表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
331/368

331.ゴドラン、復活への蠢動

 スプラルジェント復活、この動きに呼応するかの様に、ヨーホー映画でもゴドランの復活が企画された。


 そしてヨーホー映画に呼び出されるリック社長。

「何で?」

「ゴドランに関してあなたより知っている人はいないでしょう?」

「そういうのに拘るのやめた方がいいんじゃない?」

「まあまあそう仰らず」


 企画会議の一員となったリック社長。

「まず産みの親から今新たにゴドランを超大作として取るなら、どうしたいと思いますか?」

 まあこう来るだろうと考えていたリック社長が即答した。


「ゴドランはかつての極大魔法の驚異を形にしたものでした。

 でも今はもう極大魔法の懸念はほとんどない。

 有り得なくはない、技術的な懸念もあると言えばあるんですけど、それを映画で描くとマネするバカがでるのでやりたくないんです」


「核分裂発電、ですかね?」

 若い学士が言う。王立学院から来た様子だ。


「理屈の上では可能だけど、制御は不可能。

 膨大なガンマ線を各国に振りまいて大陸西の人口は激減しかねないよ。

 その後には、新しく生まれた、何の責任も無い子供が命を脅かす病気に苦しめられる。

 今まで色々な作品で描いてきた『放射線障害』だよ」


 忌々しそうにリック社長が答えた。


「しかし実験はすべきでしょう?

 世界にとって大きな力になります」


「今の世界の電気消費量なら、火力発電で充分だよ。

 そんな危ない火遊びやるなら、核分裂反応の、絶対に何があっても止められる完全な制御。

 発電所の解体、廃材の保管、そいつらの完璧な放射線漏洩防止技術が確立してからだ」

「そんなの出来る訳ないじゃないですか!」

「出来なかったら多くの人が苦しんで死ぬんだよ。

 だから映画でも軽々しく取り扱えない。

『世界最終戦争』や『カタストロフ』あたりの描写にとどめておくのが限界だ」


 そこまで聞いてなお若い学士が訪ねた。


「では、その恐ろしさを、対策を映画で訴えればいいのでは?」

「起きてもいない悲劇を拡散させるべきか、確立されていない対策を訴えるか。

 俺は、今は、反対だね」


 リック社長の言葉は重かった。

 多くの人の命に係わる問題、機関車や工場のばい煙、鉱山の鉱毒、薬物の安全検査、鉄道運行手順や確認方法など彼は細心の注意を払って指導書を書き続けて来た。

 無論、映画についても。


 昔の様に照明技師や操演技師が肌から汗ではなく直接塩を噴き出す事も、今ではなくなっている。


「リックさん。何とか映画になりそうなアイデアは無いでしょうか?」

 極大魔法や放射線というものを軽く考えていたみたいな若手学士は放って置きつつ、マッツォ社長が訪ねた。


「敢えて言うなら、秘密裏に謎の研究の末発生した核汚染物質を各国が捨て、それがゴドランを強化させ、復活させる。


 各国がその責任を押し付け合って、暗闘する。

 結局ゴドランは自分の生息領域に近いレイソンを通過し、大破壊。


 それでも人類はゴドランの生体を研究し、誘導し、何とかゴドランを火山に叩き込む事に成功する。

 そんな感じでしょうかねー」


 リック社長はスラスラと話すと

「「「オオー!!!」」」

周囲は感心した。


「あ、いやあんまりそっちの方に話を持ってき過ぎても今のお客さんはピンとこないですよ?

 あくまで大都市破壊の爽快感を見に来てるんだからね?ね?」


「爽快感?」


「ええ。

 怪獣映画の楽しみは、昔も今も変わりません。

 原始の生き物の獰猛さが文明に反撃する爽快感です。

 もし、数十mの生き物が大商店や宮殿を壊す力などない、そんなシーン撮るべきじゃない。

 そんな理屈に拘ってただ王都の真ん中の道を歩くだけだったら、そんな映画誰が見ますか?」


「そんなの誰も観ないだろう」

 真っ先にマッツォ社長が反応した。


 これは、現実主義に拘るあまりそういう事を言い出す輩がいる事を察したリック社長の先制攻撃だった。

 案の定そういう考えの輩は言い出しそびれていた。


「こういうスペクタクル映画に必要なのは迫力です。

 本編も特撮も、情報に情報を重ね、25年前より遥かに多くの情報が飛び交う今にあわせて。

 本当に怪獣が現れたらどうなるか、国や軍はどう動くか、それを想像力や知識を総動員して、情報を映像を観客に一気にぶっつける。

 私はそれをお勧めします」


 リック社長の主張に、誰も反論できなくなっていた。


 すると本編監督のテンさんが発言した。

「ゴドランは文明の驕りを諫める存在です。

 最後に、新たな科学の産物で消え去るのではなく、火山に沈めるというのも、文明がゴドランという象徴を自然に元に戻す、良い結末でしょう」


 過去、プテロスもプロメテの末裔たちも自然に飲まれて姿を消した。

 怪獣映画の定番でもある。


「リックさんの意見を元に作業を進めましょう」

 一旦その場は解散となった。


******


 会議室に特撮陣が残った。


「なあ、リッちゃん」

 何かありげにショーキ監督が話し出した。


「久々にコッチで監督やんねえか?」

「やだぴょ~ん」

「ヒデエなあ!」

 そう言いつつも、ショーキ監督はどこか安心したかの様だった。


 リック社長は更に言う。


「だってもうショーキさんがヨーホー特撮の親分だよ?

