353.「マキナヒーローズV」、無事終了
リック社長は「マキナヒーローズV」を襲う路線変更、製作費削減という二度の困難を乗り越え、製作も放送も続行した。
それも訴訟と放送局ぶっ潰し、局替えという強硬手段で。
しかしトリック特技プロは、思わぬ聖旅億から恨みを買うことになった。
今まで悪条件に耐えながら何とか製作を続けていた独立プロから、仕事を奪ったと誹謗中傷されたのだ。
「義を貫いたものが、邪に屈したものに非難されることなど許しがたい。
さりとて、生業を失うとなれば世の中は余程歪んでしまうのも道理」
「先ずは苦労させられていたもの達を救済しましょう!」
カンゲース6世陛下は旧キリエリア2が発注していた独立プロの救済に乗り出した。
国が放送継続を保証し、後に新設されたキリエリア臨時放送公社を経て、新たに放送権を購入したレイソンテレビが正式に事業を開始するまで放送が維持される、救済策が発表された。
するとトリック特技プロを誹謗していた独立プロは誹謗を止めた。
しかし世間はシッカリ見ていた。
これらプロの作品は世間から敬遠される様になり、スポンサーも各社に打ち切りを打診し始めた。
この業界に残された教訓は
「邪に屈すべからず、義を貫くべし」
ではなかった。
「トリック特技プロに手も口も出すな」
という、実に消極的なものでしかなかった。
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そんな放送業界の動向などお構いなしに、「マキナヒーローズV」の物語は後半戦に入って行った。
他国の魔道学院が開発した人造魔道具を手にしたマキナヒーローが、二人も参戦。
戦いの背後にある人間社会の、進んでいった技術の驕り。
そして技術による繁栄に溺れる人間を手玉に取って闘争、滅亡を操る神々の気まぐれ。
時に争い、時に力を合わせて来た一同が、人間と神々の理不尽を悟る。
主人公も、教え子たちを通して、いかに世の中が若者を犠牲に繁栄を求め、同時に破滅に向かっているかを痛感した。
だが、神々とは何か。
考え抜いた主人公が決意した。
「貴び続けるよりない。
いにしえからの伝承を、明日に伝え、絶やさず伝える。
例えそれが人間から見て気まぐれで理不尽であっても、その裏には神々が作った地球の恵みがある。
人への愛、人の欲への怒り。
我々人間は、その事実から目を背けていないか?
神々が仕掛けた我々の戦いは、それに気づかせるためだったんだ」
主人公や、その教え子たちが神殿建築に乗り出す。
悪神と言われた気まぐれな神々の大神殿を建てる。
それは他国の戦士や、人造神器を与えられていた仲間でありライバルたちの心をも動かした。
それを妨げんとする魔獣、悪神。
若者たちに絶望や不和をまき散らす。
王家の官僚や報道機関が主人公たちを悪しざまに罵り、他国に主人公の国への侵略をそそのかす。
生徒たちは不安と主人公への信頼の中で、ギリギリ踏みとどまる。
気まぐれで人間を翻弄してきた神々も、本気を見せた生徒たち、今まで争っていたマキナヒーローたちの強い絆を前に、ついに彼らに力を貸し、助言、「神託」というお節介を焼いた。
そして主人公には
「我らの元へ来い。
皆がお前を頼っていては駄目だ、また争いの時が来て悪神が魔獣を従える。
お前は見守るものとなり、彼らが世を守るものとなるのだ」
そして主人公は生徒を率い、学び、遊び、明日の夢を聞き、悪神の誘惑に陥って死滅した者達に祈りを捧げ、最後の一日を過ごした。
そして彼は、自らの正体を明かし、神々に呼ばれたことを告白する。
他のマキナヒーローたちと共に戦い、悪神を滅ぼす。
他のマキナヒーローたちは神器を失い、普通の若者に戻る。
そして主人公は地上から姿を消した。
落成し祭典が行われた神殿。
幾多の神々の像の末席に、誰が作ったのか、主人公によく似た神像が立っていた。
その手に開かれた書物に、「信仰」と「和解」の文字が刻まれていた。
ショーウェイでの試写の反応は絶賛を浴びつつ、
「子供向けでこれはいいのか?」
「もっと明快でなければ、あるいは再登場の余韻を残さなければ」
等々、様々な意見が交わされたが、
「元々他局の企画でしたし、ショーウェイの作風と違うものが出来てもいい刺激になるでしょう!」
そう力説したトレート部長のお陰でこのまま放送される事になった。
思えばショーウェイスタッフによるヨーホー映像作品「インヴェンス・ヴィルフェレス」という、ライバル協業の作品もあった。
そもそもショーウェイ最初の空想変身英雄「フォルティ・ステラ」もリック監督のお節介から好評を博すことが出来たのだ。
トレート部長だけでなく、古くからの付き合いを知っているショーウェイの首脳部は、この奇妙な縁というか恩返しに何か口を挟む気などなれなかったのだ。
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リック社長の新作が数奇な運命を辿りつつ、着実に視聴率を上げている最中、ヨーホー映画は「宇宙帝国の滅亡・裏切りの惑星」が公開された。
