272.一方テレビでは一大変身英雄ブーム
映画界が「1799」と「海広」で上へ下への大騒ぎをしている最中、テレビ特撮は変に賑わっていた。
大人気の「ペルソネクエス」は敵組織が謎の外国集団と合体し、敵怪人も動植物の怪人から、複数の動植物が合体した強敵へ強化。
「1号」と呼ばれた、最初の主人公が他社映画に転向し、再び「2号」が帰って来た。無論「1号」の俳優は「海広」の方で頑張っていた。
色々悶着あっての事だが、その辺は内々に処理された。
その終盤は、何と過去の敵幹部が復活大集合する「幹部復活編」、更に13人の敵エクエスが2人を抹殺に来るという「ニセエクエス編」が企画された。
しかし「多すぎて予備の衣装じゃ足りないよ」と敵は6人に減った。
元ネタは、原作のペトロ氏が2号登場編で用意した13人の刺客エクエス。
それが半分に減らされて彼は大層ガッカリしたそうだ。
しかしそんな懸念も他所に、子供達はこの終盤の戦いに釘付けになった。
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そして国際特撮は引き続き巨大ヒーローを…と思いきや、一転して歴史劇と変身英雄を合体させ、しかも変身後の姿が獅子の顔、という仰天の「変身!マイスレオニス(獅子の騎士)」を製作。
母国を滅ぼされた騎士の子が、師匠の死に際に授かった変身術でマイスレオニスとなり、他国を滅ぼそうとする軍団を倒す旅を続ける。
騎士であり暗部のものであり、更に旅もの任侠ものという、ドラマ主体の作品を送り出した。
特撮班は時折登場する巨大魔人や、毎回の天変地異や必殺技の作画…
国際特撮はオプチカルプリンターを持っていないので、前作の「エレメンタム」と同様、書割による処理で必殺技の閃光を処理した。
例の怖い御仁は、やはり怖い企画を放った。
今度は大陸中央部の古代に栄えた遺跡から、神を忘れ滅びに向かう人々を戒めるべく現代に蘇った神の化身と、それを発見したテレビ局員がコンビで外道衆と戦うという物語だ。
兎に角古代遺跡の宝物みたいな英雄は変身もせず、主人公であるテレビ局員のピンチに駆け付け敵に向かって「黙れ外道!」「外道よ死ね!」と身も蓋も無い罵詈雑言をカッコよく放つ。
しかし苦情は無かった。
というか御仁がコワすぎて誰も苦情を上げられなかったのだ。
苦情なんてそんなものである。
この流れに新たな独立プロダクションが様々な企画を立ち上げ、実現した。
宇宙から飛来した10mと巨大な平和の使者。
しかし地球では言葉が通じず、軍が砲撃を始める。そうすると穏やかな顔が胴体に沈み込み、代わりに怒りの魔人の顔が現れ、反撃を始める。
この魔人とともに地球に来た使者の少年が魔人を諫め、魔人は元に戻り空に去る。
何と特撮ではなく、巨大な魔人(ただし半分の5m)を作って、ミニチュア無しで撮影したという。魔人がミニチュアを壊すのではなく、暴れるカットの次に、諸国展示会のため破壊される旧家屋の実写記録を疑似夜景にして、破壊している様に見せるという荒業だ。
しかし英雄に変身するのでなく魔人が変身するという変化球すぎる内容のため13回で終了した。
またショーウェイも「カムスヒーロス1」に続く、「ペルソネクエス」と並ぶ他局向け変身英雄としてペトロ氏原作の「人造戦士メカニコス」を放った。
何と左右非対称、色も左右で青と赤に分かれている。しかも一部は中の機械が見えているという異色のデザインだ。
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一方、トリック特技プロだが。
まず製作費削減を求められ、リックが26回で製作中止を決定した「トレスヒーロー」。製作費未回収分の支払いを訴え、結局39回に伸びた。
宇宙傭兵軍団デモノメリがトレスヒーローに敗れ地球から逃げ出す…
そこで打ち切る筈だったが、今まで助演で時々現れていたCCVの外国隊員が準レギュラーとして助太刀に現れる展開とした。
青の英雄、ピンクの女英雄として。
ただ、敵を地球から追い払うか、弱体化させ敵の主力をおびき寄せるかで三兄妹と海外隊は揉めてしまう。
そこに予想より早く敵の首領が地球に接近して来た。
圧倒的な戦力を持つ敵の宇宙要塞と宇宙船団。
逃げ帰る地球攻撃隊は負け犬として宇宙要塞の一撃で粉砕された。
絶望的な戦いを覚悟するCCV。地球を愛し命を懸ける宇宙漂流者たち。
彼らは敵要塞の進路上、各惑星で戦いを挑み、敵の大将軍たちを討ち果たし続ける。
しかしCCVの仲間達も深手を負い、戦えなくなる。
そこに応援に来たのは地球防衛軍VDT。
大型宇宙ロケット戦艦でデモノメリの艦隊を殲滅する。
支援を受け、宇宙要塞に飛び込む3兄妹。
悪の首魁を前に合体、トレスヒーローとなる。
要塞の中でトレスヒーローが、外ではVDTが戦う。
他の宇宙人たちも戦う。中にはチラチラとスプラルジェントたちの姿も。
「1秒以内なら見逃すってさ」とリック社長。
まさかの客演を目の当たりにした子供達にとってはまさに驚くべき贈り物だっただろう。
こうしてデモノメリ要塞は爆散した。
CCVは地球に残って平和に暮らすもの、故郷の復興のために母星に帰るものに別れた。
主人公たちも母星に戻るため宇宙船に向かう。
しかし、兄妹を慕っていつも基地に潜入してきた子供が実は孤児だったと知り、妹は地球で暮らす道を選ぶ。
兄二人は母星へ旅立つ。妹と少年に、VDTに見送られ、CCVの戦士たちは故郷をよみがえらせる開拓者として旅立った。
