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285.ゴドラン誕生10周年記念作品

 超大作テレビ映画「内海が広がる時」は、ミニチュア特撮の粋を凝らし、観るものに改めて故郷への愛情を掻き立てる、良心的な作品となった。


 しかし、26話での終了が決定した。

 安息日の夜、「帰って来たスプラルジェント」から4年続いたトリアンアワーの特撮作品は再び中断の時を迎える事になった。


 しかし、レイソン映像は劇場映画の「海広」に続く企画、そしてゴドラン第一作から10年目となる映画も企画していた。


 更にヨーホーテレビはもう一作、念願の?巨大変身英雄作品、「彗星戦士レジオ」にも取り組んでいた。


 トリック特技プロの「ヴェラトラヴィ」の後番組となる。

 かつてヨーホーテレビの上澄み共がリック社長を怒らせ、トリック特技プロが撤退を宣言して2年が過ぎようとしていた。


「ずいぶん長く代理を務めたなあー」

「お陰で色々試したり、多くの人を雇えましたよ?」


 マギカ・テラの17th世紀プロでは現地で特撮を志す若者を、そして国家詐欺に乗ってしまった国際特撮のベテランたちを守り、そして今では倒産したジャイエンのスタッフも雇い入れている。


 キリエリアの特撮は色々と深いつながりや人の出入りがあって、映画斜陽の時代に耐えて成り立っていた。

 それもリック社長の采配あっての事だった。


「まあ誰かの役に立ったんならヨシとしよっか!」

「ふふっ!リックさんらしいですね!」


 1年2作という大変な仕事を、経理や製作進行の面で支えてくれた立役者、ミーヒャー夫人が笑顔で答えた。


******


 ヨーホーテレビの巨大英雄の代りに休前日に活躍し、徐々に苦戦してきた「ヴェルトラヴィ」も、各地で開催された王立学院の「古代竜展」のお陰もあって人気を回復し、いよいよ最終局面を迎えていた。


 作品の4クール目は、地球上の各地では記録的な高温に苦しめられ、凶作が必至という危機的な展開を迎えた。


 しかしこれはこの後に訪れる寒冷化の予兆でしかなかった。

 これを察知したTXAは各国に対し飢餓対策を訴えるとともに、今まで保護した古代竜を地上からさらに南方に避難させる計画を立てていた。


 しかし侵略者に扇動された愚者の集団がTXAの行動を無駄遣いだと非難する。

 最初は恐竜保護を訴え、隔離すら自然に反すると騒いでいた自称「環境保護団体」だ。

 それが一転して恐竜処分を訴えた。


 この辺の世の非情さ、大衆の蒙昧さをアイディー夫人が皮肉たっぷりに描いた。

 かつて愛する夫、リック社長の作品をこき下ろし、ついには反乱まで起こした無責任な新聞やそれに乗せられた衆愚を容赦なく醜く描いた。


 その最終回。

 ついに主人公は古代文明が残した「地下への扉」、温暖な地底への道を開き、古代竜を避難させる事を決意する。

 しかしそれはヴェルトラヴィでなければ閉ざせない。

 地上での生活との別れを意味する選択だった。

 だが彼は決断した。


 扇動され暴徒となった愚者は地下への扉を破壊せんとするが、TXAは群衆相手では何もできない。

 そこに古代竜の王、巨大な肉食竜が暴れ出し、暴徒たちを悔い殺してしまう。


 ヴェルトラヴィが最後の力を振り絞り戦い、肉食竜を地底に押し戻す。

 主人公は平和で豊かな地上に、TXAの仲間との日々に別れを告げ、扉を内部から封じる。


 残された仲間達は、古代竜保護の使命を終え、異常気象から世界を救う新たな使命に立ち向かう決意を固め、得意分野に身を投じるのであった。


 1年間、マンネリ化しかけた変身英雄というジャンルに一石を投じた変化球的な作品が終わった。

 最終回の視聴率57%。

 今尚大成功の水準とされる60%に達する事は無かったが、4局が相争う今としては充分に健闘した。


「いやあ、寂しいね。こんな役、フツーのドラマには無いからさ」

 最終回の試写、その後の打ち上げでTXA隊員役のシルヴァ氏が寂し気に、ドラマの配役そのままに語った。


「この作品に独特の深みが出せたのは、シルヴァさんのお陰だ!」

 本編監督も務めたデシアスが握手した。

 ミーヒャー夫人も

「かかかかカッコよかったですう~!!激渋ですう~!!」

と久々に映画ファンの少女に戻った。


「もっともっと、特撮の台本、描きましょよ~!」

 アイディー夫人もシルヴァ氏に詰め寄る。

「ははは。あなたには敵いませんよ」

「そんなことないよ~!凄く不思議でよかったよ~!」

 彼は余程空想特撮が好きと見えて、なんと本作で何作かの脚本まで書いているのだ。


 そして、リック社長も

「またウチの作品に出て下さい!」

と固い握手を交わした。


******


 一方の後半戦に入る「スプラグラディエ」。

 こちらも3クール目に新機軸が盛り込まれた。

 グラディエの死滅した筈の故郷で生き別れになった弟、スパティアがグラディエの危機を救うため地球に登場!

