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276.誕生!ルキスマキナA、スプラミティス

 さて「ルキスマキナアルファ」だが、完成が遅れてしまっている。


 肝心の主役であるルキスマキナA自体の出来は文句なかった。

 主人公は熱血漢で民間の飛行士、VDIの怪獣専門チームDIDの隊長だった兄が、怪獣の襲撃から子供を守って殉職。

 敵討ちに燃える主人公。

 再度怪獣が出現すると、怒りのあまり愛機で体当たりを試みた!


 しかし突如主人公は謎の空間に包まれ、宇宙警備隊員エデン星人から地球防衛のためのゴーレム、ルキスマキナAを飛行機と一体化させた。

 エデン星人はなんとなくスプラルジェントに似たデザインだが、設定では高い技術力を持っているものの、戦闘力は低い。


 そして普通の空に戻った主人公は、両手をクロスさせ飛行機を宙返りさせると…

 まばゆい光の洪水の中、飛行機がルキスマキナAに変身した!


 変身の光学合成は作品毎に派手に、美しくなっていく。


 大地に立つ新英雄ルキスマキナA。ゴレムなのにスプラルジェント同様銀のゴムスーツ製で、赤いメッキ部がアクセントとして各所で輝いている。

 胴体は胸部に身体状況を表す電飾が多彩な色で輝く。


 その一方で怪獣と、侵略者インフェル星人なのだが。

 どうにもモコモコしすぎなのだ。宇宙人が凶悪に見えない。

 それに発泡樹脂でモコモコの体を作って銀色に塗った感じがバレバレなのだ。


「もうちょっとなんとかならないかなあ」

「それが…

 特美班が言うには、週2~3体だとどうしても素材に拘れなくて、全部発泡樹脂で仕上げるしかなくなってるみたいなんですよ」

 新人のデザイナーが申し訳なさそうに答える


「ちょっと横から手を出すみたいで申し訳ないけど、俺が作っていい?」

「…申し訳ありません!」


 彼は外部のデザイン工房から来てくれた、独特のセンスがある才能で、スプラシリーズとは別の魅力を発揮してくれていた。

 怪獣はまずまずの出来だった。

 インパクトとなるポイントだけFRPに置き換えて金属感を与えれば見違える筈だ。


 インフェル星人の戦闘隊長、アンティゴネーは劣化して廃棄される予定のゴムスーツを黒く塗り、胸のプロテクターは傷だらけになったエキスペクラリのものに半透明の黒を塗り、更に元デザインにあった逆V字になる様に肩を長く伸ばした。


 顔もモチーフの古代神殿の魔獣像を生かした精悍な顔を新造し、肩のV字に収まる様に角を付け、型取りしてFRPで完成。


 全身には肩から足のブーツにかけて金属製の大き目の鋲を打つ。これもデザイン通り。


 こうして翌日には撮影に遅れを生じさせつつ、随分ハンサムになった敵隊長がセット入りする事になった。


 第一話はその影響で完成がギリギリとなって、なんとか間に合わせた。


 今回の反省で、特殊美術要員が少ない事を何とかせねば、となった。

 硬質でシャープなカッコよさを求めるなら体に芯を入れるなりFRP使う必要があるが、週2体怪獣を作る以上自社の特美班だけでは手が回らない。


 だがリック社長は譲らなかった。

「ウチは怪獣や造形物の魅力で飯を食っているんだ!

 怪獣はじめ造形物の魅力を落としちゃダメだ!

