279.「ゴドラン対マキナゴドラン」
リック社長が仲間達ともじゃもじゃ大騒ぎしつつ時は過ぎ。
世間では秋の間にフォエドゥス祭典が開催され、アモルメ王国は空前の好況に沸き立った。
またキリエリアで開発された予約システム、収益予測システムが初めて使用され、アモルメ王国中枢部がその計算速度、正確さ、そして懸る人手の少なさに仰天した。
そしてヨーホー映像、白亜の殿堂では「内海が広がる時」の完成する1ケ月前に、「マキナゴドラン」は完成したのであった。
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冒頭、曇天の中、アルモザスとプテロスが共鳴し叫び合い、火山が爆発する!
火山爆発は、「内海」の未使用カット流用だ。
激しい音楽と大噴火の中、真っ赤な文字で「ゴドラン」、青い文字で「マキナゴドラン」が繰り返し飛び出す!
ゴドランの咆哮と共にタイトル「ゴドラン対マキナゴドラン」が現れる!
当初、高度な機械による侵略を予感させる敵基地のセットを写し、マキナゴドランの主題を流してはとリック監督は意見したが…
ボウ帝国東南部の美しい風景と神秘的な神殿に心酔したジュンちゃん監督が
「決戦の舞台たる南国の風景をタイトルに!」
と推した。
緊張感あふれる冒頭部から一転して南の楽園を謡う、現地の音階を使った明朗な曲が南洋の景色を彩るタイトルとなった。
本作の製作意図には復興地支援、そのための?観光誘致もあるので、ある意味適切な判断だった。
しかし、後年テレビで放送される際には、なんとこのタイトル、バッサリカットされてしまい、マキナゴドラン出現の戦いの場面に差し替えられるという仰天編集が行われてしまったのであった。
その際リック嘱託は頭を抱え
「無理やりでも意見を通すべきだったかなー?!
いやコッチがヒデェのかなー?」
と嘆いたそうだ。
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タイトル後の部分も、後半のジーリン出現を予感させる場面が挿入される事となった。
麒麟を祭るボウ帝国南東部の寺院でのロケ場面が始まる。
昨年末に大津波があったとは思えない、長閑な美しく青い海だ。
ボウ帝国出身の女優が煌びやかな衣装で踊り、歌う。
古代帝国の巫女の末裔と言う役だが、祈祷の舞の最中に怪獣出現の白昼夢を見る。
彼女の白昼夢は、ゴドラン出現と大破壊を思わせるものだ。
彼女の祖父役に、特撮皆勤を狙うスクさんが老体を厭わずロケに参加してくれた。
老名優が神殿のジーリン像を指さし、宣言する!
「ゴドランを倒せるものは、神獣ジーリンだけじゃ!」
各地からゴドラン出現の報が続く。
大陸を東へ横断しつつアルモザス、プテロスを一蹴しつつ進撃するゴドラン。
しかし鳴き声や動きが今までのゴドランとは違う。
アルモザス、プテロスのシーンに続いて、地下基地内で修理を終えたマキナゴドランと、テスト用に作られたマキナカイエンの戦闘訓練シーンが撮影される。
巨大怪獣同士のスピーディな対決となると、ジャンプ攻撃、尻尾攻撃やアップの多用。
動きそのものが早過ぎるとコミカルになってしまう。
プテロスも羽ばたきながら素早く旋回する様が操演でなくヌイグルミで撮影された。
マキナカイエンとの戦いもカット割りを多用し、指ロケットで距離を稼ぎ、目光線の応酬で腕を吹き飛ばし、胸光線で爆破するという短時間の戦いにとどめた。
前作、前々作では敵役の頭を張ったマキナカイエン。
頭こそFRP製だが、他は発泡樹脂の板を素材にしていたため結構痛んでいたが、最低限撮影に使えるレベルにまで修復し、最後は爆発して役目を終えた。
「時間作って直してやるからな。
何しろ三作敵役を務めた大スターさんだからな」
焼け爛れたマキナカイエンのヌイグルミに、一人語り掛けるリック嘱託であった。
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ついに特撮班は、大陸中央の鉄道基地、石油基地のある場所で、進撃するゴドランともう一匹のゴドランが対峙する!という場面の撮影に入った。
この場面の特撮は、「海広」で使われた沿岸石油基地を大陸中央部の燃料基地に改造して、水を抜き鉄道をセッティングして撮影した。
リック嘱託改め助監による、時間短縮の抜け道である。
改造予定は当初から「海広」チームに打診され、了解を受けて短時間で撮影された。
爆発場面の大部分は、「海広」の未使用テイクが使われた。
この場面では二匹のゴドランが光線を吐き合ったり、偽ゴドランが金属製の本体を表すカット、そしてマキナゴドランが初めて放つ虹色光線が合成される。
この面倒な虹色光線が最終決戦ではドバドバと多用される。
非常に面倒臭い。
虹色(3色)光線は一色毎に合成素材を描く処理が必要なのだ。
この手法はトリック特技プロの「スプラステラ」の必殺光線でも行われたが、同じ技法でパイロットフィルムに光線を合成したところ、
「光線の虹色はもっと鮮明な方がいいぞ」
とのショーキ監督の一言で、
「やってやろうじゃないか!」
と合成大好きポリちゃん監督が奮起したのだ。
ヨーホーバーサタイルもテレビと映画で既に3作品で駆使されているので、その時間の合間を見て使わねばならず、素材となる特撮場面は早めに撮影しておきたかった。
更に現地から送られた本編のラッシュの色合いに合わせて、「海広」撮影中の0番スタジオでも、テレビ2作を撮影中のトリック特技プロスタジオでもなく、博物館のスタジオを使う事とした。
博物館は別組織なので、協力頂いた報酬の代りに撮影中見学可とした。
「天井高くしといてよかったよー」
リック助監のつぶやきを他所に撮影されたのは最終決闘シーン。
大きな建物などのミニチュアはないが、もはや爆発の連続。
撮影の合間に覗きに来たショーキさんが
「もっと派手にバンバンでいいんじゃない?間が持たなくない?」
「よっしゃ」
「え?」
兎に角勢いよく撮影する。
見学者には申し訳ないが、撮影中ひたすら爆音が響く事となった。
そして、合成へ。更に編集へ。
ショーキさんの意見、ジュンちゃんの意見を元に描かれた絵コンテは、非常に雑なものだった。
ゴドランなんてタマゴにメダマが付いた程度の、最早ラクガキといっていいものだった。多分徹夜で書き上げたと思われ、注意書きの字もよく読めない。
それも、目光線発射、胸光線発射、指ロケット発射、膝ロケット発射、これらカットを0コンマ数秒で切り替え、それを3回繰り返すという指示書き入り。
その間にゴドラン、ジーリン両怪獣は激しい爆発や光線の一斉射撃に晒され、それでも爆発の中を進んでいく!
