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278.ヘンシン戦国時代

 超大作「内海が広がる時」は現場の思わぬ尽力で何とかヨーホー映画創立20周年記念に名を連ねる事が出来た。


 ここで話は半年前に遡る。


******


 ヨーホーテレビの役員となった役員、成長産業に群がる出世の虫、上澄み共がリック社長を軽んじたのも過去の話。

 無論中身のない上澄み共は秒でドブに捨てられた(懲戒免職)のだが。


 この時、ヨーホー映画系列の人事の無能さに呆れたリック社長は、ヨーホーテレビから撤退、変身英雄も打ち切りにする筈だった。


 ところが、後を継ぐ筈だったヨーホーテレビ製の英雄特撮は「海広」「マキナゴドラン」にかかりきりで、マッツォ社長はリック社長に泣きつく事になった。

 しかも2回も。


 結局、またまた「ルキスマキナA」に続きトリック特技プロが担当する事になった。

「もうリックさんが役員待遇でいいですからこのままお願いします!」

「やだべんじょ。

 元々ウチは二作体制なんてムリムリだったんですよ。

 変身英雄作品くらいヨーホー内で出来るでしょ?」


 マッツォ社長は頭を抱えた。

「ま、1年は頑張るからその間にテレビ向けの体制考えてよ」

「はい。そうします」


******


 そうはいったものの、いい加減テレビには子供向け番組がひしめいていた。


 2年続いた人気番組「ペルソネクエス」の終盤は2人のエクエスの活躍で大いに盛り上がった。

 後を継いだ新番組「ペルソネクエス・テルティア(3)」ではエクエス1号、2号が敵を道連れに自爆、新たに誕生した改造人間テルティアが主役俳優の甘いマスクと気障な挙動に更なる人気を獲得し、敵か味方か謎のエクエスレベリス(反逆者)の助演も得て安定の人気を誇っていた。


 お陰でトリック玩具も大人気変身ベルトが大好評。

 変身マキノイド1号の変身衣装も本体も売れ、4人のエクエスにポーズを付けさせ、子供達は悦に入るのであった。

「まいどありー」

 とはいう物の、工場の拡張などは行わず、あくまで通常経営という堅実なリック社長であった。


 最近会う機会も減ってしまったショーウェイ、トレート部長は更に大人気番組に成長した「人造戦士メカニコス」の指揮にも没頭していた。


 後半登場したライバルキャラ、デストロスが人気に火をつけた。

 メカニコスが左右非対称、青と赤のカラーで、半分の透明な頭から内部の機械が見えるという造形美。

 これに対し、デストロスは真っ黒な軍服調で肩には先端がとがったプロテクター、そして軍用ヘルメットを思わせる頭部は透明な中に人間の頭脳が治められ、クールさとグロテスクさを併せ持つ秀逸なデザインだった。


「ウヒャー!こりゃカッチョイー!タマンネー!!」

 音楽もまた電子チェンバロを使ったゴロゴロ調で、

「やっぱユニヴァ節はカッチョイーなー!」

 リック社長がかつてお節介を焼いたフォルティ・ステラ以来活躍を続けているユニヴァ・ポン師のスピーディな曲で極めてスピーディ、アクロバティックなアクションを繰り広げていた。


 デストロスが銀の二輪自動車でメカニコスの片車付き二輪を追跡するアクションにリック社長も釘付けになってしまった。


 実は裏番組はキリエリア2の大人気コメディ番組だったのだが、これに対抗するためアニメーション番組とコンビで対抗し、健闘していたのだ。

 その実力が認められ、目出度く2年目が決まった。

 それが「メカニコス1st」だ。


 激闘の中悪の学士とゴーレム軍団を殲滅したメカニコスは

「人間も不完全な様に、完全なゴーレムは無い。

 自分は自分の力で『良心』を掴み取りたい」

 と、救助した産みの親一家と離れ旅に出る。


「こりゃもう哲学だよ!

