324.ヨーホー・ショーウェイ・トリック、宇宙対決!
飛び入りヨーホー映画創立35周年記念作品「惑星攻防伝説」。
「変われば変わるもんだなあ」
リック社長から提示された企画改定案を出され、一同は驚いた。
「まあコッチの方が難しい事色々言われなくて良いよな。
じゃ、ポリちゃん宜しく!」
「えー?!」
ショーキさんは「グラン・パクス」の仕上げに入った。
宇宙に復活した宇宙防衛艦ルギトス(轟き)、刺突用ドリル、垂直上昇ノズル、副砲塔に艦橋とその辺は「海陸空戦艦」だが、舷側がガチャっと開いて、最近軍の拳銃で言う「リボルバー」みたいな、穴の開いた円筒が飛び出す。
そこから艦載機や高熱光線弾を発射するのだ。
「殺意マシマシだなあ…」
「マキナゴドランみたいに最後はバシバシバシーって感じで」
「いいですねえ!」
敵艦は、何と極彩色のガレオン船。
流石に帆を棚引かせる訳にいかず、太陽光を動力に変換する太陽電池に、デザインも緊急時には防壁になる様に鋭角なデザインとなった。
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物語は、古くから戦争と平和を繰り返して来た二つの星の戦い。
両星の王子王女の婚約式典で敵国が王宮を攻撃、たちまち劣勢に追い込まれる王女の星。
しかし王女の側近は敵星の腐敗と環境汚染、破滅的な兵器の開発を察し、対抗策として強力な宇宙防衛艦、ルギトスの建造を進めていた。
都度敵に篭絡された大臣たちの反対にあったが、心赦せる仲間達と共に戦艦は完成していた。
敵の奇襲で崩壊する王城から王女を救い、侵略軍を一掃し宇宙に向かうルギトス。
敵も自分の星の破滅を前に焦っていた。
王子自ら戦艦ヴィクトルを率いる。
途中、難民船に紛れて侵入した敵に王女が攫われ、戦場はかつて両星の故郷であり、乱開発によって死の星となった禁足の星へ。
敵離宮への潜入や格闘を経て側近は王女を奪回。
ついにルギトスとヴィクトル、側近と敵王子との一騎打ちが始まる!
彼我のコスチュームの参考デザインも描かれていたが、いかにも時代活劇であり、また未来的な要素もあり、ある意味「コスモXセンス・アドベンチュラ」より大真面目なスペースオペラだ。
更にキャスティング希望もミーヒャー夫人の要望が添えられた。他国のスターも書かれていたが、
「時間との競争だ!
俳優はヨーホーでいこう、デザインはこれでいけるか特美と相談!」
「特美も含めウチなら来月には撮影に入れますよー」
「実質トリック作品だな」
「本編特撮の監督はお任せします」
「ホントはリックさんやりたいんじゃないんですか?」
「いや!ここはマキナゴドランを撮り上げたポリさんに」
「モーションコントロール撮影はお願いしますよ」
「毎度ありー」
ヨーホー映画とは思えない程スピーディーに話がまとまった。
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結局ヨーホー映像の新作に引きずり込まれてしまったトリック特技プロ。
それでもリック社長はホヒホヒと喜びながら宇宙防衛艦に生まれ変わったルギトスをガシガシと作っていた。
今となってはクラシカル、いや昔っぽい円筒形を基調にした胴体の先端に、「海陸空戦艦」譲りのドリル、これが最終決戦のキーになるのだが、これを金属で削り出す。
モーションコントロールカメラでブンブン振り回す必要があり、兎に角軽く仕上げる必要がある中、先端のドリルは厄介だった。
更には胴体からジャキン!と飛び出すリボルバーのギミックも内蔵された。
「ん~!かっちぇ~!」
「そうかなあ…」
「昔のルギトスの方が実在しそうなのだが…」
一人ご満悦なリック社長であった。
ほどなく、ガレオン船の様にオール状の対艦光線砲が舷側に並び、赤、青、金色に彩られた敵宇宙艦が完成。
