プロローグ
初めまして。
この作品は、魔力ゼロと烙印を押された少年が、古びた剣を見つける所から始まります。
気弱な主人公ですが、少しずつ成長していく姿を楽しんでいただけたら嬉しいです。
――十歳の「覚醒の儀」。
それは、生まれながらの運命を突きつけられる瞬間だった。
魔導水晶に手をかざし、光の大きさと色で魔力量と属性が判定される。
貴族でも平民でも、誰も逃れられない絶対の通過儀礼。
僕は、名門ヴォイド家の末裔としてその場に立っていた。
祖父は火を操り、戦乱の時代に王国を救った英雄。父は雷を駆けて戦場を支配した騎士。
ヴォイド家の人間は代々、強大な魔力を誇るのが当然だった。
だから誰も疑わなかった。僕もまた強き光を示すはずだと。
――その時までは。
「……ゼロ」
冷たい判定の声が広場に響いた。
「ルカ=ヴォイドが……ゼロだと?」
「名門の血も落ちぶれたな」
「これではヴォイド家の看板に泥を塗るだけだ」
嘲笑と失望の声が一斉に浴びせられる。
僕はただ立ち尽くし、視線を落とすことしかできなかった。
――どうして僕だけが。
――僕は、ただ普通でよかったのに。
その日から僕は「ヴォイド家の恥」と呼ばれるようになった。
魔力ゼロの烙印は、家の中でも外でも変わらず僕を追いかけた。
◇
五年後。十五歳。
学園入学試験の日。再び魔導水晶の前に立った僕の手は震えていた。
もう一度だけ奇跡が起きるかもしれない、そんな淡い期待を抱いて。
「……ゼロ。変わらず、か」
教師が淡々と告げた。
周囲では火花や水しぶき、雷光が踊り、受験生たちが歓声を上げていた。
僕だけが、無。
「やっぱり無能だ」
「ヴォイド家の落ちこぼれだな」
「学園に来る意味あるのか?」
胸に突き刺さる言葉。
……わかってるよ。僕が一番、痛いほど。
けれど、それでも諦めたくなかった。
筆記試験は上位に食い込み、体術もなんとか合格点。
「珍しい例を観察したい」という学園側の思惑と、好奇心を持った教師の推薦で、僕はどうにか入学を許された。
――ただし、最下層クラス。
ほとんど雑用係扱いだった。
◇
その日の放課後。
掃除当番として立ち入った旧倉庫で、僕はそれを見つけた。
黒く錆びつき、誰も近寄らない不気味な剣。
けれど、なぜか目を離せなかった。
吸い寄せられるように柄に触れた瞬間――。
ゴォォン……
鐘のような残響が頭の奥で鳴り響いた。
次いで、声が聞こえた。
『――やっと来たか。虚無の器よ』
「…………え?」
一瞬、頭が真っ白になる。
声? 誰の? この倉庫には僕しかいないのに。
「………………」
数秒遅れて、じわじわ理解が追いついてくる。
まさか。いや、そんな……まさか。
「……い、今のって……剣が喋った!? えぇぇぇぇ!?」
叫んだ拍子に手を離し、剣がガタンと床を打つ。
僕は尻もちをつき、顔を真っ青にした。
「うそだろ……!? 僕、幻聴!? いや、違う……確かに剣から……! やだやだやだ!」
心臓は暴れ馬みたいに跳ね、背中は冷たい汗でびっしょり。
怖い。理解できない。
でも一つだけ、はっきりしていた。
――あの声は、この剣から僕に語りかけてきた。
震える唇で叫ぶ。
「……こ、ここから一刻も早く離れよう!!」
半泣きのまま倉庫の扉を開け放ち、僕は全力で駆け出した。
頭の奥に残る鐘の残響を、振り払うように。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
主人公ルカが「無能」からどんな道を歩むのか、ぜひ見守ってやってください。
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