そして再びコンマ数秒攻撃の3回繰り返し!
「こりゃあ激しいや!」ポリちゃんは何とか仕上げた色鮮やかな目光線の合成をバシバシ切り繋いで編集していく。
編集されたラッシュを見て
「おう!こりゃ音楽が待ち遠しいねえ!」
「ヴィンさん、ビックバンドでノリノリの曲にするって言ってたよ」
「やっぱりマキナゴドランにこの決闘演出なら、そうなるよねえ」
「ウヒョー!こいつぁ楽しみだー!!」
リック監督も楽しそうであった。
「社長ー!次の作品の監修ー!」
「おっと!じゃ、戻りまーす!」
「ホント忙しそうだなあ」
特技部は呆れつつもひたすら尽力してくれるリック嘱託に頭を下げた。
最終決戦のラッシュはボウ帝国ロケ中のジュンちゃんにも届けられ、満足な旨回答が来た。
「ただやっぱり周りのミニチュアがないのは寂しいねえ」
「そんな事言ってたら本編が帰って来てからの編集や合成が間に合いませんて」
せめてもという事で、合成の入らないカットに、漁村の家屋や建設中の鉄道、大旅館のミニチュア、更に送電線や道路を急いで足して、ロングショットを撮り足した。
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こうした特撮の撮影がほぼ終わるころ、ジュンちゃん監督以下本編班が帰国。
今度は本編セットで秘密騎士団と宇宙人の格闘、敵基地からの捕虜救出、最後に爆破される敵基地の撮影。
流石ジュンちゃん監督、撮影が早い。
なお、スクさんは完成した旅館にご家族を招き、しばし観光と温泉療養を楽しんで帰国する予定との事。
「リッちゃんがセット作ってくれてたお陰だよ!そうじゃなきゃ年内公開は無理だったよ」
そうリック助監に感謝するジュンちゃん監督。
しかし、ジーリン覚醒の場面。
当初現地の古謡をと企画したが、ヴィンさんが
「この映画はスピードが売りだ。
もっと現代風にアレンジするべきだ」
と、随分現代調の歌謡曲にした。
しかも現代の西側語だ。
「えー?」
現地の古語を調べて歌詞を書いていたリック助監は頭を抱えた。
しかしジュンちゃん監督も、そして音盤商会も同意したので
「まいっか」
とそうなった。
他の現地描写の音楽も、現地独特の音階を現代調にアレンジしたハイテンポな曲だ。
それはいいのだがこのジーリン覚醒のシーン。
テンポの速さを重んじる余り上映時間が短くなってしまい、更に音盤会社から
「もっと長く歌わせてよ」
と横やりが入って、何と2コーラス歌うのを丸々流す羽目になり、これまた後世のゴドランファンの語り草となってしまったのであった。
音盤化に当たり、あまりにカッコイイマキナゴドランのために主題歌を作る事になり、これもこの女優さんに歌わせる様依頼が来たのだが…
「男性的な機械怪獣の歌は男が歌うべきだ!べきなんだー!!」
とリック助監が譲らず、「ペルソネクエス」や「トレスヒーロー」、「ルキスマキナA」の主題歌を歌う人気歌手が謳い上げる事となった。
その歌手独特の絶叫が、「マキナゴドーランが、やって来たャアーオ!!」と1音階高く謳い上げていた。
こうしてタイトル曲とマキナゴドランの主題を収めたシングル音盤と、例によってほぼ全音源を収めた長尺音盤が発売される事になった。
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そうこうしている間に公開が、年末が迫る。
「おう!終わったぞ!」ショーキ監督が帰って来た。
「遅!…いや、早い、のかな?」
「おいおい、こっちは早く上げて来たんだぜ?!」
「えー、じゃ、試写を見て撮り直しがあればお願いします。
俺は…自分の会社に戻りますんで」
「まあ待てよ!」
「最後までやりましょうよ!」
「えー?」
こうして今までに無い超ハイテンポな怪獣映画が誕生したのであった。
もし楽しんで頂けたら、またご感想等などお聞かせ頂けたら大変な励みとなりますのでよろしくお願いいたします。
なお、活動報告・近況ノートにてモデルとなった実在の作品についての解説を行っていますので、ご興味をお持ちの方はご参照下さい。




