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334.「ゴドランの復活」完成!

「ゴドランの復活」、撮影終盤。


「極大魔法は持ってはいけない。

 一度誰かが持ってしまったら、敵対する皆が持たざるを得ない。

 それは人類の破滅を意味します。


 ゴドランを倒せるか否かではない。

 極大魔法兵器は作らない、これが人類の生きる道なのです!」


 ルール無用の新興軍事大国相手に諸国条約は対抗手段を講じる。

 これに対し誠心誠意、正論から戦う宰相をセンムー氏、センちゃんが演じきる。


「商会長シリーズ」の呑気な専務や「内海」の神懸った学士とも違う、柔和さの中の固い意志を感じさせる名場面だ。


 最後、火山に呑まれるゴドランのカット。

 大型モニターに映し出されるゴドランの最後に、己を、明日の社会を重ねて涙する宰相の場面でクランクアップ。


 ヒロイン役女優がセンちゃんとテンさんに花束を捧げた。

「あの啖呵切る場面、よかったよ!」と言うと彼女は大笑いした。


 特撮班も休火山の大噴火をオープン撮影し、クランクアップした。

 現場を見学していたトリック特技プロ女性陣が花束をショーキさんに贈った。


 トリック特技プロのバーサタイル70も多用された。

「俺は一発撮りで綺麗にやる道を探りたいなあ」と、古参のモンさん。

「それもあって、これもあっての今の特撮だよ」と、広告映像で活躍中のケミさん。


 金に糸目をつけない好況企業は提供作品より広告映像に金を注ぎ込む様になった。

 しかし今は久々に本家ヨーホー特撮のためフル回転だ。


******


 リック社長はナート師とともに音楽を書いた。

「変わった様な、変わってない様な。

 本編で使う旋律、新しいのが随分沢山ありますね」

「異世界のゴドラン復活って、別の作曲家さんなんですよ。

 でもコッチじゃそれは許されない。


 ですからこの時期、XXX先生が書いた他の作品の曲から考えて、もしこの作品の内容がその先生の眼鏡に適うもので、音楽が宛てられたら。

 虚しい未練みたいな作業ですし、冒涜かも知れませんね」


 発音できない謎の名前を語りながらも、黙々とリック社長は主題の旋律と伴奏を書き出していった。


 いよいよラッシュフィルムに合わせて演奏開始。

 今ではテレビ放送や他国での配給を意識してヨーホーマークに音楽をつけなくなっているのだが、彼は無視した。

 ヨーホー映画マークで激しい打楽器が打ち鳴らされ、ゴドランの主題導入部分が、チェンバロが進化した新楽器「ピアノ」を叩きつけるかの様な激しさで、復活の前兆を奏でる。


 その後ゴドランの咆哮が重ねられる予定で、タイトルが現れ、ナート師は演奏を続けると、かつて「快猿王対ゴドラン」での軍の主題を重厚にし、更に変奏部分を繫げた重厚なマーチが始まる。

