落ちこぼれの烙印一黒クラス
王立レグナリア魔導学園。
――うわ、広っ。
入学初日、講堂に入った瞬間、思わず心の中で叫んだ。
天井はあり得ないくらい高くて、水晶灯がふわふわ浮かんでる。壁には各国の紋章がズラッと並んで、床はピカピカの大理石。
新入生のざわめきが反響して、もう圧がすごい。
「……すげぇな」
僕――ルカ=ヴォイドは思わず胸の徽章を触った。そこには、漆黒の色。
◇
この学園には四つのクラスがある。
――紅。
選ばれた天才や貴族の御曹司たち。
――蒼。
才能と実力を持つ連中。
――翠。
庶民出身の努力家枠。
――そして……黒。
はい、落ちこぼれクラス、僕の所属です。
「おい見ろよ、黒だぜ」
「うわ、ほんとにいたんだ」
あちこちでひそひそ声が飛ぶ。いや、ひそひそじゃない。めっちゃ聞こえる。
「魔力ゼロ? マジで? やばくない?」
――うん、自分でもやばいと思ってるよ。
鼻で笑いながら前に出てきたのは、紅クラスの少年。
フラン=ドレイク。いかにもって感じの小貴族顔だ。
「魔力ゼロで学園に来るとか、迷惑だよなぁ」
うん、言葉が刺さる。ぐさぐさ刺さる。やめて。
「フラン。その辺にしておけ」
低い声が割って入った。炎みたいな赤髪の少年、ユリウス=バーンフォード。
「試験で全部決まる。口で潰す必要はない」
フランが「ちぇっ」と舌打ちする。ユリウスは僕を一瞥もせずに、さっさと視線を逸らした。
……冷たいな。でも、さっきのフランとは全然違う。
◇
「よっ、気にすんなよ」
肩をドンと叩いてきたのは、翠クラスの大柄な少年。ガルド=ハインツ。
「紅の連中は口だけだ。庶民でもやれるってとこ、見せりゃいい」
「……ありがとう」
彼の笑顔に、少しだけ救われた。
◇
「ルカさん……同じ黒ですよね?」
小さな声で話しかけてきたのはティア。おどおどしながら徽章を握っている。
「あ、うん。よろしく」
「よ、よろしくです……!」
対照的にブランは胸を張って大声を上げた。
「俺は落ちこぼれなんかじゃねぇ! 絶対に紅を超えてやる!」
……はいはい。マルコはというと――。
「ひっ、ひゃっ!」
緊張で足をもつれさせ、盛大に転んで場を沸かせていた。
――これが黒クラス。いやもう、不安しかない。
◇
壇上に立った男の声が、場を一瞬で凍らせた。
「静粛に」
ギラリと光る眼光。分厚い腕。まるで獣。
「俺はヴォルフ。実技担当だ」
その声だけで背筋が伸びる。
「覚えておけ。紅だろうが黒だろうが、戦場では同じ命だ。強い奴だけが生き残る」
会場が静まり返る中、僕の心臓だけがやけに早鐘を打っていた。
◇
そのとき、腰の剣が……震えた。
あの剣――ネメシス。
昨日、倉庫で出会ってしまった不可解な存在。
(おい、相棒。ビビってんのか?)
……うわ、また声がする。しかも勝手に相棒呼ばわり。
「僕は……どうすればいいんだ」
呟いた瞬間、荘厳な鐘の音が鳴り響く。
こうして僕の学園生活は――落ちこぼれの黒から幕を開けた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
今回でルカはついに学園へ入学しました。
序列を決めるクラス分けで、彼が最下層の「黒クラス」に振り分けられたことで、早くも格差や周囲の視線の厳しさが見えてきました。
紅クラスの天才ユリウスや聖女候補アリシア、そして庶民剣士ガルド――。
物語の中心となる仲間やライバルも顔を見せはじめ、舞台が少しずつ整ってきたと思います。
次回はいよいよ最初の実技訓練!
落ちこぼれの黒クラスが、紅や翠とどう渡り合うのか。
そして、ルカの“相棒”ネメシスがどんな騒ぎを起こすのか――ぜひ楽しみにしていてください!
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それではまた次回!




