288.ヨーホー初の巨大英雄「彗星戦士レジオ」
「ヴェルトラヴィ」が終盤の健闘を見せ、最終回を迎えた翌日。
「テレ海」も最終回を迎えた。
映画では希望を抱き再会の地に向かう主人公と婚約者だが、テレビ版では沈みゆく故郷で、キリエリア最後の夫婦として結婚する。
そして迫る高潮に追われ、危機一髪、そこで劇は終わり、濁流の中に沿岸各地の風景や祭礼、無数の人々が賑わう王都の姿が重なって終わった。
最終回はやや視聴率が持ち直したものの、60%には届かなかった。
それより、各地の食堂や酒場は大変だったそうだ。
「どったの?」
「いや、子供達が泣いちゃいまして」
「まああの二人の先行き気になるけど、泣くほど?」
「次回予告ですよ」
「あ…」
今まで安息日の夜の新番組はスプラシリーズだった。
それが普通の大人のドラマになってしまったのだ。
(ここは恥を忍んで安息日に戻るべきだったかなー。
でも今は休前日の1時間を楽しんでほしいしなー。
いや、目の前のお客さんを大事にしよう。
安息日の枠はヨーホーテレビとトリアンさんの問題だ)
リック社長は割り切った。
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因みではあるが、「海広」の玩具化を担当し出資もしていたトリック玩具。
その主力製品である深海調査艇ポセイドン号。
映画では誠実に深海調査をこなしていたのだが、テレビ版では色々ピンチに見舞われたり、新型のアトランタ号を救援し共演したり、ヒーロー性が強くなっていた。
映画では後半の海底調査に登場したアトランタも深海遺跡の調査に向かう抒情的な話や、デンガナ港を閉塞する海底隆起を爆破するため自爆するなどの活躍を見せ、時々緊急輸送に登場する水上輸送機クロノスとともに模型が売れて行った。
発売時、つまり映画公開時では売れ行きがパッとせず在庫が余ってしまったのだが、テレビ版のお陰で綺麗さっぱり売りつくせた。
それだけではない。
レイソン玩具は模型教材も扱っていた。
そして元々は親が子供のために模型を組み立てたり、色を塗ったりしていた。
それが今では実在の飛行機や自動車、戦車や鉄道、近未来戦記の軍艦、更には歴史的な城攻めの再現等々、非常に凝った模型製作が大人の趣味になって来た。
レイソン玩具の商品に学校教材用だった文化財模型シリーズがあった。
歴史的な遺跡、神殿、建築を模型化し、各地の学校等においてもらおうという構想だったのだが、これが売れた。
回を追って崩れ去り沈んでいくこれら文化財を、模型愛好家が自宅に飾りたがったのだ。
「まいどありー」
思わぬ商品の売れ行きにリック社長は大満足であった。
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翌週の休前日、新番組「彗星戦士レジオ」が始まった。
色々競合する変身英雄が多くなり、更に設定ではトリック特技プロ作品に似た部分が多い。
そこで差別化を図るため、物語冒頭で宇宙からの気配を察してゴドラン達ヨーホー怪獣が雄叫びを上げる場面を挿入してスタートした。
その第一回目は、レジオファミリーの日常と、背景説明。
敵アルデバラン星人は宇宙怪獣=星獣を「星獣ロケット」に縮小して侵略する星に撃ち込んで来る。
王都上空で爆発した星獣ロケットから星獣が飛び出してくる。
地上ではアルデバラン星人に追われていた三兄妹が大陸中央の遊牧民の衣装を未来的にした様な、目元は元の俳優そのままで戦う。
ただ、末っ子は子供なので大人の演じるアルデバラン星人と追いかけっこの様なコミカルな戦いになっている。
初回放送の同時視聴の集まりでの事だが、リック社長は気にせず意見する。
「これはよくないね。子供は、こういうのわかっちゃうんだよ。
これは宇宙の戦争なんだから、敵は情け容赦なく子供でも殺すつもりで襲ってこなきゃ」
「それはちょっと厳し過ぎませんか?」
「観客がどう捉えるか、だねえ」
リック監督は、あくまでも特撮の製作協力であり、特美には思いっきり頭を突っ込めても、立場上本編に口を挟めなかった。
星獣が迫ると、胴と頭、手足の手袋とブーツが銀、腕と脚が青、ベルトのバックルが光るレジオヒーローが登場!
元の形が解らなくなるくらいリック社長が改造しまくった星獣と戦う。
光線技をあまり使わない設定なので、ハイジャンプやバク転、空中一回転で敵をいなし一撃を入れ、そこで火薬が炸裂するというアクションを軽やかに見せる。
劇伴は人気ドラマを数多く手がけ、アニメ作品でも活躍し躍動感、スピード感あふれる主題歌を描いている人気作曲家が主題歌アレンジ曲を披露している。
歌うはあの絶叫する縮れ毛の人気変身ヒーロー歌手氏である。
そして「彗星ロケットマイト!」
両手をクロスし天に翳すと一閃!腕を取り巻く曳光弾の束が出現、右手を敵に向けて振り下ろすとダバダバと連写!右手が撃ち終わると続いて左手!
敵(の爆破用人形)が閃光をバシバシ!っと放ち、ド派手に爆発する!
