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327/368

327.祭りは続くよどこまでも

 その祭典は、王都からやや離れた場末、ケアリア伯爵領で行われた。

 集まった、やや身だしなみに問題がある若者たち、男女比4対1の集団が開演を待った。


「皆さん、ヨクいらしゃいました」


 ケアリア伯爵は、劇場を埋め尽くす観客に挨拶の口上を述べた。

 男爵以下か平民ばかりの来客相手に、普通なら使わない敬語で挨拶したのだ。

 だがちょっと変なイントネーションだ。


「今は宇っ宙~時代にナリマシタ。

 デモ皆さん。

 奇跡は昔のことでショカ?神秘は言葉だけでショカ?

 いーえ!

 奇跡は今でもあります、神秘も夢ではアリマセン!」


 劇場から笑いと拍手が漏れる。

 これは映画「マハラ」での、悪徳興行師の名セリフの引用、それも独特のクセのある言い回しで述べたのだ。

 この反応が嬉しかったのか、伯爵は続けた。


「デハ只今より、現代の奇跡、現代の神秘。

 私達が幼いころから大切にしていた、偉大な特撮映画を再発見する祭典を開催します!」


 劇場内が割れんばかりの拍手喝采に包まれた。

 そして、ケアリア特撮映画祭が始まった。


******


 特撮映画祭初日。

「キリエリア沖海戦」「ゴドラン」「白蛇姫 愛の伝説」「地球騎士団」。

 これらの上映の後、リック社長とポンさんが壇上で1時間程話した。


「まー最初は何やってんのか解んなかったね」

「でも『白蛇姫』の頃は俺の間違い指摘して貰いました」

 洪水シーンの高速度撮影の問答を、恥も外聞もなくリック社長が話した。


 途中、アックスとデシアスも登壇し、劇場は盛り上がった。

 かつて国を救った英雄達の登場に場は興奮した。

 二人はゴドランの演技、世界の名優マイト氏との、合成を巡る衝突等を話した。


 今まで知る由もなかった舞台裏の話が終わる都度、爆笑や拍手が沸き起こった。


 トレート氏との出会いや「フォルティ・ステラ」シリーズへの協力等も語られ、1時間はあっという間に過ぎ、誰もが興奮しながら旅館へ向かった。


 リック達は領主館に泊まる予定だったが、

「皆がいる旅館で一緒に盛り上がらない?」

と、晩餐の後旅館へ向かった。

 これをケアリア伯爵夫婦も追いかけ、


「やー、お邪魔するよー!」

「「「うおー!」」」


 旅館の大ホールでリック社長は若いファン相手に過去作品の感想を聞いて回った。


 更に

「あれは全部細い鉄の線で吊ってるんですか?」

「そうだよー。でもカメラに写さない様、ホリゾントと同じ色に塗って、照明も反射させない様調整してるんだよ」


「火山はあれは塗料なんですか?」

「本物の溶けた鉄だよ」

「「「危ねえ!」」」「「「怖ええ!」」」

「デシアスが足元に溶鉄来てるの忘れて撮影に没頭してさ!」

「「「すげー!!!」」」


「全部異世界の記憶ってホントですか?」

「作品はそうだよ。

 でも撮り方は断片的な知識から練り上げるしかなかったよ。

 何しろ、折角平和になったんだから、俺にとってそれが一番の楽しみだったんだ」

「「「ほえ~」」」


「それよりさ、君は何が一番面白かった?」

「全部です!」

「「「俺も!!!」」」

「はは!ありがとうね!」


 アックスやデシアスに質問するファンもいた。

 特に女性陣はアックスに集まった。


 質問に加わらず、顔見知り同士でネタ話で笑い合うファンもいた。


 物凄く盛り上がり、大変やかましかったので旅館の主が

「日付が変わったら解散して頂けませんでしょうか?」

と領主に頭を下げた。


 リック社長にとって、そして領主夫婦にとって、その場に集まった若者たちにとってもこの上なく楽しい時間は一瞬で過ぎ去った。


 英雄チームの妻子は、領主館に急造された温泉でくつろぎ、夫たちより一足先に休んでいた。


