84.神話色々ごちゃまぜ物語?
女王マキウリア女王が語った。
彼女達に残る数百年前の出来事、「光の塔」。
かつて豊かな土地に暮らしていたマギカ・テラの民は、ある日現れた「光の塔」と共にこの地に招かれた。
魔力豊かなこの地にあって、人々は魔力に目覚めた。
そして後に現れたミノタウロスやサキュバス、ハーピーやラミア等と戦い、従え、峻険な山と多少の豊かな地、濃い魔力の中で暮らして来た、と。
その時、英雄がこの戦いを率いた英雄が王となって今に続き、他種族であっても勇猛な者や優れた者は重臣に取り立てた。
(それで脳筋が多いのかな?)
とは口にしなかったリック監督であった。
リック監督はデザイン案や物語を女王に見せたり説明し、女王は重臣や神官を集め、
「素晴らしい…これも北方諸国との共通項なのか」と感動した。
「是非我が国も協力したい!」
「ではいっそ各国で協定を結んだ記念碑的な作品としましょうか?」
「そうじゃな、他国がそれでよいと思うなら」
(社長の思惑通りになったなあ~)
あの人には勝てないかも、そう思ったリック監督であった。
こうしてリック一家は帰国した。
帰り、王都駅で女王の熱い視線に見送られて、二人の御夫人は少々お冠であった。
(あれ?何でみんな連れて旅に出たんだったっけ?)
納得がいかないリック監督であった。
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原初、この世界は混濁であった。
それを神の中の神が天と地に分け、天上界に他の神々を作った。
神の中の神は、最後に生まれた若き男女の神に命じた。
「人々が暮らせる豊かなる国を産め」
二人は虹の橋の上からドロドロした地上に剣を刺し、かき混ぜると、巨大な岩の柱を持つ島が生まれた。
「この柱を二人で反対側に回ろう、そして再び出会ったところで夫婦の固めをしよう」
そして二人が柱の向こうで出会うと、大地は大きく浮かび上がり、グランテラ大陸となった。
そこは麦や木々に満ちた、豊かな大地とであった。
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「この辺は、多神教という点を除けば創世の書と似ているな」
「リック監督の言う、神話の類似性、という奴かな?」
ゼネシス教神殿もこの脚本には関心を持つようになっていた。
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これらは全て語り部の巫女が民に聞かせた物語。
そこに狩を終えて部下を従えた英雄が行軍して、獲物を民に配る。
明朗快活、武勇に優れ地位も出自も分け隔てが無い快男児。
しかし彼は王の命で暴王征伐を命じられる。しかも少ない手勢で。
それを「名誉なことだ、不満を言ったらバチが当たる」と追い打ちをかける奸臣。
父を慕う英雄は必勝を宣言し、出陣。
道中、神殿で加護の祈祷を受けるが、そこで叔母である巫女の側仕えを見初める。
夜、偶然邂逅した二人。側仕えは櫛をお守りとして渡し、無事な帰りを祈る。
英雄は酒盛りする仲間達に
「俺は美しい花を見つけたぞ!勝ったも同じだ!」
と鼓舞する。
そして南へ向かい、途中荒れ果てて多くの民が処刑されている村々の惨状を目の当たりにし、闘志を燃やす。
暴王は怪物の加護で権威を得たが、そのため多くの奴隷を迷宮に放り込んでは怪物の餌にしていた。
英雄はふと櫛を手に取り、紅の花を見る。花を集め、紅を練り、それを手に迷宮の壁にひたすら線を描いて進む。ついに魔物のいる中心部に達し、優れた剣の腕でこれを倒す!
