人類滅亡の危機~カレー愛は地球を救う~
しいな ここみ様主催「華麗なる短編料理企画」の三皿目でございます。
カレーは3杯くらいがちょうどええ。
カレーは世界を救うのか?
★
真夏のある日、カレー屋に3人の親子が閉店前にやってきました。
店内の装飾に目を輝かせる子供たちとは、裏腹に母親はおずおずと申し訳なさそうに注文をします。
「カレー南蛮そばをひとつ・・・」
「ひとつ・・・あいよ」
店員の一郎は注文を受けて厨房へ戻ります。
「うちはカレー屋なんだけどな」
太郎はそう呟きます。
「・・・兄者。カレーそばは1200円。うちのシンプルカレーは600円。2皿分、食べ盛りの子どもたちには、こっちの方がいいだろう」
「そうだな」
兄弟は頷き、母親の元へ尋ねに行こうとします。
「待てい!」
「師匠」
二人は店主のウー・ガンダーを見やります。
「分からんのか」
「なにがですか」
「あの親子」
「はあ」
「そばを食べたそうな顔つきをしておる。なけなしのお金でカレーそばを食したいのだ」
「はあ」
「大皿で1.5倍のカレー南蛮そばにして差し上げろ」
「よろしいので」
「家族には気づかれずに・・・だぞ」
「分かりました」
店主の粋な計らいに兄弟は頷きました。
太郎はいつもより1.5倍に盛ったカレーそばを、家族の座るテーブルへと置きました。
「お待ち」
「あのう」
もじもじとする母親に
「はい」
と、彼は感謝の言葉が来るんだろうなと感じます。
・・・ところが。
「追加でカレードリアとカレーピザ、それにスペシャル・デリシャス・カレーと・・・あっ、もう、めんどいっ!この端から端までメニュー全品お願いしまっす!あ、ご心配なく私たちは鋼鉄の胃袋を持つ一族なので、おほほほほほっ!」
母親はそう言うと、ぽんとテーブルに札束を投げました。
「いや、貧乏・・・じゃなくて、ブルジョアかーいっ!」
思わずみんなはツッコんでしまいました。
一杯?のカレー南蛮そば 完
☆
ケンとメリーは周囲も承知のラブラブカップルである。
「やあ、ハニー。お腹ぺこぺこだよ。今日のディナーはなんだい?」
「ああん、ビッグダディ。今日のディナーは腕によりをかけた手作りカレーよ」
「OK待ってました!今日はまさにカレーの口だったんだ」
「FUFUFUあなたのことは、まるっとお見通しよ」
「HAHAHAHA敵わないよマイ・スイート・ハニー」
「愛情たっぷりのカレーを今すぐ用意するわね」
「待ってハニー」
「どうしたのダディ」
「キスしたい」
「んもう」
ぶちゅ~。
「もう辛抱たまらん」
「あなたカレーは?」
「カレーより先に愛を確かめあおう」
「ああん、嬉しい」
「今夜もアツい夜になりそうだ」
「スパイシーカレーのような刺激的な夜が欲しい」
「オフコース、勿論さっ!」
「最&高よっ!」
ここからは18禁カレー 完
と、作者は思った。
・・・・・・。
路線変更を試みたものの、なんだか生ぬるいっ!
カレーとは初志貫徹ではないのかっ!
長い前振りを越えて・・・いこうカレーのその先へっ!
✦
一方、人類滅亡のカウントダウンが着実に近づいていた。
宇宙では地球の存亡をかけたバトルが繰り広げられている。
巨大ロボと巨大怪人が隕石を互いに押し合い、言い争いをしているのだ。
「地球がもたん時が来ているのだ。それが何故分からん、ヒロシ」
「お前ほどの男がカレーに絶望するなんて」
「ハヤシライスは世界の主食になるはずだった」
「・・・なんだと」
「地球に住む全人類が、ハヤシライスを主食にしなかったばかりに、増長したカレーが、カレーを呼び、食べる、食べる、そのアツ過ぎる連鎖で地球はヒートアイランドになってしまった!」
「温暖化をカレーのせいにするな!」
「カレーは、地球に住む人々の足枷になっているのだ!私ハヤシライス仮面が地球に隕石を落とし寒冷化させ浄化しようというのだ。それが分からんのかっ、ヒロシっ!」
「なんでもかんでもカレーのせいにするのはやめろ!林・・・」
「もういい。じき、大気圏へと突入する。ヒロシお前の頑張りも無駄になるのだ」
「ν(ニュー)巨神ロボ華麗COOKの力は伊達じゃないっ!」
「なんだとっ!」
華麗COOKが青白く発光すると、みるみる隕石の周りに光が集まり、やがて大きく破裂した。
ヒロシと華麗COOKによって、地球は救われたかのようにみえた。
だが・・・。
半分に割れた隕石が地球へと落下しはじめる。
バンっ!