一家に団らんの時が戻り、しかし第二の故郷を狙い始めたアルデバラン星人との戦いへの決意を新たにするのであった。
「速報です!」
第一回目の視聴率、55%。
「スプラグラディエ」2クール目最後に登場した、グラディエの弟スパティアが登場した回の61%と比べても下がっている。
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第二回目は更に視聴率が落ち、50%割れが迫っていた。
急遽ゴドラン登場回が4回目から3回目に繰り上げられた。
「いよいよテレビにゴドラン、かあ」
既にゴドラン登場回も何回か撮影されて、都度リック社長も立ち合っている。
「アンタ出ないの?」
「いや、出てるよ?映画と掛け持ちでね」
並行して撮影されている「マキナゴドランの復讐」。
新調されたゴドランが新怪獣トルネウスと夜の軍港の街で戦う、久々の怪獣都市決闘シーンではアックス氏が頑張った。
そして「レジオ」の方では若手のヌイグルミ俳優を鍛えるべく指導しつつ、ヨレた古いスーツを改修しつつゴドランを演じている。
なにしろ本作の企画の際、わざわざマッツォ社長から
「ゴドランをテレビに出していいですか?」
と、企画を描いたリック社長の隣にいたアックス氏に尋ねたという位、白亜の殿堂ではゴドラン=アックス氏と認識されていたのであった。
トリック特技プロで年2作、毎週怪獣を生み出していただけあって、すでにアックスの指導は終わりつつある。
「40超えて頑張るわね!」
「魔力が高いからな!まだまだいけるぜ!お前だってまだまだだろ?」
「な!何言ってんのよ!」
夫婦睦まじい様子に
「ウチもまだまだいけるねえ」
とリック社長が漏らすとアイラ夫人に引っ叩かれアイディー夫人は逃げて行った。
一同、出会った頃より多少大人びた位の姿のままで、元気にワイワイとやっているのであった。
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ゴドラン登場の回は敵怪獣2匹対レジオヒーローとゴドランの2対2の戦いだ。
最初はファミリーの末っ子がゴドランを呼ぶと何の前触れもなくゴドランが走って来るというものだった。
「流石にこれはないんじゃないか?」とリック社長とアックスから物言いが入り、急遽三匹目の星獣ロケットが送り込まれた所を放射線火炎が迎撃爆破、大地の中からゴドランが爆発と共に登場する!というシーンを徹夜半分で撮り足した。
それから製作中分も含め、色々見直しが行われた。
しかし
「こんなもんだろ、って展開が多すぎるなあ」
「ちょっとおふざけが過ぎてる」
リック社長の意見はヨーホーにとっては厳しかった。
しかし。
「このスケジュールじゃあ今から直せって言ってもなあ」
「リッちゃんの会社じゃ、リッちゃんとアイディーちゃんの頭の中に話が組み上がってるんだろうけど、他じゃそうはいかないもんだよ」
ジュンちゃんからも、ショーキさんからも厳しい意見が出された。
「最初からリッちゃんに頭を下げて入ってもらうべきだったんだろうかねえ」
本編を支えて貰い、特撮との融合を成し遂げてくれた大恩があるテンさんにまで厳しい事を言わせてしまった。
「言いたい事を言い過ぎちゃったね。
でも、これだけはダメだ、ってところは、直させてもらえませんか?勿論予算の範囲、納期の範囲で」
「いやいや!これから映画二本があるんだ、それにそっちも新番組の準備もあるんだろ?
いくら何でも無理じゃないか?」
「最低限にとどめるよ。例えば、このジーガス忍法死んだふり。
折角カッコイイライバル的なジーガスが死んだふりって。
輪投げ合戦とかも。ゴドランが出て来るこの謎の書割。
ウチの名前が出ている以上、カンベンして欲しいんだ」
居並ぶヨーホー特撮の重鎮。
「どっか、テレビだからって舐めてたのかも知れないなあ…」
それもあったかも知れない。
そもそも巨大変身英雄のノウハウや哲学がないまま製作に踏み切った以上、限界が見えていたのかもしれない。
リック社長はあえてそこには触れずに、やんわりと答えたつもりだった。
「映画に比べると予算のケタが1つ違うからね。
でもここで踏ん張らないと、映画の予算がテレビ並みになっちゃうよ」
「いくら何でもそりゃ言い過ぎだ!」
やっぱりリック社長はやんわりとどころではない事を言った。
しかしそこには来るべき未来が予見されていた。
物価が倍になり、製作費はそれに追いつけていない。
ヒットを飛ばしても製作費は横ばいか下降気味。
コケたら半減、それこそリック社長の言うこともあながち間違いではないかも知れない。
「リッちゃん。
今はあんたにおんぶに抱っこだけど、出来るか?」
「はい。子供をガッカリさせたくはないですからね」
「じゃみんなでセシリア社長に掛け合おうか。
リッちゃんはOK出るまで、下手に動かんでくれよ?」
「OK!アックス、デシアス!撮り直しだ!」「「ヨッシャ!!」」
「ちょっと待てー!!」
リック社長の訴えは後追いで承認された。
そして手が加えられた作品は「監督協力」としてリック社長の名がクレジットされたのだった。
そしてゴドランやキメラヒドラ登場回は色々と手直しがなされた。
だが元が良い話はそのまま放送された。
キメラヒドラ初登場の戦いでは、レジオ一家が地球に辿り着くために使ったナヴィスペイ(希望の船)を失う覚悟で戦い、地球を離れた美の星の大地でキメラヒドラと1対1で戦う豪華なアクションショーとなった。
光線技も多用され、
「これは直すべき所がないや」
とそのままにされた。
こうして半年分のラストの撮影、マキナゴドラン登場編を迎える事になった。
この後マキナゴドランは改造され、マキナゴドラン2として映画の撮影に向かう事になるのだが。
もし楽しんで頂けたら、またご感想等などお聞かせ頂けたら大変な励みとなりますのでよろしくお願いいたします。
なお、活動報告・近況ノートにてモデルとなった実在の作品についての解説を行っていますので、ご興味をお持ちの方はご参照下さい。




