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332.二大特撮巨編、撮影快調!

 試写を重ね、脚本を公表したトリック特技プロの「スプラテリトス」と対照的に、ヨーホー映画の「ゴドランの復活」は秘密主義であった。


 実際には既にリック社長の協力で台本やイメージスケッチは完成していた。

 それは随分過去の作品とはイメージが違うものだった。


 物語は政治ドラマ、軍事ドラマの要素が強く、まるで『内海の広がる日』や『皇帝のいない帝国』の様な濃厚な宰相や軍人、科学者がゴドラン達と対決する物語となった。


 冒頭、暴風雨の中南進する漁船が北へ退去するさま無電を受ける。

 発信者は、大陸南方に勃興した新興軍事大国。


 そして漁船は誤ってその国の機送艦に接近し、回避する。

 その直後、機送艦は大爆発を起こし、沈没した。


 この事件はキリエリアに重大な懸念を与えた。


 新興軍事大国は極大兵器開発と軍拡を推し進め、諸国条約に対抗していた。

 

 更に、各国の政治家を買収し、技術を盗む。

 極大魔法の実験により放射線汚染を広め、これに反対する声を各国の貴族を買収して黙らせる。


 宰相はその実験が失敗し今回の事件を招いたと推察し、海域調査を命じる。

 かつて家族をゴドランの襲撃で失った学士が同行する。


 やはり付近一帯は強力な放射線で汚染されていた。

 そして、調査に向かったキリエリア海軍戦艦を沈めんと迫る新興国潜水艦、だが何者かの手によって脆くも沈められた。


 戦艦は熱感知写真によって、放射線を帯びた巨大生物の影を捕えた。

 

 新興国はこの調査を侵略の準備と批判、対立を深めた。

 諸国条約は新興国に極大魔法の放棄を命じるが、むしろ怪獣撃退に確信を得ていた様だった。


 人工衛星は怪獣出現の兆候、極々地地震を察知するが、新興国の戦車隊が怪獣殲滅に向かい、地上に現れたアモルサズを小型極大魔法兵器で撃退した。

 そして怪獣撃退の褒章を各国に求め関税を強化した。


 しかし怪獣騒動は周辺諸国へ及び、ケラトスが都市を蹂躙、逆に周辺国は新興国へ賠償請求し、国境を封鎖する事態へと及んだ。


 キリエリアは、科学者は更なる極大魔法兵器の開発が更なる事態の悪化を招くことを懸念する。

 主人公の科学者はゴドランを国境地帯の火山に誘導し抹殺する案を提案する。

 彼はゴドラン襲撃で家族を失い、復讐心から研究を始め、そして生命の無尽蔵の力を前に純粋な研究者となった。

「もはや極大魔法の力ではゴドランは倒せない。

 人間の業が生み出してしまった不滅の怪物を、自然に返す。

 これが人間の責任だ」


 しかし軍は都市部に出現した際の対処療法として、核分裂を抑止するカドミウム攻撃を並行して準備を進める。


 ある夜、新興国が自領外に秘密裏に建造した重金属採掘場で放射線漏れが発生。

 そこにベヒモドが出現、貯蔵庫を求め上陸する。

 新興国空軍とベヒモドが戦うが、急行した条約軍は強烈な放射線を放つ巨大な影を確認した。


 遠方からの白熱光がベヒモドを一蹴した!