 宇宙警備隊の産みの親、「スプラステラ」で初登場したレックスプラによって救われていたのだ。


 兄弟の戦いが後半戦の幕開けを告げ、こちらも視聴率を持ち直していた。


 後半に入り人気が盛り返しつつ、更に新番組の開始を翌週に控える「変身!特撮アワー」。


 しかし、遡る事数か月前、今まで2作品で特撮セットを廻していたのだが、これが出来なくなり中々特美予算がひっ迫してしまった。

 更に。


「リックさん、申し訳ない!」

 多忙で中々会えなかったショーウェイのトレート部長がやって来た。

「ウチの特撮チームに、何か仕事を貰えませんでしょうか!」

「渡りに船です!」

「はい?」


 大人気ペルソネクエスも4年目3作目「ペルソネクエスイクス」。

 等身大変身英雄で大人気のショーウェイ。


 変身シーンや自動二輪や自動車が空や海を疾走する場面こそ特撮を使っているが、そのほとんどが特撮を使わない実写作品だ。

 それ故製作費が安く、需要も多い。


 今ではメカニコスシリーズ、更に第三の変身英雄を登場させヘンシンブームのトップランナーとなっている。

 しかし。


「特撮チームの出番がないんですか」

「ハイ」

 かつてヨーホー映画に次ぐ奮闘を見せていたショーウェイ特撮が。

 ボウ帝国との合作で快猿伝やゴーダの超大作を撮り上げたインス・ティーチュー監督が。

 劇場作品のわずかな合成、ちょっとしたグラスワーク(カメラの前にガラスを立て、実景の一部分を隠して背景となる絵を書き込む原始的な合成)程度しか出番が無かったのだ。

 特美班はもっぱら変身英雄の敵となる怪物の修理に追われていた。

 造形自体は人件費の安い外部に発注していて、人件費のかかる自社では安い修理の仕事しか来なかったのだ。


「直ちに編成に入ります、恐らく1ケ月以内に仕事をお願いする事になります!