 それは第一作の重厚なタイトル曲のアレグロすら軽妙に感じる程重々しかった。

「独特な旋律ですねえ」

「元は今に残るお祭りから、文化の伝播を紐解く記録映画のお祭りの曲です」

「随分重々しいお祭りですねえ…」

「祭りの騒音や叫び声が重なる事を想定して激しい曲にしたそうです。

 それに、多くの人々の営みや歴史への想いもあったんでしょう」

「記録映画ですか…」

「ま、その映画で書かれてた学説全部間違ってたんですけどね」

「何ですそれ?」


 そして楽器編成が同じ音楽の録音が続く。


 冒頭の軍事大国機送艦が謎の爆発を遂げる場面のゴドラン主題の変奏曲。

 更に復活したベヒモドやケラトスの主題、そしてついに姿を現すゴドランの各曲が、ラッシュフィルムに合わせて演奏された。


 本編のシーンも音楽が宛てられる。

 ゴドランと対峙する学士の主題、そしてエンディング曲は、「天地開闢」で用いられた異国の主題。


 回想場面や、終盤のゴドランと無人部隊の最後の戦いは、第一作の鎮魂の主題が蘇った。

 激しい戦いに鎮魂の演奏が重なるのは、第一作の最後に似た思いを抱かせる。


 軍事大国の葬送行進曲の様な主題、世論が紛糾する場面など、今までの作品に無い旋律が多く使われた。

 それらはゴドラン音楽を愛して来たファンへ新たな驚きを齎すだろう。


 ナート師は黙ってこれらの主題を交響曲の譜面に落として来た。


 テンさんは

「これもインタープンクト、というんですか」

と問うが

「そのつもりで音楽を宛てましたけど、これで本当に正しいかどうか。

 それは異世界の作曲家先生にしかわかりませんね」

としか答えなかった。


******


 ついに試写となった。

 ゴドランでは3度目の70mmだ。

 製作費2億、額面では「全怪獣総攻撃」の倍だが、物価を考えると実質同額。


 ヨーホー中央劇場での関係者試写は、ファンが異常に集まるのを懸念して極秘に行われた。

 関係者の関心が高い所為か、満席だった。


 待望の幕が開いた。


******


 冒頭、「ザナク公爵家セシリア夫人に捧ぐ」と字幕。

 万雷の拍手が巻き起こった。


 そして現れるヨーホー映画マーク、同時に激しい打楽器とゴドランの主題!

 再び拍手喝采が巻き起こった!

 そして荒れ狂う炎、極大魔法のイメージに重なるタイトルクレジット。

 その下に「ゴドラン誕生四半世紀記念作品」の文字。

 激しいゴドランの叫び声、続いて鳴り響くは抗戦する軍の主題。


 音楽:オスティオ・ナート、ここで拍手喝采。

 協力:トリック特技プロダクション、ここでも。

 出演者クレジットでアゲンス・テッテ、ここでも。


 そして特技監督:ショーキ・ネクスでも。

 監督:テンダー・レニスでは割れんばかりの拍手だった。


 そして嵐の中、爆発沈没する架空の軍事大国の機送艦。

 第一作の雰囲気を纏った、アゲンス氏演じる学士が調査に向かい、軍事大国潜水艦の爆発する中ゴドランの姿を確認する。


 そして諸国条約に訴え軍事大国と対峙する宰相。


 前座的に出現するケラトス、アルモサズ、更にベヒモド。

 それぞれの主題曲がどこか懐かしい。


 そして遂に登場するゴドラン!

 久々に聞く主題曲と共に、今まで世界の敵だった怪獣を倒した英雄の姿とは違い、軍事国家の首都を破壊する。


 そこに不完全な極大魔法兵器が放たれ、首都は無残にも避難民諸共炎に包まれる。

 しかしゴドランには通用せず、却って一層巨大化した。


 続いてゴドランはキリエリアへ、港町デンガナへ、王都レイソンへ。

 重厚な音楽を背に激闘と破壊が繰り返される。


 蹂躙される王都北部。

 その様は美しくすらあった。

 途中差し込まれるスポンサーの無茶振りへの答え、乞食が占拠した劇場に飛び込む高速鉄道!