 特美屋を増やすしかない!」


「しかしですね。

 ヨーホーじゃ今でも撮影続いててキューちゃんもかかりっきりじゃないですか。

 こんな他に潰しが効かない割に特殊な技のいる仕事、そうカンタンに人が集まりますかねえ」

「元ジャイエンのスタッフとか倒産した会社にだって優れた小道具師はいたでしょう」


 リック社長は倒産した会社の大道具、小道具の技師をスカウトし、新しい造形商会を1ケ月で立ち上げた。


 長きにわたって大御所たちは

「これじゃカッコ悪い、これでどうだ?」

「こうも人間の体っぽいとなあ」

「下半身が貧相だ」

「もうちょっと機械的に仕上げるなら、このFRPってのがいいなあ」

と意見して来る。


 次々飛び出す意見を前に、大道具界の大御所たちを前にしながらも、若いデザイナーは怯まなかった。

 怯んでいる余裕などなかった。


「ルキスマキナA」は1クール毎に節目を設けた。

 激しい戦いを見せ場にしているので、敵の戦闘隊長も1クールごとに敗れ、新たな隊長が来る。

 そこには節目が必要となった。


 1クール終盤ではエデン星人が戦いに参加するもアンティゴネーと相打ちとなり戦死。

 迎えに来た宇宙警備隊長センティアの手で地球を去る。


 そして2クール終盤。

 ルキスマキナ抹殺用ゴーレム、ルキスキラーと敵司令の攻撃でついにルキスマキナAは破れてしまう!


 新たにエデン星人は主人公にルキスマキナ2号、ルキスマキナΣを与える。

 主人公はその強力な格闘力で両者を撃滅した。

 物語後半は、ルキスマキナAとΣの2英雄が交代で活躍する、今までにない展開が始まる。


 3クール目では冒頭でイキナリルキスマキナAのニセモノが登場、ニセA対Σの戦いという変化球が披露される。


******


 そして、トリック特技プロは新作「スプラミティス」に取り掛かった。


 この頃になるとリック社長は「ゴドラン対マキナゴドラン」にも取り組んでいた。

 マキナゴドランを爆速で作り上げ、更に新作怪獣ジーリンも完成させ、ヨーホー映像の0番スタジオへと送り込んだ。


「あ!また新怪獣だ!」

「カッコイー!」

「映画かな?テレビかな?」

 リック邸と撮影所を結ぶ庭園鉄道を子供達が追いかける。

 これもリック社長のひそかな楽しみになってしまった。


 更に宇宙人の衣装もデザインし、本作の準備期間を大幅に短縮した。

 何しろボウ帝国東南ロケがあるのだ。その撮影は時間を喰う。


 大がかりなミニチュアが少ない分、特撮は光線の飛び交う攻撃がある。


 本作の言い出しっぺであるリック嘱託は責任がある。

 本編でも手間がかかる宇宙人の基地のセットは既にデザインを提出して検討して貰っている。

 その作成も、自社番組2作の収支管理、進行管理の合間に自分でやるつもりマンマンである。


「「いーかげんにしなさい!」てよ~!」

 二人の奥さんから同時に怒られた。

「まーまー。『海広』が終わるまでだって」


 ショーキさんたち特技部の主力チームは「海広」の追い込みで、ひたすら沈みゆく山脈をキューちゃんの装置設計で撮影し続けている。

 曇天の下、あるいは夜間に、近郊で巨大な装置に乗せられた数十mの山脈のミニチュアが海を目指して突き進み、沈んでいく。


******


 そして「スプラミティス」である。

 既にヨーホーテレビの目玉企画として製作が決定し、撮影に入っていた。


 一部はトレスヒーロー、スプラステラのセットを流用して撮影するため、本編に先んじて特撮がクランクインしていた。


 本編も撮影に入った。

 主人公は前作の男女合体と一変して、神々から寵愛される英雄的な爽やか青年。

 トルドーで協力したアッカリダ監督の紹介で、ジャイエン末期を支えた人気青春スターを起用。


 防衛チームDCNは今までの戦闘服から一転、神官を思わせる様な裾の長い上着に、祭儀で型にまとう長い帯の様なベルトを付け、上着が白、インナーとズボンが青で帯が赤という派手な服だ。


 隊長はじめ隊員たちは人情芝居や青春劇の芸達者が揃っている。

「これ何の番組?って布陣だよね」


 なお女性隊員は膝丈のスカートに着帽だ。

「ますますわかんないね」


 先行して撮影されたライブラリーシーンが完成した。


 大型戦闘機Dバラエナ(鯨)、小型戦闘機Dアクィナ(鷲)にDデグルティエ(燕)が、地下格納庫から中央エレベータで基地上部の発射口に持ち上げられ、発進するラッシュが上がって来た。


「うひー!アチョー!カッチョエー!ホヨッホヨッホヨッ!」

「…リック、狂った?」

「この人は飛行機とか見るとこうなります」

「あの飛行機をカッコイイと思えるのは流石主だ」

「そりゃそうだよ!

