323.ヘンシンの次はSFだ!
スプラシリーズ最新作、「スプラレグリナス(超巡礼者)」は前回同様宇宙SFモノだ。
早速主役艦ステラアルカはじめ惑星連合の戦闘艦のミニチュアが作られ、撮影が始まった。
全長1km以上という設定もあり、3m大のミニチュアがモーションコントロールカメラで撮影された。
様々な動きが撮影され、ミニチュア内部の仕掛けでセンサー収納、高熱粒子砲露出、艦載機発進体制への変形と言った玩具的な動作から、次元跳躍航法、回避運動、被弾シーン等合成が必要なカット、更に敵攻撃機視点からの大接近場面等も撮影された。
カメラが接近するカットもあれば大きなミニチュアを機械操作の支持棒が動くシーンもある。
例によって記録媒体が結構必要となった。
更に膨大なミニチュアの船団が列を成して航海する場面。
新たに多くのミニチュアが作られたが、それでも足りなかった。
前作「スプラフィニス」のミニチュアも流用したがそれでも足りず、それ以前のシリーズのミニチュアも動員して撮影された。
中には「スプラグラディエ」のCSS宇宙基地や「スプラミティス」のDCN基地まで再塗装されて回転しながらステラアルカについて行く。
「これは間違い探し的なオモシロさがあるなあ!」
かつて必死に撮影した未来兵器が再登場する様にデシアス技師が失笑した。
ステラアルカの司令官や首脳部がレギュラーメンバーとなり、司令官は今では渋みすら感じさせる様になったダン・ウェラー氏が、若き戦闘機隊長はテレビドラマで大人気の若手イケメン俳優が演じた。
「ウヒー!」
「妻よ!どうどう!」
女性陣も軍医長、作戦参謀、戦闘機隊副長等、実際の軍隊ではありえない地位を得てドラマに柔らかさを添えていた。
「そういやウチの会社、女性陣あってだし、ヨーホーもお母さんがいたけど、他は男ばっかりだよね」
「17th世紀プロもルーインさんやナンシーさん、キャピーちゃんもいて華やかでしたわね」
「でもフツー、男ばっかよ?」
まだまだ世の中女性進出など先の先、であった。
しかし映画やテレビでは女優が花を添えないと物語が固くなって仕方がない。
スプラシリーズでも特殊部隊に必ず女優は配して来た。
「宇宙SFが世の中を変えたりしてね」
「そうなるといいですね」
彼ら名優たちの衣装は、未来的の様に見えて、どこか時代がかった装飾が施された、不思議でまた魅力的なものが用意された。
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特撮カットは第一回目冒頭、過剰な開発で汚染され、廃墟と化した街が撮影された。
広大なオープンセットが荒野に築かれ、機械軍団の攻撃で破壊される場面や、廃墟の向うを宇宙船団が旅立つ場面が撮影された。
逃げる人々の後ろで大爆発を起こす街、砕ける高層建築は合成ではなく一発撮りだ。
放棄された母星。
過去描かれた地球の前にガラスが置かれ、ところどころ緑や紫に塗られた大気が動く様がグラスワークで撮影された。
これら単純な手法は製作期間短縮、製作費節約のため他の惑星に立ち寄る場面等で活用される予定だ。
広大な艦内にある未来的な居住空間も本作の見せ場の一つだ。
まるで未来の大商店の様なホールは大規模なミニチュアで再現された。
モーションコントロールカメラを使い、その遠近感を描き、ロケーションの様な自然さを見せた。
無論各所に自動階段や自動通路上を往来する人も、同じ動きをするモーションコントロールカメラで撮影され、ミニチュアに合成される。
そこで登場人物たち、とくに女性陣は未来的な様で時代的な、そして華やかなファッションを披露し、時には艦内の疑似海岸で水着まで披露し、男性陣は鼻の下を伸ばすのだ。
半年後に放送開始となるこのシリーズ、試写会の反応は悪くなかった。
悪くはなかったが、「スプラフィニス」程の驚きを以て迎えられる事は無かった。
良くも悪くも第二弾、という受け止められ方だったのだ。
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新作の撮影が進む中、「ユニバースム」10回の放送が終わった。
学術映画ながらも平均視聴率50%以上という、驚きの数字をはじき出した。
この年、学校の自然科学や算術、そして歴史の成績が平均10点以上上がったという。
王立学院の入学志願者も増え、競争率が上がった。
何より、学術解説とは思えない解りやすさと、知的な雰囲気が同居する空気は多くの人を魅了した。
この年の夏にアモルメで諸国展示会が開催され、その後に世界映画祭が開催されるのだが、映画祭の実行委員会はテレビ部門の創立と、「ユニバースム」の最優秀賞へのノミネートが内定した程だった。
ただノミネートが打診された先が王立放送局で、トリック特技プロではなかった。
「実質的にあの作品はトリック特技プロの企画、製作だ。
壇上に上がる事となればそれは我々ではなく、リック社長だ」
と王立放送局は抗議したが、
「ちょっと待ったー!」
とリックが諫めた。
「何でですか!あれはあなたの偉業ですよ?」
「いやー、俺が前にでるとSFだ特撮だって思われちゃうんで。
そう言う所とは違った立ち位置にある作品ですよ、あれは。
壇上に立つべきは、サガン学士さんじゃないですかね?」
「ホントに欲が無いなあ」
「周りが温まってくれないと、今やってる作品なんて理解されないと思いましてね」