その内容は、第二の主人公と思わしき若き英雄が主人公たちに突如反旗を翻し、主人公を窮地に陥らせたまま終わりという、テレビが無かった往年の連続活劇の様な終幕だった。
超大作として億の予算を注ぎ込んだ作品らしからぬ結末だが、結果は好評であった。
何より、最初は第二の主人公らしい優秀な好青年が、一転して反旗を翻すや理屈の通らない、自己陶酔の狂気を見せる好演?怪演?が無茶苦茶好評だったのだ。
第一作で折角勝てる戦を一騎打ちに拘ったナルシストな皇帝も人気だったが、この
更にアクの強い敵役は、固い物語と特撮に偏重しがちな見せ場を、娯楽作品に無理やり引きずり戻し、観客に強烈な印象を植え付けたのだった。
特撮的にも、「学団」対帝国の惑星争奪戦で敵戦闘機隊を一蹴する巨大な戦車隊が冒頭に強い印象を残した。
赤い大地の惑星争奪戦で、まだ好青年だった第三局の首魁が引きる黒鉄色の戦車隊、その上部は半分起き上がってゴーレムの様に動き、腕の様な砲門は敵戦闘機を駆逐し宇宙帝国の軍事拠点をなぎ倒すのだった。
そしてそれら新機軸が最終編を期待させ、ヒットするに至ったのだ。
だが、この作品にはリック社長の関与も、実質的な参加も無かったのだ。
ショーキ監督だけでなく、ヨーホー特技部一同がリック社長不在でもやっていける自信を実感するとともに、あの少年の様な笑顔が白亜の殿堂からいなくなったことの寂しさを同時に感じていた。
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マギカ・テラでは。
17th世紀プロの「トニトアシビター」も、子供達を夢中にさせて39回の製作を終えた。
当然続編が企画されたが、スタッフたちは
「人形劇の優しい感じと、実際の俳優の演じるシリアスさは融合が出来ないか」
と考えていた。
その企画の中で、人形スタッフの一人となったキャピーちゃんが発案した。
「人間と、人間とは違う宇宙人が一緒に暮らす未来の宇宙のお話しはどう?」
キャピーちゃんがテスト的に作った等身大人形や、マスクだけ宇宙人の衣装を披露した。
ナンシー夫人も1m大の大きな爬虫類っぽい宇宙人の人形を作り、共演出来るかテストした。
舞台は未来の宇宙の警察署。来るべき人種差別や、風俗習慣の違いから起きるすれ違い、
社会構造が難しくなり、様々な宇宙人、獣人や爬虫類的な種族、更には体の一部をゴーレム化した人々が雑多に暮らす宇宙都市。
世の中に耐えられなくなった人々が犯罪に走る。
そこで奮闘する初老の王都騎士を主役としたSF人情未来兵器シリーズ「コスモパトルア」。
リック社長は早速パイロットフィルムの出資を金塊担いで持って行ったが
「もう女王陛下から資金は得ていますよ」
と辞退され、ショボくれて帰国した。
帰り際、社長はキャピー嬢に
「撮影終わったら1ケ月帰りなさい!」
そう言い残してエンリケ社長に娘を託した。
丁度テレビではキリエリア王立第一放送で「トニト・アシビター」の放送が終わった。
「1799」の影響で直線的デザイン、白を基調とした凹凸の激しいデザインの宇宙艦隊が宇宙の老婆ゴーレム一家の殲滅に向かう。
双方の壊滅を危惧した主人公は今までの老婆ゴーレムとの戦いを思い出し、
「決して分かり合えない相手ではない」
と艦隊司令部を説得、最後の対話を試みる。
「愚かで無知な人間が宇宙で繰り返す失敗は見るに堪えない」
と地球の知的生命体殲滅を宣言する老婆ゴーレムだが、主人公は反論する。
「人類は失敗し、学び、成長する。
太陽系外で他の文明に干渉しない限り失敗する権利がある。
他の文明惑星からやって来て他文明の根絶を企む方が無法で野蛮にしか見えない」
老婆ゴーレムもまた知恵を尽くし時に協力した主人公を憎からず思っていた。
「せいぜいこの銀河の辺境で足掻くがよい」
そう言い残して去っていく決意を下した。
地球の危機は去り、主人公たちトニト・アシビターのメンバーは辛勝を祝ったのだった。
のんびりムードでペーソスが強い作品だったが、実にそれらしい最終回を迎えた。
「17th世紀プロも成長しているなあ」
数多くの未来兵器を作り上げ、劇場映画の様な迫力ある飛行シーンや爆破シーンを披露していた。
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そうこうしている間に、「マキナヒーローズV」も最終回を放送した。
ショーウェイの同時視聴会は喝采に包まれ、視聴率の速報値50%に一同は快哉をあげた。
国際テレビプロ作品はレイソンテレビに残る事となり、流れで言えばトリック特技プロ作品もレイソンテレビに戻るか、ヨーホーテレビに戻るのが自然だった。
しかし
「ショーウェイさんへの恩はもう一つくらい返してもバチは当たらないでしょう」
と、リック社長はショーウェイでもう一作撮る約束をした。
無論、予算は今までの半分となる悪条件で。