「ここまで行くと、リアルとかへったくれもどっか飛んで行くなあ」
うひょひょ~と喜ぶリック社長を他所に、アックス氏は呆れた。
そして庭園鉄道が自社スタジオに向かって出発する。
「あ、また新しい宇宙船…」
「え?…」
「よほほーい!あれ?」
子供達の反応が今までと微妙に違った。
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「惑星攻防伝説」が撮影に入った。
本編の監督は、メロドラマにアクションが入る作品とあって、ジュンちゃんが指名された。
ショーキさんとの息もぴったりだ。
白亜の殿堂の0番スタジオは、「グラン・パクスの最期」の追い込みで必死だった。
トリックスタジオは地球のロケット攻撃と挟撃する形で機械帝国を殲滅する戦いの撮影を終え、ホリゾントを赤い空と黄色の雲に塗った。
更に地表には煙がたかれ、時々各部が瞬間的に発行する仕掛けも設けられた。
当初、全編背景は合成にする様リック社長が主張したのだが、「ポストプロ(後処理)の時間がない」と断念された。
「こうなりゃヤケだ」
特技監修となるショーキさんと特技監督のポリちゃんで、宇宙空間や画面に迫る部分はモーションコントロールカメラで、そこだけ背景は合成。
後は従来通りの操演で。
特にすれ違いざまに光線を打ち合い、双方爆発するシーンは今まで通り操演とクレーン撮影とした。
それでも、ルギトスが左右にリボルバーを展開して敵味方ガンガン討ち合い、すれ違ったルギトスが空中一回転して敵戦艦の帆の様な太陽電池群に頭から突っ込んで蹴り倒す場面は中々に迫力があった。
「ハーイ!OK!」
「アチョー!かっけー!」
「そ?そうですか?」
「リックさん、そっちはポリさんに任せて、こっちを片付けて下さいよ!」
ミーヒャー夫人が自社にリック監督を引っ張っていく。
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今年開催予定のアモルメでの諸国展示会、その後に開催される世界映画祭から、
「『スプラフィニス』を35mmでいいから90分に編集して上映して欲しい」との緊急の依頼があった。
「まあこう来るだろうと思って考えてたけど、面白くない仕事だよね」
総集編、短縮版というのは、その作品を完成させるために切り刻んだ作品を、更に切り刻む仕事にすぎない。
「だがあれを大画面で見られるのは楽しみだぞ?」
「我も手伝う、音響面は任せて欲しい」
そうはいっても仲間達はテレビ作品が大画面で公開される事の方が楽しみだった。
「いや、デシアスは今の作品の最後の方をしっかり頼むよ」
「そ、そうだ。浮かれていた」
「じゃあさ、私がさ、やるね~」
「頼むよディー」
アイディー夫人であれば立体音響の調整を含め任せられる。
早速どの話からどのカットを選ぶか、短時間でリック社長は書き上げた。
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「惑星攻防伝説」撮影中に「スプラレグリナス」の放送が終了した。
ステラアルカの放浪の終着点は、現在の地球だった。
最終回は地球との接触、疑心暗鬼、邂逅。
そして機械帝国の更なる追撃。
地球はロケットで機械帝国を牽制し、地上殲滅を測る帝国軍をステラアルカと再度現れたノブスムンドスで撃退し、現代地球が収容可能な人員を地球に降ろした。
新天地に歓喜する人々。
しかし、ステラアルカとノブスムンドスの主要メンバーは地球を去る決意を下した。
「我々は故郷を滅ぼした。約束の地を踏むことは許されない。
この地に降りた皆も、決してこの大地を傷つける事は許されない。
だが、もしこの美しい星に危機が現れたら呼んでほしい。
恩人を救うため駆け付ける」
乗員一同が地球代表に約束し、再び宇宙へと去って行った。
