表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
293/312

293.「マキナゴドランの復讐」

「カタストロフィ・終末への挑戦」のヨーホー特撮での評価は芳しくなかった。

 製作費1億で10億超えなら、まして15億ともなれば、今のご時世大したものだ。

 しかし前作「海広」30億の大成功が比較対象となり、マイナス評価を産んだ。


「そんな評価されるんなら挑戦的な映画撮ろうなんて監督、一人もいなくなっちゃうよ?」

 社長会で外部協力者として呼ばれたリック社長が発言したが、誰も反論もせず、かと言って意見を変える事も無かった。


「これが大企業の動脈硬化ってヤツかなー」

 相変わらず歯に衣着せぬリック社長だが。


 その時。

「ヨーホーは謝罪せよー!!」

 本社会議室の外から何だか絶叫が聞えた。


「終末論を振りかざし!神の教えを蔑ろにしたヨーホーはー!

 極大魔法の被害者を怪物扱いしたヨーホーは謝罪せよー!!」

「「「謝罪せよー!!!」」」

 何やら絶叫する集団が集まっていた。


「うわ!うぜえ!」

 あからさまに嫌な顔をするリック社長。


「何ですかあいつら?!」

「極大魔法の被害者を名乗る似非被害者集団。

 他人に自分の意見を押し付けて影響力を広げようとする社会のダニ、ゴロツキヤクザですよー」

「騎士団を呼ぼう!」

「お願いします。

 俺も腹の虫の居所が悪いんで、二度とフザけた口きけない様にしてやりますよ」


 そう言うや、リック社長はヨーホー本社前に自動車を横付けした集団をボッコボコに殴り倒した。

「言論を暴力で封殺するつもりかボゴェゲ!」

「自動車横付けでデケェ声で叫んで言論も糞もあるか糞垂れがあ!」

「やはりヨーホーは危険だあべし!!」

「危険なのはテメエラ偽善者だオラア!」


 余程腹に据えかねたのか、連中が乗って来た自動車を担ぎ上げて

「駐車違反だァ!他人の迷惑!考えろってんだ!ゴルァ!」

 道路に何度も叩きつけてタテヨコ1mにも満たない鉄の塊にしてしまった。


 路上でのたうつ連中は王都騎士団に逮捕され投獄。

 暫く後に、ヨーホー本社で何が起きたかも知らず、その日のうちにノコノコと「『カタストロフィ』上映禁止」の訴状を持って来たこの集団の仲間も騎士団に問答無用で逮捕された。


 ヨーホー首脳陣はこの一件に相当引いた。

「こういう問題が起きた以上、再上映しない様にした方が良いのでは?」

とまで言い出す役員が出る始末。


 リック社長は毅然と反対した。

「こういうのは弱気になったら、あの外道共の思う壷です。

 奴等は悪魔です、人の弱気に付け込んで思うままに操ろうとする敵です!

 堂々と胸を張って、王家の依頼を受けて製作した、批判があるなら国王陛下共々反撃するぞって宣言すべきです!」


 リック社長は怒りを込めて主張した。


 この事態に、似非被害者団体に牛耳られた新聞社が一斉に非難したが、

「『カタストロフィ・終末への挑戦』は、悪戯に終末を煽るもの共に反論すべくヨーホー映画、ヨーホー映像に依頼して製作したものであり、極大魔法の被害者を侮辱する内容は一切含まれていない事を保証する。


