた。


「……おい」


部下が近づく。

布団を剥がす。


「っ!!」


中に、人がいた。

小柄な老婆。


白髪。

深い皺。

震えている。


「出ろ」


銃を向ける。

老婆は震えながら這い出てきた。


「ま、待ってください……」


掠れた声。


「命だけは……」


黒闇が近づく。

老婆を見下ろす。


「……誰だ」


夢見羽衣(ゆめみはごろも)……」


老婆は頭を下げる。


「この館の占い師です……」


部下の一人が笑う。


「占い師ぃ?」


「こんな時代に?」


別の男が黒闇を見る。


「黒闇さん、女子供は攫うんですよね?」


ニヤつく。


「じゃあ婆さんなら、殺っちゃいます?」


老婆の顔が青ざめる。


「ひぃっ……!」


地面に額を擦りつける。


「お情けを……!」


「老い先短い老婆ですゆえ……!」


「何卒……!」


黒闇は、しばらく無言だった。


やがて。

ぽつりと聞く。


「……何が見える」


「へ……?」


老婆が顔を上げる。


「占いだ」


黒闇の目は笑っていない。


「何が見えるんだ?」


夢見は喉を鳴らす。


「そ、それは……」


「その方の人生……」


「歩んできた道……」


「これから先の未来……」


「けっ」


部下が鼻で笑う。


「命惜しさにデタラメ言うに決まってら」


黒闇は、老婆から目を逸らさない。


「いいだろう」


静かな声。


「見てくれ」


一拍。


「ただし」


空気が冷える。


「俺がデタラメだと判断したら」


部下たちを見る。


「凶行は止めない」


老婆の身体が震える。


「ひっ……」


「わ、分かりました……」



部屋の奥。

水晶が置かれた空間。


薄暗い。

ロウソクの火だけが揺れている。


夢見は、黒闇の前に座った。

震える手を、水晶に添える。


「……ふむ」


小さく呟く。


「なるほど……」


部下たちがニヤつく。

黒闇だけが、黙っていた。


「あなたは……」


夢見がゆっくり言う。


「過去に、深い傷を負っている」


沈黙。


「続けろ」


黒闇が言う。


「それは物理的な傷ではない」


夢見の声が少し低くなる。


「心に負った傷」


「誰にも言えない」


「言いたくない」


「……」


黒闇の目が、僅かに揺れる。


「そしてあなたは」


夢見が続ける。


「その傷を、“自分のせい”だと思っている」


部下たちの笑みが消える。

空気が変わる。


「だから、分からない」


夢見は黒闇を見る。

まっすぐに。


「心の在処が」


「贖罪の仕方が―」


黒闇が、ゆっくり立ち上がる。

部下が口を開く。


「黒闇さん、やっぱデタラメ―」


「……贖罪?」


黒闇が呟く。


小さく。

初めて。

自分に向けるみたいに。


部下たちが固まる。

その顔を、見たことがなかった。


夢見も、少しだけ目を細める。

黒闇は数秒黙ったあと、背を向けた。


「……婆さん」


低い声。


「また今度、続きを聞きに来る」


部下が驚く。


「え?」


「黒闇さん?」


黒闇は振り返らない。


「命拾いしたな」


そのまま歩き出す。

部下たちも慌てて続いた。

扉が閉まる。


静寂。

数秒。


「…………はぁぁぁぁ〜〜〜〜〜っ!!」


老婆が大きく息を吐いた。

腰を伸ばす。


「怖っっっっっっ!!」


汗が流れる。


「なにあれ!!」


そのまま顔に手をかける。

ぐちゃ、と音。


皮膚が剥がれる。

皺。

白髪。

垂れた皮膚。


全部、外れていく。

現れたのは。


20代前半ほどの女だった。


長い黒髪。

整いすぎた顔立ち。

妖しいほど綺麗な瞳。


夢見羽衣(ゆめみはごろも)


職業。

【占い師兼、特殊メイクアーティスト】


「……黒闇破滅、ねぇ」


水晶に映る自分を見る。


そして。

小さく笑った。


「面白いの来たじゃん」


ロウソクの火が、静かに揺れていた。

現在陣営、拠点


・不知火陣営【古民家】

・黒闇陣営【ホームセンター】

・金剛陣営【刑務所】

・花魁陣営【警察署】

・天涯陣営【地下】

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