******


 二日目は「宇宙迎撃戦」「怪星バベル」「陸海空戦艦」「全怪獣総攻撃」、そしてポンさん、ショーキさんを交えてのトーク。


 最初は、「全怪獣総攻撃」に出演した英雄チーム夫人会も登壇し、物凄い喝采を浴びた。


「『バベル』はさー、これ絶対当たるって思ったんだよね、でも、コケちゃった!」

「「「わはははは!!!」」」


 ショーキさんは話を膨らませて聴衆を引き付けるのが凄く上手い。

「リッちゃん、いやいや、偉大なるリック監督様はですなあ」

「リッちゃんでいいよ、今でもクランじゃそうでしょ?」

「いやいや、こんな若いファンの皆様の前ではそうはいかんでしょリッちゃん?」 

「「「わはははは!!!」」」


 リック監督の後を継いだ、リック監督のレールを歩みながらそれ程の大成功を成し遂げていないと批判される事もあるショーキ監督だが。

 この弁舌には特撮大好き軍団も爆笑と喝采の渦だった。


「最初『皇帝のいない帝国』ではね、反乱軍の無念を表すため曇天で敵艦を沈めるつもりだったんだよ。

 でもリッちゃ…リック先生が反対して、それでも何とか曇天にして貰ったの。

 でも、本物の曇天ってさ。

 明るい!んだよねー!」

「「「わっはははは!!!」」」

「無念もなにもないよ!」

「「「どわっはははは!!!」」」


 この日のトークは1時間のところが2時間に伸びて、途中でリック社長が

「夕食の時間が押すんで旅館に連絡しますねー」

「おー、悪い悪い」

「悪いじゃないよ!」

「「「ぶっはははは!!!」」」

急ぎ旅館に夕食の時間を遅らせて貰った。


 三日連続は参加出来ない来客もいて、彼らは名残惜しそうに帰って行った。

 そんな彼らをリック社長は

「また俺たちの作品を見てね!楽しかった思い出を忘れないでね!」

と、握手して見送り、ファンは思わぬ出来事に感涙しつつ去って行った。


******


三日目は「スプラQ」「スプラルジェント」、更に「フォルティ・ステラ」「トニトアビス」等テレビ、短編作品。


 特にトリック特技プロの天然色ステレオ大画面で観るのは初めてという人もいて大変盛り上がった。


 トークショーでは。


 招待されたトレート氏が仕事を忙しい中

「ファンに背を向けて何が映画人だ!って言って飛んできましたよ、こんな若いファンに呼ばれて蔑ろになんかね、それも昔の懐かしくて恥ずかしい作品を見るともうねー」

「トレートさん話し長いよ!切れ目が無いんですよ!」

「「「わははは!」」」


 ショーキ監督以上にトレート部長の話は長かった。

 途中、アックス氏が数十年ぶりにフォルティステラの姿で登場、

「「「うおー!!!」」」

 場内総立ちだった。

 トレート部長の話が長引き過ぎたらブった斬るために用意していた。


 そしてスプラシリーズのメインライター、アイディー夫人も登壇。

「リックきゅんがね、異世界の、とっても酷い戦争の中生き残った人の願いを教えてくれてね、もう、もう~!」


 涙ながらに異世界の原作者の話を語り、聴衆も涙した。


「みんなも、平和を大事にしてね。

 向うから来る戦いには負けないでね、備えてね。

 戦いから目をそらしちゃダメ!ここの領主さまはね、父親と戦う覚悟を決めたの。

 でもこっちからバカみたいな侵略する戦いを仕掛けるのは、ダメ~!」


 暗に「魔王軍討伐戦」を仕掛けた、今は亡きテラニエ帝国を批判しつつ、平和を訴えた。


 ケアリア伯爵夫婦は、観客席から席上の魔導士アイディーに跪礼を捧げた。


 今や立派なレディとなったキャピーちゃんも

「今度人形特撮があるなら、どこか敵も味方も、親しめる優しさがある話だと嬉しく思います」

と「トニトアビス」のおばあちゃん人形を操りながら感想を語った。


 特撮映画祭の最後締めに、ケアリア伯爵夫婦が閉会を宣言した。


「お願いです!

 再びゴドランを、スプラルジェントを、ペルソネクエスを!トニトアビスを!