 子供達に手に取ってもらう未来兵器だよ?

 画面に映るタテヨコ比もバッチリいい具合じゃない?

 兵器って言うか神具だけどね」

「確かに色々カメラに収めやすいのだが…」


 熱心に語るリック社長に、撮影しているデシアス監督も少々引く。

 だがそこにアックスが火に油を注ぐ。


「いやでもこれカッコいいと思うんだが」

「ハァ…いっそコレを主題歌のバックにしてもいいのでは、そんな意気込みで撮ったのだが」

「決定!それでいくぞー!」


 なお、主題歌は両作ともアスペル師が本編劇伴とともに作曲したが、「ペルソネクエス」に対抗するためアップテンポな曲に仕上がった。


 その主題歌は「ペルソネクエス」後半の主題歌を歌い、今では子供向け歌唱の人気歌手となった人だ。

 曲の終わりで1音階高くキーを上げて叫ぶとか、ノリも音感も声量も凄い。

 この二作でも「ミティース!!」とか「ワァーオ!」とか叫んでいる。


******


 従来の特美商会は「ルキスマキナ」の作業が外部発注になったため負担が減り、更にリック社長の判断で特美費が増やされ、怪獣の素材が多彩になったり発光ギミックや回転ギミックが増えた。


 新素材で軽くなった分、内部に骨組みを組んで体のバランスを人体からやや崩した怪獣も実現出来た。


 なにしろ素材は神話、怪獣も魔獣。

 ヒドラとか青銅巨像とか巨大牛魔人。

 マギカ・テラに実在する異種族にも配慮しながら凶悪な敵にしたり地域の守護神にしたり。

 毛皮素材、金属っぽい素材感を出したり。

 発泡素材にしても板状に加工したものを甲冑の様に張り合わせたりと表現が多彩になった。


 反面本編は喜劇畑の俳優が

「Dバラエナ内の実験室で酒醸せないか?」

「敵が鳥の羽持ってんなら、トリモチで地面に釘付けしてやるぞ!」

「ワイヤーで巨人像を絡め取ってる間に脛のタガネを外すんだ!」

等々、珍作戦を考えつき、DCNの隊員たちが大真面目に作戦をこなしていく。


 そして肝心の、頭に角の様な、三日月の様な物体を載せた、スプラセプトの様な英雄、スプラミティス。

 頭が角のせいで大きく、短足に見えてしまうため、ヌイグルミ俳優は足の長いスリムな人を募った。


 跳躍台を使ったアクションもよりスピーディになり、更に編集され躍動感あふれる格闘シーンとなった。


 そしてアイディー夫人発案の地母神的な存在、スプラ・ガテラ。

 一度命を落とした主人公の青年を宇宙に招き寄せ、今までのスプラルジェントの見守る中、新たな命を与え、スプラミティスを誕生させる。


******


 前作「スプラステラ」も神秘性を持っていたが、この「スプラミティス」も別の角度で幻想的であり神秘的であった。

 試写の結果も好評で、主人公氏も大いにやる気にあふれている。


 ただ、いつもなら嫌味の一つでも行ってきそうなナントカ氏はいなかった。


「折角ナントカさんが喜びそうな話にしたのにねえ、ディー」

「放送が始まったらテレビの向うで喜んでくれるよ~」


「チキショー!!なんでこれを我が局で放送出来ねえんだよー!!」

 放送第一回目、ナントカ氏は当たり散らしていた。


 もし楽しんで頂けたら、またご感想等などお聞かせ頂けたら大変な励みとなりますのでよろしくお願いいたします。


 なお、活動報告・近況ノートにてモデルとなった実在の作品についての解説を行っていますので、ご興味をお持ちの方はご参照下さい。

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― 新着の感想 ―
>主題歌 モジャモジャ頭にヒゲのおじさんが目に浮かびますわー 大忙しのリック君にエールを送らせていただきます。
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