英雄の軍は奴隷を解放し、暴王を倒す。
暴王は死の間際、
「自分は魔物の力を借りねば王になれなかった。
お前こそは自らの力で王となる物だ。民を犠牲にする事なく、豊かな国を作る偉大な王、グランテラと名乗るがよい」
と言い残した。
暴王が抱いていた無念を胸に、英雄の軍は王宮を包囲し勝鬨を上げる。
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「この辺はテラニエでも有名な話ねえ」
「でもこの魔物、どうします?」
「マギカ・テラで身長3~4mのミノタウロス族が、今最強争いしてるそうです」
「…手回しいいのねえ」
「でも監督の言う事ちゃんと聞いてくれるかが心配ですよ」
「それは女王陛下にお任せしましょうか」
社長も、だいぶ手応えを感じた様である。
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英雄の勝利は奸臣の手下によっていち早く知らされた。
そして帰国する英雄。
父王は何も語らず、奸臣のみが厳しく問い詰める。
「流石英雄と呼ばれただけある。これから北に向かい、黄金の神衣を手に入れよとの王命である。
今日にでも出兵せよ」
流石に凱旋も無く放逐するかの様な言い草に激怒する英雄。
「正体を現したな逆賊め!グランテラなどと名乗るとは謀反の印だ!
今すぐ出征するか王家を去るか選ぶがよい!」
と追い打ちをかける奸臣。
王は黙ったまま去る。
英雄への仕打ちに、人々も暗い気持ちになる。
語り部が、暗い世の中を吹き飛ばす神々の話をしよう、と語る。
語られたのは、暴れ者の武神によって娘が連れ去られた実りの女神。
嘆き、怒る余り天界を去った。その所為で地上は畑が枯れてしまう。
女神が訪れ、祠に籠ってしまった村で、老婆は一計を案じる。
村の若い男女を集め、歌い踊らせた。
皆が酒を飲み、徐々に淫らになって行く。
その様につい女神は覗き見て驚く。
「今宵はこの男女の契りの祭りじゃ、女神様、祝って下され!」
一同が大いに笑い、女神もつられて笑い出し、天界へ戻った。
そしてこの地は多いに潤ったという。
しかしその話を聞いていた英雄の心は晴れなかった。
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「裸踊りはダメでしょうね」
「これでもマトモにしたつもりなんだけどなあ」
「いっそ天上界から神様がつられてやって来て、大宴会になるとかはどう?」
「その方がいいかあ」
なお、物語が長いため、ここまでを1時間、第一部とした。
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出征の祈祷で、叔母の巫女に英雄は泣きつく。
甥を案じた巫女は「王からこれを渡す様命じられた」と宝剣を渡す。
それは、武神が怪物を退治して得た宝剣であった。
側仕えが巫女に英雄の喜び様を伝えるが「王命は嘘です。あの子があまりに不憫でなりません」と嘆く。
野営の場で、英雄は皆に酒を振舞い、宝剣の由来を語る。
それは、豊穣の女神の怒りを受けた武神が下された罰として、諸国を平定する神命を下されて行った魔物征伐の内の一つ、九頭の龍を退治した際に得た必殺の剣だという。
「この世の宝を王は俺に賜った、俺達はこの宝剣に守られているのだ!」
翌日、出征する英雄の元に集まる腕自慢たち。船を捧げる者までいた。
一行は出航し北を目指した。
しかしその船には英雄を慕う側仕えも男に扮して乗り込んでいた。
黄金の外套を持つ王に奸臣の部下が先回りし、英雄を返り討ちにする様命じていた。
領主は英雄を狩で持て成すが、草原に火を放ち謀殺を企んだ。
側仕えは正体を明かし、持っていた火打石を差し出す。英雄は宝剣で風を起こし、バックファイヤで難を逃れた。
英雄は領主を討つが
「お前の敵は身内にある!呪うなら俺ではない!父を呪え!」
と叫んで死ぬ。
黄金の外套を手に入れた英雄は帰国するが、帰路嵐に遭う。
側仕えが「この船には宝と女である自分がいるので妬まれている。私が海神の怒りを鎮める」と海に身を投げ、無事船は岸に着く。
英雄は王に真意を確かめるべくこの地に黄金の外套を隠して帰国すると決意。
仲間達を連れて陸路。船と助太刀の一行は先に王国へ。
すると奸臣の部下達が歓迎するふりをして英雄一行を襲撃。
仲間達は身を盾にして英雄を逃がす。
故郷を前にして、英雄は
「いつか俺はこの世を、神々の時代の様に笑いが絶えない明るい世の中にしてみせる!」
と決意する。
しかし再度の襲撃で討ち果たされる。
その骸から、黄金の鷲が飛び立つ。
鷲は王国一の巨峰の上空を飛び回ると、大爆発が!