 機械と人間の間にあるものの違いを求める哲学だ!」

 リック社長、大絶賛である。


 そして始まった新番組。何とデストロスが悪の学士の頭脳を頭に納め復活、部下を増やしデストロス4人衆として悪の軍団を立ち上げる。

 これに対抗するのが試作型メカニコス、1st!


「ゲヒャー!こりゃ!こりゃカッチェー!シビレルー!」

 ユニヴァ節に乗って格闘するデストロスたちと1stのアクションに、テレビにかじりついてシビレるリック社長であった。

「カッコいいんだけどさ、きょ、今日のリックきゅんの壊れっぷり、凄いよ~?」

「どっかケーブルが抜けてホントにシビレてるんじゃないかしら?」

 呆れる二人の妻を後目に早速玩具化に取り掛かるリック社長であった。


 それだけではなく、ショーウェイはトリアンアワーを失ったキリエリア2の要請で、自社テレビ以外にもと変身英雄番組を送り出し、「ポテンツァフルメン(稲妻の力)」という二段変身英雄を製作、製作費が安価な分それなりに健闘した。

 変身路線第三枠だ。


 他社もまたこれに追随し、「マイスレオニス」第二段、コワい御仁の「ヴィル・フィーニヒ(鳳凰の人)」が、また独立プロダクションが変身英雄をお送り出した。

 結果、一週間毎日変身英雄がテレビに登場する、異常なブームとなった。


 世はまさに変身英雄戦国時代であった。


 だが、流石に特撮スタジオを持って巨大変身英雄をと試みるものは無かった。

 そんな膨大な投資が必要な作品を先行投資で撮ってしまうトリック特技プロが異常すぎるだけであった。


******


 しかし、ここまで色々増えてしまった変身英雄、そして多種多様な敵の怪物からどう差別化するか。

 新番組「スプラミティス」が軌道に乗ったばかりのトリック特技プロ一同は考えた。


「じゃさ、考古学の古代竜と戦ったり、調査したり、保護したり。

 ど~かな?」

 文芸担当のアイディー夫人が意見した。


「怪獣映画の原点回帰かあ。

 これだけ色々派手になったりすると、それもありかな?」

 アックス氏は頷くが。


「う~ん。天才アイディーのいう事ながら、一度派手な刺激を知ってしまうと子供達は元の地味な、主が最初のころに撮っていた様な怪獣映画には戻れないのではないか?」

 デシアス監督はイマイチだ。


「そ~よ。

 そこでぇ!保護、って事よ」

「「「保護?」」」


 一同は思わぬキーワードに当惑した。


「そ。

 地殻変動で~、古代の竜が出現すんの。

 で、古代文明の守り人の末裔が変身して、暴れ者だけ倒すの~。

 でも、大人しい竜や孵化した赤ちゃんや卵を守るの。

 んで、学院の調査隊が保護のため未来兵器を駆使したりね、赤ちゃん竜を南海の孤島で保護する…

 って~の、ど?」


「いいわ、いいわよ!優しい話でいいじゃない!」

「変身英雄が古代竜をひたすらやっつけるだけじゃないのね?」

「うむ。それなら殺伐としたとか、暴力ばかりとか批判される変身英雄作品の味方を変える事が出来るかも知れん!」

「流石は天才少女ディ…いや、アイディー夫人だな!」


「よし、それでいこう!

 でもデシアスは休暇だ」

 そろそろミーヒャー夫人のお産が近づいていたのだ。


「しかし!」

「言ったでしょう。健康あって、家族あっての仕事だよ」

「そうよ!あの子強がっててもやっぱり心配なのよ!

 あんたも英雄の端くれなら自分の家族くらい守んなさい!」

「そだよー。俺が撮るからさー」

「「「それは駄目だ!!!」です!」だよ~!」


 リック社長は今。

 テレビ2作品の監修に製作費・製作進行管理に特美支援。

「マキナゴドラン」の特美。

 更に朝の子供番組をこっそり支援。

 更に更に「海広」とのスタジオやオプチカルプリンターのスケジュール調整。

 おまけにも一つトリック玩具の商品開発まで。


 色々とやりすぎている。

 二人の妻や仲間達にダメ出しされて当然であった。


「トホホ。怒られちゃった」

「当たり前です!どんな勇者も英雄も病気には勝てません!