 劇場に、テレビに復活させて下さい!」

「みんなに、また正義と勇気を与えて下さい!」


 場内が爆発するかの様に拍手喝采が沸き起こった。


 リック社長達は感涙しつつ喝采に手を振って応えた。


 その夜は。

「フォルティステラー星を越えてー!」

「怪獣ー!怪獣ー!大怪獣ー!」

「来たぞ!我らのスプラルジェントー!」

「危機に遭ったら呼べ!その時見よトニトアビス!」


 特撮主題歌の合唱大会となってしまった。


「日付が変わったら!全員解散!」

 三日目となると領主にも宿泊客にも、遠慮会釈もへったくれも無く、旅館主が怒鳴り込んで来た。


******


 翌日、帰路の鉄道で。


「皆さん、大したものですねえ」

「お母さん!」

 セシリア公爵夫人とザナク公爵の夫婦がお忍びで来ていた。


「挨拶できずに申し訳ない、妻に黙って居ろと言われまして」

「でもねリックさん、あなたが撮って来た作品は、世代を超えたんですよ。

 私も誇らしく思いますよ」

 伯爵夫婦は何とも言えない満足そうな表情だった。


******


 翌月。ミルハ男爵領でも同様の喝采を浴びた。


 来客が何と六割方被っていたので、流石に上映作品のプログラムや話す内容は変えてあった。


 しかし、熱狂や興奮は変わらなかった。

 無論、旅館の大ホールでリック社長、ヨーホー・ショーウェイスタッフ、英雄チーム、そして領主夫婦を交えて日付が変わるまで飲みつつ親しく語り合い、盛り上がりすぎて旅館主から怒られた。


 帰路の鉄道で、皆が口々に感慨を語った。

「は~!楽しかった~よ~」

「結構疲れたけどねー」

「みんなよく覚えているものだなあ!」

「久々にあの頃の情熱を思い出したぜ!」


「社長、次回作が遠のきますよー」

 最後にミーヒャー夫人が愚痴をこぼした。


「でもね、大きなヒントはもらえたよ」

「え?何です?何ですか?」

「まだ確信は持てないけどね」

「確信を得てからでは遅すぎる事もあるんです!」

 ミーヒャー夫人が「地球騎士団」の台詞で返して来た。


******


 このイベントの噂は、王立放送局で話題にされた。

「各地でかつての怪獣映画の人気が再燃しています」


 そして、火が燃えあがるのは早かった。

 各地の二番館はさながら映画博物館の様に二本立て、三本立てで嘗ての名作を上映した。


 これに続いてテレビでも視聴率の低い平日朝等に怪獣映画を放送した。

 変身英雄の新番組が減った平日夕方は毎日過去の作品を放送した。

 その再放送に、学校をダッシュで帰宅した子供達、近くの駅前テレビに群がった子供達のお陰で高視聴率を稼いだ。


 その結果、多くの若いファンが自主上映会を企画し、リック社長達に講演会を求めて来る様になったのだ。


 最初の数回こそ出席したものの、次回作の企画が進まない。

 それ以降はメッセージを送るに留めた。


 ヨーホーテレビではマッツォ社長に

「過去のスプラシリーズの再放送の資料率が時間帯最高の30%弱を記録しています」

と報告した。


 先のイベントの事もあり、

「これは、スプラルジェントの復活も考えるべきか?」

とマッツォ社長は考えた。


「何か観測衛星を飛ばしたい…

 いっそ、スプラルジェントを劇場新作でリックさんに撮ってもらうか?」


 この考えに

「社長、それならば我がゴドランも誕生四半世紀です。

 そっちを優先すべきでは?」

とセシリア公爵夫人の後任のヨーホーテレビ社長が意見した。


 だが、マッツォ社長は自戒を込めて言った。


「今年も後数か月、拙速に走れば『惑星攻防伝説』程度の反応に落ち着いてしまう。

 やるんだったら、億の予算を掛けて、1年かけてでも、今の視線でゴドランを、巨大怪獣を考え直すんだ」


 マッツォ社長はこの時以来ゴドランの復活について決意を固めていた。


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ファンの集いの楽しさが目に浮かぶようです! リバイバルブームの幕開けかー?
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