火山弾が奸臣の軍を撃ち、地割れが兵を叩き落し、溶岩が兵を飲み込む。
麓の湖が俄かに波打ち、あふれ出て軍勢を飲み込む!
噴煙は王国上空を覆い、火山灰が降り出す。
しかし英雄を送り出した村に、助太刀した男達が辿り着いた。
空を舞う金色の鷲を指し、
「あれは英雄の魂だ!みんな!追うんだ!」
皆は船を出し、英雄の魂を追った。
英雄の魂は天上界を目指して去って行った。
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「よくもまあ、あのとりとめのない神話をここまで纏めた物だ!」
「いえそりゃまあ手本がありますから」
誰もが納得したが、それ以上は言わなかった。
リック監督は、今度はカンゲース王に呼ばれていた。
非公式に。家族も一緒に。
北国旅行について聞かれていた。
王妃も財務卿夫婦も一緒。
「北の古代大国が何故滅びたかは諸説ありますが、火山による飢餓もその一説です。
まあ、美味い事それを使わせてもらって話を終わらせたってのもあるんですけどね」
「しかし王にせよ奸臣にせよ、最後に溶岩に飲まれても良かったのではなかろうか?
何と言うか、ザマァ、って感じがしないのだが」
「一部の伝承では亡国の王の一族が逃げ落ちて、英雄を讃えつつ王権を今に伝えた、なんて説もあるので無下にザマァできなかったんですよ」
「微妙に各方面に配慮しておるのだなあ」
(原典が何しろ異世界の記憶だからなあ)
とは言えないリック監督であった。
「しかし、よくぞ各国との調整を果たしてくれたぞ!外務卿以上の大手柄だ!
いっそ外務卿にならぬか?余の養子として!」
「俺は特撮映画を撮れる場所を探しますよ?」
「ぬう!惜しい事だ!」
いつもの話になる前にアイラ夫人が発言した。
「夫は特撮映画を撮るために頑張った、とお考えいただいた方が、胃も頭も痛くならぬかと存じます」
「全くだ!はっはっは!」
「あっきゃっきゃ!」
「おお!かわいいのう!我が王子王女達も小さい頃はこうだったのだが」
「全然面倒見てあげなかったではないですか!」
ゴキゲンな国王陛下にセシリア社長が冷や水を浴びせた。
「ぬう…申し訳ないばかりだ」
「でもホント、後は連合国でこの映画に賛同してない国に声をかけて、同意を得れば製作発表ね。
製作費1億デナリくらい集まるんじゃないかしらコレ」
セプさんの作品じゃあるまいし、とリック監督は思った。
「ボウ帝国とか乗って来ますかね?」
「まあ、声かけてみるわ。
あっちはショーウェイとボウ帝国の合作『快猿伝』に取り掛かってるから厳しいかもしれないわねえ」
人魔再戦の煽りで製作が伸びていた「快猿伝」、英雄アックス主演の、初めての大作である。
ヨーホー特殊技術部のリック・アックス・デシアスの三首脳が出征している間にショーウェイは構想を纏め、制作の段取りを進めていたのだ。
しかし意外にもボウ帝国も出資と俳優の派遣を決めた。
あのコーラン嬢達がやって来るのだ。