 逆に似非被害者集団こそが悪戯に世界の終わりを煽り人心に不安を掻き立て、暴言暴力を以て新聞社を支配下に置く犯罪者集団であり、これを直ちに捕縛し処罰する」

と、それこそリック社長が言う通り国王が勅命を発し、この集団は全員投獄され懲役刑を課された。


「ああいう似非被害者共はこれからも続々地獄の底から這い出て来るだろうね。

 入念に叩き潰し、人間の良心を逆手に取る商売なんかしたらこの世の地獄を見るって事を手足の指先まで思い知らせてやらなきゃね」


 この一件もあってヨーホー映画はキャスト・スタッフに改めてヒットの追加報酬を支払い、辛うじてパニック・スペクタクル第二弾は成功作として評価される事になった。


******


「リッちゃんの暴れっぷりのお陰で懐が暖かくなったよ!」

 例によってひたすら石油素材のナパーム剤を大爆発させながらショーキさんが笑う。


「俺はああいう歴史を捻じ曲げて歪んだ正義を他人に押し付ける奴がキライなんです!鏡を見ているみたいだ!」

 何故か自嘲気味に言うリック社長。


「そんな事言うなよ!アンタはみんなに素晴らしい夢を見せ続けてるんだ。

 俺達もその後を追っかけてるんだぜ!」


「監督ー!火薬用意OK-!」

「よーし行くぞー、カメラ用意!ハイヨーイ!スターッ!!」


 改造されたマキナゴドラン2が全身から火薬を放つ。

 建設中の自動車道路や郊外の高層建築が爆発、アックス演じるゴドランが爆発の中を体を思いきり前傾させ走って来てマキナゴドラン2に頭突き!

 マキナゴドラン2の腹部に爆発が走る!


「カーット!OK!」

「消火ー!」


 都市部での戦いや破壊は大体が撮影済だ。

 何しろ1億の大作のセットを使いまわせて撮影されているのだ。


 そのお陰もあってかも知れない。

 製作規模がかつての怪獣映画より相当縮小されたとはいえ、新たな試みや派手で観客を沸かせる特撮は健在だ。


 最後の決闘は都市から郊外へ、街から開発中の原野へ移動している。

 それでも今を写す景色として、王都郊外の実地をロケーションした上で、同様自動車道路や鉄道、建設中の高層建築、更に道沿いに並ぶ看板に送電線と、人の営みを感じさせるミニチュアは随所に配置されている。


 この作り物の情景も、後世に「今」を伝える証人となるだろう。

 20年前のゴドラン達が壊して回った街並と同じ様に。


******


 本編は久々のテンさんが若い俳優を指導しつつ撮影が進められていた。


 ひときわ存在感を放つのが、本作の影の主役を演じるアゲンス・テッテ氏。

 最高位の学士でありながら学会を追われ、実業界でのし上がり、財力に物を言わせマキナゴドランを復元し、世界への復讐を企む狂人だ。


 復讐のための実験の際、一人娘を事故で死なせた。

 しかしその娘すら機械の力でマキナビオルグ(改造人間)として蘇らせ、頭脳操作で従わせている。


 ただこの娘、実に儚げで雰囲気は素晴らしいのだが、演技がやや固い。

 それでもテンさん監督やアゲさんの指導や雰囲気づくりで徐々にこなれていった。


「流石ヨーホー映画随一の、穏やかな現場だねえ」

 久々のテンさん監督の作品とあってリック社長もマキナゴドランの操縦センターの内装等に手伝いに来ている。


「だったらリッちゃんも特撮やってくれたらよかったのに」

「もうショーキさん、ポリちゃんの時代だから俺はもういいよ」


 正直を言えば、この現場に交じって特撮を指揮したかった。

 だが、それはもう「彗星戦士レジオ」の最終回で慌ただしいながらもやった。

 自分がでしゃばらなくても、「カタストロフィ」は成功した。


 寂しくもあり、今の面々が頼もしくもあり、だった。


******


 しかし撮影規模は極めて縮小されていた。

 以前なら仕出しがロケ地で大勢の人を集めて避難シーンを撮っていたが、いまでは大勢を動かせる仕出しはいない。


 かつて「ヨーホー大通り」と呼ばれたオープンセットも維持費がかかるため解体され近場のロケに変わってしまっている。


 やむを得ず撮影所内で街並っぽく見える場面に「ゴドラン特撮見学会」とセットで付近住民を募って撮影する事とした。

 見る人が見れば

「あれ1番2番スタジオの丸屋根じゃねえ?」

「いつもの入り口奥ロータリーの噴水だ」

 と解ってしまう。


 僅かとは言え軍隊シーンがあるのが往年の怪獣映画らしい。

 従軍経験がある分、前2作「対トルドー」や軍隊そのものをボウ帝国への配慮で出さなかった「対マキナゴドラン」から一転、分社化前の重厚な怪獣映画らしさい雰囲気を醸していた。