 覚悟決めてよ!」

「お、そうか。だってさ社長!」


 マッツォ社長がバツが悪そうに会議室に戻った。

 ショーキさんはマッツォ社長の頼みでカマかけたのだった。


 だがリック社長は続けて言った。

「俺はテレビで、出来れば映画でも巨大英雄ゾロゾロ連れてやりたいなあ。

 勿論ゴドランもやりたいけどさ。


 でもそれはショーキさんに失礼だよ!」


「元々リックさんが撮ったゴドランじゃないですか?」

 たまらずマッツォ社長が言った。

 恐らく彼の言葉は経営者の言葉ではなく、単純にあの、音楽祭に押し寄せた多くの若者の想いを代弁したものだったのかもしれない。


「昔はそうだったよ、でも俺はもうヨーホー映画じゃないんですよ」


 マッツォ社長は落ち込んだ。

 嘗て、現場も映画も知らずに優良企業と言うだけで群がり、経営を狂わせかけた上澄み役員ども如きが、この場所を生み出してくれた大恩人を。

 異世界の知識云々もあるかもしれないが、それ以上に純粋に特撮映画を愛し技術と情熱を注ぎこんでくれた偉大な才能を追い出してしまった事を。


 しかし、それはもう随分前の話になってしまった。

 落ち込みつつ、今更感をかみしめた。


 そこにショーキさんが宣言した。

「失礼って言われちゃあ、やるしかないな!なあ!」


 リック監督、デシアス監督が共に去った後のヨーホー特撮を支え、成功させ続けて来たショーキ監督の言葉こそ、今重みのある言葉だ。


「そうだ。その通りだ。

 リックさん、それにショーキさん。

 悪かった。

 昔の仲間の想い、今いるみんながいてのヨーホー映画なんだ。

 よろしくお願いします!」

と頭を下げた。


「こっちもアイデアは惜しみませんよ」

 こうして企画会議は動き出した。


******


「怪獣対決は古い」

「宇宙人とか出すのか?」

「アモルメのプロデューサーからゴドランと悪魔が世界を懸けた戦いをとか」

「SF作家がゴドランが実は宇宙人で妊娠していてロケットに改造して宇宙に打ち上げろとか」


(異世界の記憶持ってる奴どんだけいるんだよ?!)

 リック社長が頭を抱えたが、幸か不幸かそんなこと言い出した人々に異世界の記憶は全く無かった事は後に確認された。 


「ゴドランとキリエリア政府の一騎打ちも面白いけど、それやちゃうと過去作と違う感が凄いんです。

 過去作を否定する様でなんだか寂しいですしね」


「でもキメラヒドラとかマキナゴドラン出したら、また過去のお祭り映画みたいになりませんか?」

「いっそそれでもいいけど、まあ…

『内海』みたいな感じで、政府対ゴドラン、その前座で過去の怪獣の中でも古代竜に近い現実的な数匹と各国との戦い、そこでゴドランが登場、でもいいんじゃないですかね?」


「国と国の話になると色々難しくなるなあ。

 いっそ架空の国に悪役になってもらう、近未来戦記みたいにさ」

「いいね!大陸南方に新興国が出来て、勢力拡大のため極大魔法をやたら使う国が幅効かせるとか」

「宇宙人みたいだけど、宇宙人よりマシかあ」


 その後も論議は続いたが結局リック社長の発想を超えるものはなく、その方針で企画が決まった。


******


 スプラルジェント復活に続いて「ゴドランの復活」が製作発表された。


 登場怪獣はゴドラン、それにベヒモド、アルモザス、ケラトスの古代生物組。

 ゴドラン以外は早々に撃退されたり、突如出現したゴドランに一蹴される。


 主人公は何と宰相、演じるは嘗て商会長シリーズで活躍し、「内海」で狂気じみた学士を演じたロレール・センムー氏。


 そしてもう一人、ゴドランに家族を奪われながら、その生命の神秘と極大魔法の影響を研究する学士、演じるはアゲンス・テッテー氏。


 その内容は、近未来政治映画として現実味を持たせようとする意気込みが感じられるものだった。


 監督はガウディム・コリス監督やカルタ・シルバ監督が候補に上がったが、どちらも「ゴドランには興味がない」と蹴った。

 ならば勝手知ったるテンさんへと、まるで四半世紀前と同じ様に決まった。

 無論、特技監督はショーキさん。


 音楽は勿論先の音楽祭で喝采を浴びたナート師、その裏に異世界の不思議な旋律を知るリック社長だが、飽く迄協力者としてクレジットされるだけとなった。


 無論、リック社長はじめトリック特技プロの面々がこの場にはいなかった。

 熱烈なファンはリック社長の想いを理解する程には成熟しておらず、新たなゴドランの門出に偉大な名前が無かった事を残念がる事になるのだった。


******


「少しでも名前を出した方が、若いファンの方には良かったのではないでしょうか?」

 珍しくアイラ夫人が訪ねる。


「それは違うんだ。

 もうゴドランは俺の作品じゃない。

 ショーキさんたちの作品なんだよ?」

 アイラ夫人の気持ちを汲んで、自分に言い聞かせる様にリック社長が答えた。


「音楽もさ、あの×××先生じゃ、なかったんでしょ?」

 異世界の怪獣映画復活では、新しい作曲家が起用され、あまりファンからの評判は芳しくなかった様だ。

「そうだよ、頭痛いなあ」

「ふふ!でも何だか楽しそうですよ?」

「バレたか!

 難しいけど、よく考えてやらなくちゃ」


「それよりスプラテリトス!そっちやって下さーい!」

 ミーヒャー専務が割って入った。

「怒られちゃったー」

「うふふ!」「ぶひゃひゃ!」


 異世界から伝わった特殊撮影も30年近く。

 彼らの再挑戦が試される時が来た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>転生者疑惑 記憶は無くとも何かしらの電波は受信してたのやも……?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