 それは従来以上に巨大化したゴドラン。

 ゴドランは貯蔵庫を抱え込むと、背びれが強烈な力を発した。

 科学者は周囲の放射線がゴドランに吸収された事を知り、呆然とする。


 そして背びれから雷の様な光を放つと、電探や無線が使えなくなってしまう。

「電磁パルスだ!」

 強力な極大魔法が巻き起こす、電気の時代への破壊の魔手だ。


 そのままゴドランは海へ向かい、新興国の首都を襲撃、新興国首脳は地下に避難。

 首脳部は極大魔法兵器の使用を命じ、首都毎極大魔法で爆破した。

 数十万の住民と共に、首都は溶鉱炉と化したが、ゴドランは高熱と高圧に耐え、近海から海底へ去った。


 新興国の王と首脳は捕えられたが、脱毛し皮膚の壊死が始まっていた。

 医師は助かる見込み無しと宣告し、亡国の王は諸国条約への脅威を訴えつつ死を待つ病棟へと送られる。

「あの王を非難できる資格のある王はおるまい。我が国も嘗てはああだったのだ」

 宰相は嘆く。


 条約各国はゴドランを追跡、最初に出現したキリエリアへの上陸が懸念された。

 人々はパニックに陥り、科学者にも避難が呼びかけられるが、彼はゴドランの帰巣本能を応用した誘導装置の完成のためレイソンに残った。

 新興国の難民が乞食となってレイソンに侵入し、商店や食堂を荒らしまわる。


 ついにデンガナにゴドランが上陸、陸軍の垂直飛行機隊との攻防の末、徐々に放射線反応は弱まるも港町も繁華街も壊滅状態。

 科学者は超音波誘導装置を完成させ、ゴドランを王都から誘い出し、国境線の火山地帯へ誘導する。


 無人操縦による戦車隊、ロケット隊が火山地帯でゴドランを攻撃、闘争心に燃えるゴドランを火山口へ誘い出す。


 頂上でゴドランが見たものは、誘導装置を組み込んだ電波塔だった。


 軍が火口内の爆弾を点火、ゴドランは火口に転がり込み、噴火が始まった。


 その様子をテレビ通信で見る宰相には、断末魔の叫びをあげ火山に呑まれるゴドランが文明社会の巨大化に呑まれる自分達の姿に重なり、涙を禁じえなかった。


******


「新興軍事大国の外交欠礼、関税攻撃、難民の流入。

 オマケにカドミウム、電磁パルス…

 こういう話をよくポンポン思いつくなあ」

 完成台本を前にショーキ監督が呆れて言った。


「異世界の記憶を色々いじくっただけだよ」

「前に聞いた話と随分違うよ?」

 以前リック社長は異世界の記憶にあった怪獣映画復活ブームを、映画会社自らが船頭多くして山に登って失敗させてしまった逸話を愚痴っぽく語っていたのだ。


「あれは外野がうるさかったからだよー!」

 この作品はそうさせてはならない、と固く心に誓うリック社長だった。


 夏の間に撮影が進む。

 トリック第二スタジオもクラン大プールも、スプラテリトスが、ゴドランが暴れる。

 夏の晴天は撮影や爆発シーンには味方したが、撮影するスタッフには敵となった。


 高温が予想される日はスタジオで帝都の夜景が撮影されるが、それでも暑かったので、風魔導士が換気を行った。


******


「ムヒョー!アチョー!ホヨッホヨッホヨー!」

「暑さで狂ったか?」

「いやいや、これはカッコいいぞ!」


「スプラトリテス」の現場も暑さの中撮影が続いた。

 夜の王都、高架鉄道が交差する場面で爆発の度怪獣や高架橋が照らし出される。

 手前には大縮尺、今日遠近法で置かれた信号機や電信柱。


「って、今までも同じ様な場面何度も撮ってたでしょ?」

「あのね、セワーシャ。少し色が違うんだよ」

「色?」


 かつて「1799」では完璧主義の監督が人の目で見た感覚を重視し、モニターはフィルム投射、照明は白色に拘った。

 リック社長は逆に、テレビで写される映像に慣れた人の目を重視し、モニターは小型テレビを、照明はフィルムに僅かに青白く映る感覚を重視した。


 方法論の違いだが、リック社長は「今」の感覚を重んじる事にした。


「それにね、フィルムも進化して、昔と色合いが全然違ってるんだよ~」


 高感度、高精細を目指しレイソン化学のフィルムは改良を重ねていた。


 ある意味、青白く映る照明の色が時代の証人となり、いずれまた白い照明、もしかしたら蝋燭の様な黄色みを帯びた色が時代の証人になるかも知れない。


 夜の照明に浮かぶ様に映し出された人気ダントツの分身宇宙人ボクリセ星人と、胸や額が煌めくスプラテリトスの、トランポリンを使ったアクロバティックな格闘。

 空中一回転とハイキックが高層建築の灯が煌めく姿を背に空中で交差する。

 放たれる色鮮やかな光線をヌイグルミ役者がトンボを切って交わし、反撃に弓上光線を複数放つとボクリセ星人が華麗にひねり回転で躱す!