ブラックアウト。
人類滅亡まであとわずか。
✯
世界各国が人類滅亡待ったなしのニュースを報道している。
だが、諦めていない男がいた。
カレーを愛し、カレーに愛され、カレーに選ばれた男。
その名はマハラジャ・カーンその人であった。
カレーで財を成した後、俗世を捨ててカレー聖人となったカーンは、非暴力、非戦争を唱え、カレーによってすべてが救われると、世界中に説いて回った。
その名は知らぬ者はいないともいるとも言われているカーンだった。
彼はボロボロになりながらエベレストの頂きへと辿り着き、世界中の人へテレパシーで呼びかける。
(ワタシハ、カレーダイスキノカーンデス。ミナサン、アキラメナイデクダサイ。イマカラミンナデカレーヲタベルデス。カレーノチカラガ、コノセカイヲキットスクイマス。アナタハカレーヲシンジマスカ?)
カレーの力で世界を救うべく、カーンは前代未聞の世界同時カレー食を訴えたのだった。
「なんだなんだ?」
「私にも聞こえるぞ」
「新手の勧誘?」
「そんな馬鹿な」
「ありえない」
「カレーを食って世界を救えるなら、警察いらんて」
「気持ち悪いわっ!私の心中に入り込まないで」
しかしカーンの言葉は多くの人々に届かなかった。
何故ならみんなはその言葉を眉唾だと疑わず、行動へと起こせなかったのだ。
隕石は視界で認識出来るほど迫っていた。
もう人類には成す術がない。
そんな中、日本国首相ジャストフィット・横沢が訴えた。
「日本国そして世界各国の皆さん、今、人類は未曽有の危機に直面しています。カレーをカレーの力を信じましょう。揺るぎない私たちのソウルフードカレーを食べてこの困難に打ち勝ちましょう。テレパシーが彼のカレーの心が聞こえたならばっ!カレーにジャストフィッーーート!」
それからほぼ同時刻に各国のリーダーたちからも同様の声明文がだされた。
「今こそ、カレーを食べよう。奇跡は待つものではない起こすものだ」
と。
世界中の人々はカレーを信じて立ち上がった。
「よしっ!」
「いっちょ食べるか」
「GOGOイチいってくる」
「俺はレトルトカレーするか」
「私は手作りカレーにしようっと」
「本日、うちのカレー屋は無料だよ」
「カレー大好きっ」
「俺も」
「私も」
「うっひょ〜」
「カレーは辛え」
「いや、カレーは華麗だろ」
「ナイス発言」
「それほどでも〜」
「うまうま」
「まいう〜」
「デリシャス」
スプーンが皿に当たる音、カレーを食べる咀嚼音がそこらじゅうに聞こえる。
今、人類はカレーによってひとつになる瞬間を迎えようとしていた。
カーンは世界最高峰の頂で座禅を組み、その時を静かに待っていた。
「キットクル・・・来た。来た」
彼は感じる。
全人類がカレーを食べ、旨いと感じた喜びと幸せポジティブエネルギーが、地球の奥核に触れ、最大エネルギーが呼び覚まされ放出された。
「カレー・イン・ザSummerっ!」
カーンは立ち上がり高々と空を指さす。
瞬く間に黄金色のエネルギーは空を突き抜け、隕石を飲み込み消し去ってしまった。
世界が金色の空へ覆われた。
こうして人類は救われたのだった。
ありがとうカレー。
おめでとうカレー。
すべてのカレーとみんなに・・・。
ありがとうとおめでとう。
Special Thanksカーン・・・完。
これにて逆オーダーストップでございます。