 人数や編成、依頼料金は計算出来次第お伝えします!」


 リック社長は深い事情も聴かず、自社内の調整も後回しに、結論だけを伝えた。

「あ…ありがとうございます!!」


 そして社内会議。

「ムチャするなあ」

 頭を抱えるデシアス監督。


「いやいや。これからヨーホー映像は2本劇場作品を抱えるんだ。

 当然ウチも助っ人を出す。

 それと、17th世紀も動き出すよ。

『スプラグラディエ』の終盤戦は、彼ら低予算特撮チームこそ本領を発揮する!」


「それ詳しく」

 デシアス監督の後ろからズイとリック社長に迫るミーヒャー夫人。


 改めて首脳陣=英雄チーム家族で「スプラグラディエ」後半の検討用台本、予算組み、セット等の設計を洗い直した。

 二作品並行製作と違い、やはり特美、セット予算は減る。


「リックさんはヨーホーで助っ人要請があるかないか確認してください。共同制作で会社に予算が入るのか、個人契約かも含めて。

 あと17th世紀もお願いします」

 ビシっとミーヒャー夫人の指示が飛ぶ。


******


「珍しいわね、リックさんからやって来るって」

「ええ、ウチも色々今後を考えなきゃいけないもんで」

「ウチ、じゃないんでしょ?どうせ」

「はは。わかりますか」


 セシリア社長はリック社長が誰かを救うため帳尻合わせに奔走していると見抜いた。

 それに今後のヨーホー映像特技部の体力配分も精査する必要があった。


 早速特技部を集めて現状確認。

「第一が、例の世界破滅映画だけど」


「カタストロフィ・終末の序章」。


 世間では、「経済成長の後に西側世界に崩壊が訪れる」などと、まことしやかに危機感を煽る者が多かった。


「世界の破滅!」

「聖典の予言か?!」

「キリエリア沈没の次は?」

 キリエリアでは沈没は愚か余震すら起きていないのに、無責任に煽る新聞や雑誌に王国も神殿もどう戦うか知恵を巡らせていた。


 そこで「ヨーホー映画でヘンなウワサを打ち消せ」と無茶振りされたのだ。


「ある意味『内海が広がる時』でヘンなウワサを広げたのはウチだから仕方ないかー」

「ええ。その責任を取れって含みもあるんでしょうね」

「なんてこった。現実と空想の区別は付けて欲しいもんだがなあ」

「ショーキさんの特撮がそれだけ良く出来てたって事じゃないかしら?」


 などと話しつつ、「カタストロフィ」の構想、特撮規模、特撮予算が見直された。

 想定される本編の予算を考え、「海広」同様1億デナリ。

「それでも昔のゴドラン並み程度なんだよね」

「今できる事を考えましょう」


 そして、ゴドラン誕生10周年記念映画、「マキナゴドランの復讐」。

 ヨーホー映画内での脚本コンペでは、ゴドラン原典に帰る案、近未来戦記映画と融合させる案、更に撮影中の変身英雄と共演させる案まで出された。


 その中で選ばれたのが、かつてゴドランを抹殺した凶悪な化学物質を生み出した悲劇の科学者がもし悪意を世間に向けたら、というものだった。


 爆発四散したマキナゴドランを回収し自力で復活させた天才科学者が、世間の無理解の末病死した娘を機械の力で蘇らせ、マキナゴドランの頭脳として使い世間に復讐するという物語だ。


「随分ブっ飛んでるなあ」

「でも結構社会の発展や成功に取り残された無念とか、都会の孤独とかが良く書けているわ」

 脚本家は、何と女性だった。


「うんうん。マキナビオルグ(改造人間)とか脳波操縦みたいな設定、それに対する倫理的な問題とかも織り込んであるし、中々優れた作品だなあ。

 古代竜とタッグを組んでゴドランを追い詰める執念深さも面白いけど、悲しい話だねえ」

 台本に目を通すリック社長、目が生き生きとして来た。


「こういう新しい視点もどうかしら?」

「いや俺はもうヨーホー映画の人間じゃないしどうこう言う筋合いじゃないけど」

「どうかしら?」

「…イートオモイマース」


 そして「彗星戦士レジオ」。

「やっぱりリッちゃんの助太刀は要るなあ」

「でもリッちゃんとこは1作に絞るんなら、スプラ班じゃない方を製作協力に呼べば事足りるんじゃないかな?」


「お待ちなさい。

 去年は相当リックさんに無理をお願いしてマキナゴドランを撮ったんですよ?」

「無理…」「無理?」


 ショーキさんとポリちゃんが疑問を挟んだ。

「普通だったら過労死します」

「「そっかー」」二人は納得した。

「人をバケモノみたいに言ってくれるなあ」

「「バケモンだよ!」ですよ!」

「ヒデー」


「今年はちゃんとやりましょう。

『カタストロフィ』の方は前回のスタッフで大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ」

 あの「海広」の困難かつ斬新な特撮場面を撮り上げたショーキさんだ。

 余程の変更とかない限り問題ないだろう。


「『マキナゴドラン』の方は?」

「最後の決闘をまたミニチュアなしの荒野でやるかどうか、ですね」

「今国内では鉄道や道路に送電線が巡っていますし、郊外にも高層建築が建ち始めています。

 ちゃんと現実味を感じさせる絵作りをしていきましょう」

「ショーキさん、どうします?これ、ピーカンで撮ります?曇天にします?」


 脚本の内容からポリさんが察したのだろうか。

 この内容だと、前作「ゴドラン対マキナゴドラン」の様な晴天の下の激闘よりも、ショーキさんの好む曇天の戦いの方がふさわしい。


「セット内で曇天、だなあ」

 ショーキさんは呟き、言葉を繋いだ。


「そうなると、今考えてる『レジオ』班を『マキナゴドラン』に引っ張るか、或いはリッちゃんのとこから来てもらうか…」


 そこにポリちゃんが異議を申し立てた。

「いや、テレビ班はテレビのやり方を積み上げた方がいいと思います。

 期間も予算も色々違ってきますからね」


「じゃあ、ウチから『マキナゴドラン』に人を出す。

 ショーウェイの話は、ウチで何とかする。

 こんな感じですかね?」


「どうやら落ち着くべきところに落ち着いたみたいですね?リックさん」

 セシリア社長が、安堵したリック社長にニッコリとほほ笑んだ。


 こうしてトリック特技プロはゴドラン誕生10周年記念映画「マキナゴドランの復讐」の製作協力として、「テレ海」に続いて会社として参加する事になった。

 もし楽しんで頂けたら、またご感想等などお聞かせ頂けたら大変な励みとなりますのでよろしくお願いいたします。


 なお、活動報告・近況ノートにてモデルとなった実在の作品についての解説を行っていますので、ご興味をお持ちの方はご参照下さい。

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― 新着の感想 ―
ヴェラトラヴィ、気合い入った最終回になりましたなあ…… 流星……じゃなかった彗星戦士、楽しみです。
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