「意外と欲深かった!」
王立放送局は抗議を取り下げた。
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リック監督は新作の撮影を続けた。
途中、極秘に開発されテスト公開中だった新型の重装艦が危機に駆け付けてくれたり、ステラアルカの移民を脅威と見做し襲撃する異星人の艦隊、更に機械帝国の三つ巴の戦いが描かれた。
都度、大きな宇宙船のミニチュアが作られモーションコントロールカメラで撮影される。
ステラアルカより一回り大きい新型重装艦ノブスムンドス(新天地)と新型宇宙戦闘機はステラアルカの発展形をデザインしたが「ミニチュアの完成を待っていると撮影期間が限られる」と判断され、ステラアルカのミニチュアを一部改造で済まされそうになった。
「いいや、ここは新しい戦艦じゃないとダメでしょ。
おんなじ戦艦ばっかじゃ飽きられる」
リック社長はムリを通して、強力な武装を持った新型艦のミニチュアを作り上げてしまった。
「あー!新しいステラアルカだー!」
自宅で完成させた3m級のミニチュアを分解して、庭園鉄道で自社スタジオへ運ぶリック監督。
「でけーなー!」
「でもあれ半分だ」
「あ!後ろにもう半分あるよ?」
「すげー!」
昔怪獣少年だった学生や、今は宇宙船に夢中な子供達も線路沿いに集まってワイワイ賑わう。
「うほほーい!」
リック社長もゴキゲンで手を振る。
「ほんとリックは未来兵器が大好きだなあ」
ミニチュアを支持棒にセットしながらアックスは呆れた。
リックの思惑通り、後に放送されたノブスムンドス登場のエピソードは視聴率が上がった。
やはり主役に匹敵するライバルや助っ人の存在は大きかった。
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トリック特技プロの宇宙テレビ映画二作品はいずれも好評。
ショーウェイの宇宙版「ホラ吹き伯爵の世界旅行」即ち「コスモXセンス・アドベンチュラ」、リックの「スプラフィニス」より先に始まった作品も人気は高く、これにSFアニメも加わって、世の中ヘンシンはどこへやら、すっかりSFブームとなった。
そこでショーウェイのトレート部長が「ペルソネクエス」の復活を宇宙で、最終的に7人に増えたエクエス達が宇宙の巨悪を倒す映画を構想した。
「いくらサイボーグでも宇宙で飛んだりできなかろう」
「ヘンシンは古い」
と反対され、この企画は「宇宙版勇敢なる七騎士」が侵略者によって滅亡寸前の星を救いに向かう物語に置き換えられた。
製作期間実に3ケ月、ヨーホーの創立終年35記念にぶつける気満々だった。
ろくずっぽ撮影準備も終わらないうちにアモルメ、ボウ帝国から人気スター、人気女優を招いて製作発表会が行われた。
マンガ家のペトロ氏がイメージ画を急ぎ書かされ、彼の助手がデザインした宇宙船が特美工房に発注された。
「凄い勢いだなあ」
「あーゆートコはショーウェイならではだよなあ」
マッツォ社長もショーキ監督も半ば呆れながら感心する。
「で、何でオレが呼ばれたの?」
イヤな予感がしつつも、リック監督がヨーホー映画本社に同席していた。
「もう一作!向こうがウチの35周年に対抗するなら、ウチもSF映画で対抗したい!」
「安直だなあ」
「もうすぐ『グラン・パクス』もクランクアップだからさ、リッちゃんにお出ましいただけないかってね?」
「ウチもそろそろ『スプラレグリナス』終わるけど、次回作考えなきゃいけないんでねー」
「企画してる間のスタッフをヨーホー映像が賄う、という事でどうだろうか?」
「まあ、どんな企画ですか?」
渡された検討用台本は「惑星攻防戦」。
「SF映画の原点回帰」と銘打って、「宇宙迎撃戦」と「陸海空戦艦」を合体させた様な企画だ。
先端にドリルを付け、砲台や艦橋を付けた宇宙ロケットが主役だ。
早速自社、英雄チームの意見を聞いた。
「古臭くないかなあ?」
「今ってこういうんじゃウケないでしょ?」
「今さ、アニメでやってる宇宙戦艦、あれの方がいいよね~」
「でも、なんとなく懐かしいですね」
「主役どなたかしら!」「妻よ…」
「懐かしいかあ。
いっそ、宇宙の別の星の話にして、ここの文化はこういうレトロなデザインなんだ、って事にしちゃうか。
で、艦橋も砲台の一種で、ホントの主砲は舷側からガチャン、って飛び出す。
最後は宇宙戦艦と宇宙戦艦の体当たり、昔の白兵戦と同じ、って」
リック社長のアイデアに一同が呆れた。
「開き直ったなあ!」
しかし。
「衣装も派手でキラキラした方がいいかも知れませんね」
「いーわねー」
「更に更に、敵と味方側のロマンスなんかあれば!」
女性陣は乗って来た。
こうして「惑星攻防戦」は「惑星攻防伝説」と改題され、未来の地球を舞台にする案は廃された。
現代の宮殿や華麗な衣装をまとった星と、極彩色に包まれ、相手を威嚇する蛮族的なスタイルの星との戦争に装いを改めた。
戦場も暗黒の宇宙だけでなく多彩な色を放つ星雲や、ガス雲が地を覆い雷鳴が絶えず、空も赤や黄色でまだらな惑星と設定された。
「1799」に始まった革新的な宇宙映画は、ひたすら俗っぽい方向へ、科学考証もへったくれもない宇宙活劇、スペースオペラ映画へと変貌していった。
「そんなんでいいのかよー!」
この企画を知ったフクさんが後日クダ巻いたという。




