序列戦の告知
翌朝の黒クラスは、空気が重かった。
「……聞いたか? 序列戦だってよ」
「俺たち黒は最下位確定だな」
そんな声が飛び交う。僕は席に座り、心臓をぎゅっと掴まれたように息苦しくなる。
(ははっ、やっと来たな。序列戦――舞台は整ったぜ、相棒)
「黙っててよ……僕はまだ全然……」
ティアが小さな声で言った。
「ルカさん……昨日、ヴォルフ教官に呼ばれてましたよね?」
「う、うん……ちょっと試されただけ」
「試されたって……虚無の力ですか?」
ブランが机を叩いた。
「おい! そんな危険な奴と同じチームなんてごめんだぞ!」
「ちょっとブラン、言いすぎ!」
ティアが眉をひそめるが、マルコも不安そうにうつむいている。
(ほら見ろ、孤立してきたな。最高じゃねぇか。孤独こそ虚無の居場所だ)
「そんなの……全然最高じゃない!」
心の中で叫んでも、誰にも届かない。
◇
午前の講義は、再びリディア先生が担当だった。
「諸君、学園の根幹を支える行事――序列戦について説明する」
黒板に「紅・蒼・翠・黒」とクラス名が書かれ、その横に数字が並んでいく。
「序列戦は学園内の序列を決定する試合だ。成績は待遇に直結し、貴族の子弟にとっては家の威信そのものとなる」
紅クラスの生徒たちが自信満々に笑みを交わし、翠や蒼の面々もざわめいている。
「最下位のクラスは、使用できる施設も制限される。黒クラスは……これで五年連続最下位だ」
冷たい笑いが教室中に広がった。
「試合形式は模擬戦。各クラスから代表数名を選出し、総当たりで勝敗を決する」
そう言ってリディア先生の視線がこちらを向く。眼鏡の奥で、鋭い光が僕を射抜いた。
「黒クラスからは、ヴォルフ教官の推薦により――ルカ=ヴォイド」
「……っ!」
一斉に教室がざわついた。
「はぁ!? なんでコイツが!」
「無能だろうが!」
「いや、虚無って噂も……」
ブランが立ち上がり、顔を真っ赤にして叫んだ。
「ふざけんな! なんであんな危険人物を!」
「決定事項だ」リディア先生は淡々と告げる。「以上だ」
◇
授業後、廊下でティアが追いかけてきた
。
「ルカさん……本当に大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫……だと思う……」
本心からは程遠い。膝が震えているのを、必死に隠す。
(おいおい、情けねぇな。俺がいるだろ?)
「君はいつも軽すぎるんだよ!」
(軽い? 違ぇよ、重さなんて背負うから足が止まるんだ。お前はもっと――)
言いかけたところで、別の声が割り込んだ。
「おいおい、黒クラスの連中が何をヒソヒソしてるんだ?」
振り返ると、紅クラスのフランが腕を組んで立っていた。金髪をかき上げ、不敵に笑っている。
「ルカ=ヴォイド。序列戦、楽しみにしてるぜ。伝説の“虚無体質”ってやつを、俺の炎で燃やせるならな」
挑発に周囲がざわつく。ティアが心配そうに僕を見る。
「ルカさん……」
「……僕は……」
言葉が喉で止まった。逃げたい。でも、逃げられない。
(相棒。最高の舞台だろ? ここでビビってどうする。やるしかねぇんだよ)
ネメシスの声が、嫌に鮮やかに響いた。
◇
夜、自室に戻っても胸の鼓動は収まらなかった。
「序列戦……僕にできるのかな」
虚無剣を見つめると、刃にうっすらと黒い光が揺れていた。
(安心しろよ、相棒。お前が怖がってる限り、俺が面白くしてやる)
その言葉が慰めなのか脅しなのか、僕にはまだ分からなかった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
今回はついに「序列戦」が告知され、学園内の空気が大きく変わる回でした。
虚無体質という噂が広がる中、ルカはヴォルフ教官の推薦で代表に選ばれてしまいます。
孤立しかける黒クラス。
不安と期待の視線。
そして紅クラスのフランの挑発――。
ルカにとっては逃げ場のない状況ですが、だからこそ次回からの「序列戦編」は物語の大きな転換点になります。
仲間との関係、力の制御、ライバルとの対立――どれも見逃せません。
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それでは、また次回!