 場内の後方拡声器が大音響を放ち、思わず観客は後ろを振り向く程で、あちこちから失笑が漏れ、喝采に変わった。


 続いて核分裂反応を抑える薬剤、カドミウムで攻撃する垂直飛行機との戦い、次々打ち倒される高層建築、激闘の主題が異なる旋律に変る中戦いは続く。

 途中途中で宣伝部の無理筋で作らされた10mゴドランも物凄い爆炎の中突き進む。

 そしてついに、ゴドランが勝利する。


 しかしその間に、ゴドランの帰巣本能を刺激する超音波発生装置が完成、ゴドランは罠が待つ休火山へと進路を変え、王都中心部の被害は避けられた。


 最後の激戦の末、ゴドランは火山爆発の中姿を消す。


 これは寓話でもあり、もしかしたら将来敵対的な国が現れれば起こり得る現実であり、かつてテラニエ帝国があった頃の記憶でもある。

 空想と現実が入り混じった中、大噴火の中、大自然に帰る旅路を見送るかの様な終曲の中。

「ゴドランの復活」は幕を閉じた。


******


 暫く後に、拍手喝采が巻き起こった。

 上映時間105分。

 物語がギッチギチに詰め込まれ、完成稿で書かれていたドラマは最後の編集で相当にそぎ落とされ、それでもこの尺だった。


「これはヒットするでしょう!」

「過去のゴドランの要素と、近年の特撮大作の要素が詰め込まれていた!

 宇宙人以外は!」

 当初、あまりに詰め込み過ぎた内容で105分は短すぎるとヨーホー映画首脳陣は疑問を呈したが、テンさんはこれを押し切ってリック社長の方法論でやり切った。


 その結果がこの絶賛である。


 試写会とは知らされずに招待された、例の「ゴドラン復活」を訴えていた巻き毛の若者は興奮して他に招待された仲間に感想を叫んでいた。


 ホールでテンさん、ショーキさんと飲んでいたリック社長。

「どうだいリッちゃん?」

「行けると思うけど、やはり試写会で反応を見るべきだろうね」

「今じゃ試写会で満足して劇場に来ないヤツも多いそうだぞ?」

「出来が良きゃ何度でも来るよ」

「おお、そうか。そうだよなあ」


 そこに業界雑誌記者が聞いてきた。

「リックさん!新作について一言!」

「俺は部外者だよ、監督に聞いてよ!」

「リックさん何もやってないんですか?」

「スタジオの掃除くらいですよ!」

((嘘だあ))

 二人の監督が内心呆れた。


「まあまあ、お二人共素晴らしかったわ!」

 セシリア前社長が、ザナク財務卿とともに挨拶に来て下さった。

 一同は高位貴族へ跪礼を捧げた。

「時間が経つと他人行儀になるものねえ」

 そしてキャスト、スタッフが集まり、旧交を温めた。


******


 結局リック監督の意見もあって、各地で試写会が多く行われる事になった。

 学校でも子供達の意見を聞くべく試写会が行われ、当日は放課後の上映にも関わらず早朝から子供達が登校して来た。


 それらの評判も爆発的だった。

「ゴドランが凄くなって帰って来た!」

「ビルの中で暴れるシーン、すげえ!」

「新作の音楽で音楽祭やんねえかなあ!」

「あの芝居がイマイチなヒロイン、最後カッケー!」


 中には批判もあった。

「ゴドランだけにして他の怪獣を出さない方がよかったのでは?」

「敵国は実在の国、ゴルゴードやテッキにした方が説得力があるのでは?」

 等々、それやったら本当に戦争になりそうな意見もあったが、出来を讃える意見の方が圧倒的に多かった。


 テレビでもゴドラン復活に向け直前特別放送が行われた。

 当初はゴドラン好きを自称して割り込もうとした俳優、タレント陣によるバラエティーショーが企画されたが、

「作品のイメージと乖離しすぎる」

とマッツォ社長が却下した。


「そんならその俳優さん達に過去のゴドラン、だけじゃなくて特撮映画の歴史と世の中の動きの説明とか、思い出を話して貰えば、いい放送になるんじゃないの?」


 リック社長の助言で乞食役の俳優がホスト役を務め、ゴドラン四半世紀の歴史と世の中の出来事を巡る放送となった。

 出演したゴドラン好きの俳優、多くのゲストやファンを招いて、生まれた年の出来事を語り、その年の特撮映画を紹介する良質の記録作品となった。


 そしていよいよ70mmロードショーの日を迎えた。

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