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この終幕は子供達から絶賛され、同時に惜しまれ、続編を求める声が多かった。
だが、既にヨーホーテレビからトリック特技プロの撤退は決まっていた。
後の企画はヨーホー映像に託される筈だった…
ところがヨーホー映像は「海広」で手一杯だった。
「お願いだー!今後あなたに馬鹿な事言う奴は直ちにクビにしてやるからー!」「じゃあ1話一千万デナリで」「ぐぬぬぬ…八百万デナリで!」「毎度ありー」
それでも「スプラQ」より少し高い額面、物価で言えば半分だ。
こうしてヨーホーテレビでの新作「ルキスマキナA(光の機械アルファ)」が企画される事となった。
部分的に鍍金を施した、異星人が正義感の強い飛行士の青年に託した、飛行機が変身する機械の英雄だ。
仮面の頭部や、甲冑の関節部や拳だけが鍍金で赤いという造形で、写り込みや光の反射が激しい胸部は従来の銀塗装に電飾というデザインとなった。
「やっぱりさ、キラキラ光るのって男の子、大好きだよね~」とアイディー夫人が描いたデザインを採用したものだ。
主人公はこのゴーレムの中の操縦室で、多くの電線で繋がれた鉄の外骨格を纏って、得意の格闘技で戦う。
物語に凝るヒマもなく、単純な凶悪宇宙人の送り出す宇宙怪獣と防衛チーム、そして熱血ながら思慮の浅い主人公が文字通り手足として動かすルキスマキナAとのぶつかり合い。
台本は若手の作家に任せ、リック社長は監修に回った。
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さて、主力商品たるスプラシリーズの次回作だが。
「正直やりたくないよ」
「何を言うか!人気シリーズの責任を果たせ!」
「命令されるからヤなんだよ」
「贅沢な奴だ。トリアンアワーは全国の製作会社の憧れだぞ?」
「スプボンテ!いい加減にしろ!クビにするぞ!」
「やーい怒られたー」
いつものアットホームな職場です。
結局、最終回に向け熱血執筆中のパルファン氏に替り、再びアイディー夫人がメインライターに戻る。
今度は神話や民話、古謡を題材にしつつ、割と自由で緩く、子供でも大人でもゲストになり得る物語を志す事とした。
半分神話、半分宇宙の物語、「スプラミティス(超神話)」の企画書が提出された。
「…悪くないな。
今の暗い世相を払拭するには、神話の豊かな面白さが良い」
ナントカ氏はかつて学院で神話学を学んだ経歴の持ち主なので、色々文句言わせないためのネタに使った。
そもそも神話は寓話でもあり、逆に淫乱で理不尽な不条理劇でもある。
その意味するところは不明だ。
もしかしたら世の中の理不尽も、消える事のない憎しみ、怒り、劣情諸々を神に仮託し、神様がこうなんだから仕方がないと昇華させるための、昔の人々の知恵だったのかも知れない。
でもそんな闇の側面はとりあえず削除して、教訓になる話だけ子供に伝えようとリック社長は考えた。
何より、古代の人々の豊かな想像力に満ち溢れている。
「ちょっと映画が現実主義に進み過ぎたからね。
もっとゆるい夢を見てもいいんじゃない?って感じで。
時に優しく、時に厳しく」
スプラシリーズ次回作はこうして決まった。
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主役たるスプラミティスのデザインだが。
前作で5戦士を救った「レックスプラ(超王)」、これは子供達から募集したデザインで、スプラルジェントに大きな角を付けたものだった。
これが大好評だった。
特にマギカ・テラでは角のある種族に大人気だった。
トリック玩具でも商品化予定がなかったところ、予約が殺到したため急遽商品化する程だった。
「俺ならあのままにしなかったー!」
と憤るのは特美のキューちゃん。
そして持って来たのは、スプラステラが古代の将軍の兜なら、こちらは頭に三日月を載せ頭と一体化させた様なデザイン。
「これはいい。
これを子供が受け入れられそうなデザインに落とし込みたいけど、それでいいかな?」
「やりましょう!俺がやります!」
キューちゃんは豪語すると改定案を描いた。
角の様な、月の輪の様な頭部を持ち、体の赤いラインは祭典の選手の衣装の様に胴を包み膝に延びるラインが施された。
当初案ではスプラルジェント同様楕円の目を持っていたが、
「スプラセプトに同類がいても良いのでは?」
「相手が神話の怪物なら、確かに甲冑を思わせるスプラセプトの方がいいかもね」
という意見で、スプラセプトの意匠を取り込んだ原型が作られた。
(あー結構攻めたデザインになっちゃったねえ)
その姿は新鮮に見えた。
だが、更に。
「あの輪、絶対割れるわよねえ」
「ジャンプして着陸のコツは掴んでおきたいな」
「あの上向きの平面部に鏡面仕上げ出来ないものか」
「いっそ、今こそ赤じゃなくて青の模様を溜めるべきでは?!」
「今まで赤で来たから、今回も赤でいいんじゃないか?」
今までにない数多くの意見が飛び交い、その中でキューちゃんは取捨選択しつつ、新たな英雄の姿を創造した。
もし楽しんで頂けたら、またご感想等などお聞かせ頂けたら大変な励みとなりますのでよろしくお願いいたします。
なお、活動報告・近況ノートにてモデルとなった実在の作品についての解説を行っていますので、ご興味をお持ちの方はご参照下さい。