「モヒー!カッチェカッチェ!カッチェエー!!」

「社長社長!どうどう!」

「ウヒー!」


 試写の度リック社長の絶叫が響くほどの出来栄えだった。


 本編も渋くカッコイイ物語が撮影された。

 雰囲気は「スプラフィニス」に近く、主人公はややニヒルな二枚目だ。

 勿論ヨーホーテレビの協力で、ヨーホー特撮で活躍したアゲンス・テッテ氏やユース・バンジョー氏が軍人や科学者役で、「ヴェラトラヴィ」で性格派俳優の面目躍如だったシルヴァ・リートゥス氏が科学アドバイザーとして一歩引いた立場からUGSに助言する等、ファンにとって嬉しい面々も参加した。


 そして音楽。作曲はスプラシリーズの顔ともいうべきアスペル師。

 宇宙警備隊、神秘に満ちた彼らの母星の主題は、「交響詩スプラルジェント」で用いられた「スプラ・ファブラのものを継承した。


 そしてスプラフィニスの戦闘テーマはその変奏曲、重厚且つ神秘的な母星の主題を英雄譚の行進曲にしたマーチ調の曲、そしてアレグロに速さを上げた曲が書かれた。

 UGSの曲は、力強い男声合唱だが、より軽快な曲が書かれ、更にスプラトリテスの手によらない勝利を勝ち取った時の別の主題まで書かれた。

「これもスキャット入れようよ」

 何と一作で男性スキャット二曲持ちとなった。


 こうして1クール目、主人公の宇宙からの帰還、帰路での惑星救済、地球に帰って復活怪獣戦争再燃の13話が納品された。


 2クール目には社会問題にフォーカスした怪獣攻防と人間ドラマの比重を変えた13話の撮影が進み、ほぼ編集段階に入っていた。


 このクールはヨーホー映画、ヨーホー映像両社の若手監督がマッツォ社長に頼み込んで持ち込んだ企画と、英雄チームの書き上げた企画をすり合わせて撮影された。

 怪獣との戦いも幻想的に描かれたが、ハッピーエンドにしろバッドエンドにしろ、感情があふれ出す様な作劇と特撮が、1話通して心理劇の様な演出まで求められた。


 試写会の反応は、第1回目では中々だった。

 そして2回目、地球で人気怪獣が復活し、UGSとの戦い、そして地球に颯爽と現れたスプラテリトスとの戦いで盛り上がった。


 2回目、UGS発進シーンに男声合唱の音楽が入るとリック社長がジタバタし出した。


(うんうん、これスゴくカッコイイしなあ)

 そう思う関係者が一言言った。


「せめてUGSの登場を1回目に前倒しできないか?」

「あの特撮を2回目に後回しにしてしまうのは惜しいなあ!」

(うんうん。そうだよね、そうだよねえ)

 即座にリック社長が合意した。


 急遽UGSの情景、戦闘機離陸や管制室のシーン、主人公を探索するため宇宙船を出航させる場面が追加され、最初に訪れた惑星が衰退した説明が2話に回された。


 2クール目の終盤はVDTが過剰な防衛力を持ち、逆に侵略者に利用され内通者同士で内紛を起こす。これに過去のスプラルジェントたちが最初は立場を別って戦い互いに傷つく。

 しかしこれは茶番で、過去の姿に変えたスプラルジェントたちがVDT内の協力を得て内通者や侵略者を炙り出し、最終兵器のゴーレム戦艦を撃破する戦いに仕上げたのだ。


「映画並みの仕込みだねえ~」

 2m大のミニチュア、最後は怪獣に変形する巨大なゴーレム戦艦を眺めてアイディー夫人が呆れる様に言い放った。


「元々映画用に考えてたんだけど、この際この後なんて無い位出し惜しみしない方がいいかなーってね」


 2クール目の試写が進むと、リック達英雄チームは、トリック特技プロは、そしてヨーホーテレビやスポンサーたち関係者は成功を確信していく様になった。


******


 その一方で、リック社長の古巣であるヨーホー特技部も負けてはいなかった。

 復活ゴドランは既に暴れ始めていたのだ。


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