 しかし特撮班、決闘シーンで

「こういうの考えてるんだけど」

 ショーキさんが持って来たのは、ゴドランのピンチの描写だ。


 谷底に蹴り飛ばされてロケット弾で埋められる。

 そこをトルネウスが麦踏の様に踏んづけている。

「こういうのはよしましょうよ」

 即答した。


「子供が退屈しないかと思うんだが」

「子供が求めているのは、もっと迫力のある場面ですよ。

 こういうおふざけ的なのは逆に『何やってんだ』って思われちゃって、もう見てくれなくなります」


 結局この場面はトルネウスが強度の気圧差を起こし落雷で攻撃、マキナゴドラン2が光線を一斉射撃してゴドランががけ下に埋もれる場面に切り替えられた。


 テンさんからも

「二度目のゴドラン登場の際に、子供達がゴドランを呼んで登場する場面を…」

「それは止めましょうよ!」

 即答した。


(ああ。「レジオ」が失敗したのは、こういう子供番組として、子供の感性との距離感を測り損なったからなんだなあ)


 トリック特技プロ作品は、今まで子供向け番組という事はあまり意識せず、普通のドラマとして「おちゃらけた」場面は排除していた。


 あるとしたら、怪獣の幼体を宥める場面。

 或いは神話で有名なおかしな場面を、結構真剣に再現した場面。


 子供のドラマにしても、子供達の立ち位置に立って考えて書いた。


 いじめっ子にいじめられる友達を前に怖くなって逃げようとした少年が、スプラミティスのお面を見ていじめっ子に殴りかかる場面。

「もう少しで僕は卑怯者になるところだった…」

 と自戒する。


 防衛隊が神獣に撃墜されると子供達が喜ぶ。

「いいぞー!次はスプラミティスが来てくれるぞー!」

「スプラミティスー!早く来てくれー!」

 彼らの教師が竹槍を翳して無謀にも単身神獣に向かう。


「馬鹿な!死ぬぞ!」

 主人公は教師を諫める。


 だが教師は引かない。

「俺がやらなきゃダメなんだ!あの子達を見ろ!このままじゃ駄目になる!」

「馬鹿!死んでしまうぞ!」

「俺は死んだっていいんだ!

 理屈じゃないんだ!」


 子供向けではあるが、子供にも大人にも向き合った異世界の物語を、リック監督は自分の世界で再現して来た。


 しかし、

「今までドラマに出てこなかった子供がイキナリ出て来てゴドラン助けて、は無理がありますよ」

 尊敬する恩人のテンさんにもここは譲らなかった。


******


 ナート師との音楽の製作も一悶着あった。

 製作補佐氏が

「最初のゴドランのタイトル主題を復活させたい」


「いやそりゃおかしいでしょ」

 結局ゴドランの主題はそのままとなり、製作規模縮小のため僅かな登場場面で全てクラン撮影所内での撮影となった軍の場面、そして最新鋭ジェット機の攻撃場面に初代以来のタイトルアレグロが復活する事となった。


 この上に、トルネウスの主題、実は機械化された娘の主題と同じ旋律ながら変奏によって印象が全く異なる音楽が宛てられる。


 復讐者の主題。パイプオルガンによる悲劇的な音楽。

 最後に、マキナゴドラン2の主題。前作の豪放磊落でゴドランとマキナゴドランのどっちが主役か解らなくなる様な主題と180度転じて、管弦楽フル演奏による、世界を支配する悪の様な広がりがある主題。


 主題歌的なものを入れるかについても

「作風に相応しくないでしょ。前作のアレもなんだけどさ」


 何だかんだ結構口を出し、また意見を求められつつ作品に関わってしまうリック社長が

「あれ?何で俺こんなことしてんだ?」

「そりゃアンタが始めた仕事なんだぜ?」

「全くだよ!今更他人行儀はなしだよ!」


 ショーキさんもテンさんも笑顔で答えた。


 ゴドラン誕生20周年記念作品「マキナゴドランの復讐」が完成し、試写を迎えた。


「規模の割には結構な大作っ振りだ」

「久々の怪獣都市破壊だ」

「軍が出ないと現実味がない」

「やはり怪獣音楽はナート師がしっくりくるなあ」

と中々の反応だったのだが。


 もし楽しんで頂けたら、またご感想等などお聞かせ頂けたら大変な励みとなりますのでよろしくお願いいたします。


 なお、活動報告・近況ノートにてモデルとなった実在の作品についての解説を行っていますので、ご興味をお持ちの方はご参照下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
うんうん、子供への距離感大事!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