意表を突く最終回、そして英雄チーム女性陣の提案した柔らかさが徐々に人気を呼び、最終回の視聴率は60%台にまで上って行った。
最終回同時視聴はそのまま祝賀会となった。
「早く次回作お願いしますよー!」
「まーまー、今は『惑星攻防伝説』が先でしょー?」
「そうでした…」
この好評のため、先に編集が行われた「スプラフィニス」同様世界映画祭への出展のオファーがあった。
しかし
「総集編はもういやだ!」
とリック監督がゴネて実現しなかった。
スプラシリーズは昨年同様、予定通り半年の休眠に入った。
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そして次回作をどうすべきか悩むリック社長の元に、ショーウェイのトレート部長が訪れた。
「助けて下さい!」
どうにもペンゴ・ケーゾさんの特美工房が、予定していた「宇宙からの英雄達」の戦艦の製作が間に合わないそうだ。
「一応マッツォさんに仁義切るからね」
と言いつつ、快諾した。
こうしてトリック特美プロの美術攻防、そしてリック邸には2ⅿ大のヨーホー宇宙船とショーウェイ宇宙船が並んで作られる事になった。
冒頭で撃破される主人公側の防衛戦艦と、ショーウェイの作品に登場する新造惑星戦艦テラ・グロリウスの大型モデルだ。
「ど~してこ~なっちゃったの~?」
「宇宙船大好き人間冥利につきるよね!」
「そ~じゃないよ~…」
そして防衛戦艦は白亜の殿堂へ、テラ・グロリウスはショーウェイスタジオへ。
「スゲー!宇宙船が一杯だー!」
「知ってるぜ!あれ次の映画の奴だぞ!」
「ヤホー、みんなどっちも見てねー!」
「あ!またあの監督だ!」
「俺たちと同じ年…じゃねえよなー?」
自動車でショーウェイに着くと、「トリック特技プロ」の文字に若いスタッフ一同は厳しい目を向けた。
(アウェイだねえ)
とリック社長が思うや否や。
「やー!リックさんお久しぶりー!
おー!やっぱりトリック特技の美術はスゴイなあ」
ショーウェイの特撮研究所長となったインス監督がミニチュアを受け取り、例を言う。
「ごぶさたー、前のテレビの楽しかったよー」
リック社長もニッコニコで答えた。
「監督…」
「ヨーホー側の奴じゃないですか」
若手スタッフが言い寄るが。
「何言ってんだ!
この方にはフォルティ・ステラのころからお世話になりっぱなしなんだよ」「え?」
「ヨーホーの人なのに?」
古参は兎に角、若手はそんな昔の話は知らなかった様だ。
この騒ぎに古参も来てリック社長に挨拶する。
「この人はねえ。そういうの全然気にしないんだ。
特撮ある所現れる不思議な人なんだ」
「ハア…」
「モーションコントロールで協力したかったけど、出来なくてゴメンねー」
「いえいえ、そんな時間的余裕ないんで、即撮影、即爆破!ですよ」
流石ショーウェイだが、それを何とかしてしまうインス監督もスゴイ。
「大変そうだけど頑張ってー!」
「頑張ります!」
頭を下げるインス監督や古参スタッフに続いて、若手も頭を下げた。
更に
「わざわざご自分で届けて下さること無かったのにー!」
と大慌てでトレート氏が飛んで来た。
その手には、「宇宙からの英雄達」の企画書、デザイン画の複写に脚本。
「これ社外秘じゃないですか!いいんですか?」
「リックさんだからですよ!
本作について、知っておいて頂きたいんですよ」
帰ってからその企画書を読むと、フクさんが名を連ねていた。
その内容はよく考えられた活劇だった。
「惑星攻防伝説」が彼我対等の物語、こちらは完全な勧善懲悪。
悲劇ロマン対爽快感。
「厳しいなあ。向こうさんも流石歴史活劇の第一人者だ。
でも負けたくないなあ」
「あら、何だか嬉しそうですわね?」
厳しい事を呟きながらも、リック監督はライバル作品の完成が楽しみでならず、自然と笑顔になっていたのだ。