 そうなったら私達どうすればいいんですか!」

「う~!そんなのやだよ~」

「女を泣かせるなんてサイテーよ!ねえデシアス?」

「お、俺に振るな!妻の面倒はしっかり見る!」


 トリック特技プロではヨーホー映像との掛け持ちや国際特撮への支援などで、特殊技術、テレビ映画における実質的な特技監督が数人いた。

 結局彼らにデシアス特技監督の代理を務めさせた。

 それでも英雄、怪獣、未来兵器や基地のデザインだけは譲らなかったリック社長であった。


「ミニチュアも俺が作りたいよー」

「それじゃリックの後輩は育たねえぞ?」

「でも、もーちょっといじればもっと良くなるかなー?っての結構あるんだよ!」

「じゃあそう指示すりゃいいんだよ」

 流石は騎士団の指揮を執った経験者、英雄アックスである。


「はぁ…そーするかー!

 今のシリーズを彼らで廻せて、俺は新しいものを作るとしよ!」

「そーだそーだ、その意気で後輩を鍛えろ!」

「『1799』の方も気になるしね!」

「「「それじゃダメだろ!」でしょ!」だよ~!」

「怒られちゃったー」


 人間、中々簡単に変われないものである。


******


 こうして新作「ヴェラトラヴィ(溶岩の戦士)」の企画が始まった。


「帰って来たスプラルジェント」で主人公の兄貴分を演じたシルヴァ・リートゥス氏が主人公の先輩役で、人間の知識の限界を嘆き、学術の行く末を案じる知的な役だ。

 なお、隊長役は「マキナゴドラン」で宇宙人の司令官役だった人だ。


 そして、探索隊TXA=Turma Explorationis Academicae(学術探索隊)の結成を命じるのは、かつて「エキスペクラリ」のASCの責任者だった学士役だ。


「なんつうか、渋いなあ~」

 派手さを追い求める今、かつてのヨーホー特撮の流儀がどこまで訴求するか。

 そして前代未聞、怪獣を救う物語。

 これはこれで新たなる挑戦だった。

 創立10周年記念としての。


「いやいや、今年10周年じゃないじゃん。来年でしょ?」

 だが「創立10周年」とタイトルに出すのは、リック社長がイヤがった。


「来年にまたがる作品だからいいんじゃない?」

「たかだか10年だよ?

 記念作品出してすぐ倒産したらみっともないよ。

 フツーに過ごそう」


「「「ダメー!!!」」」

「倒産させんなよ!」

「この商会そんなに脆い訳ないじゃない!」

「あなたの夢の10年積み重ねて来たんです!

 ぞんざいにすべきじゃありません!」

「あたしももっとがんばるからさ~!も~!」


「えー?いつ倒産してもおかしくないから10周年なんて記念しませんって言えばいいじゃん」

「「「何を言うだー!!!」」」


 ヨーホー映画の20周年には八面六臂の活躍で助けておきながら、自分の事となると徹底的にこだわらないリック社長。

 これには仲間一同が黙っていなかった。


「まー兎に角、無事ジッセイダー家の長男を迎えようよ。

 そんで『ヴェラトラヴィ』を送り出そう。

 10周年の話はその後だよ」


 こうしてその場は落ち着いたのだった。

 もし楽しんで頂けたら、またご感想等などお聞かせ頂けたら大変な励みとなりますのでよろしくお願いいたします。


 なお、活動報告・近況ノートにてモデルとなった実在の作品についての解説を行っていますので、ご興味をお持ちの方はご参照下さい。

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>ゴロゴロ調 この世界ではロックではないから演奏者はゴロゴロミュージシャンとか呼ばれるんですかねえ……? >メカニコス1st 何の像から出てくるんでしょうね?
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