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263.新たなスプラは男女合体!

 なんとか及第点で出発した「トレスヒーロー」。

 活劇重視で物語の中を軽くしたが、途中で失われた故郷の星から来た若者をかくまうが、それは敵の工作員だった、とか、失踪した仲間が敵討ちのため一人戦う物語等を交えて物語を盛り上げていった。


 しかし製作費を下げろという指示を受け、リック社長は半年、26回で製作の打ち切りを宣言した。


「誰がそんな事命令したー!!」

「知りませんよ」

 リック社長はアッサリ言った。


 事情を知るヨーホーテレビの役員が恐る恐る言った。

「あのー、専務です」

「クビー!!」


 もうヨーホー各社はクビに次ぐクビで、誰が責任者だか解らなくなりつつあった。


「でも俺はヨーホーテレビにはもう戻りません。

 信用出来ないんですよ」


「うがー!!!」


 緊急系列会社会議の結果、セシリア社長がヨーホーテレビの新社長兼任に押されたが

「元々妻は重責のため死にかけたのだ!

 こんなバカげた失態のために寿命を縮めさせろというなら、再び去ってもよいであろう?!」

 財務卿であるザナク公爵が乗り込む事態となった。


 半狂乱となったマッツォ社長がボソッといった。

「もうリックさんが社長でいいんじゃないかな?」

「いやどす」

「どうすりゃー!いいん、だーッ!!」

 リック社長の即答に、半狂乱から完全に狂乱した。


 結局ヨーホーテレビはヨーホー映画本社が統合する事になり、面接の結果半分の役員や部長クラスは不正が発覚し懲戒免職や降格。

 それを許していた人事の管理職はほぼ全員懲戒免職。


「これはこれで恨みを買いそうだけど、ある意味解りやすいよね」

 リック監督の言う通り、社に残ったものは監視対象となり、不穏な団体との接触が発覚し、一斉摘発で今度は牢屋行となった。


「なので復帰をお願いします!」

「折角1年の見込みで企画したのにこの仕打ちですよ。

 半年の準備期間の後、スプラシリーズ同等の予算を頂けないと無理です。

 むしろヨーホーとの手切れは渡りに船なんですよ」


 今まで当たり前の様にヨーホーと軸足を揃えてくれていたトリック特技プロも、この騒動には戻って来てはくれなかった。


「いっそ、特技部でやりゃあいいじゃないですか」

「え?」

「ショーキさんもいるし、若手も育ってる。

 いざとなりゃあ国際特撮に出て行ったポンさんに、ジャイエンOBのアッちゃん達もいる。

 ウチにそんな頭下げて頼み込む必要なんて、何もないんですよ」


「あ…」

 もしかして、この目の前の人は、このテレビ変身特撮番組から身を引こうとしているのではないのか。


 そう思った瞬間。

「あ、あああー!

 駄目だー!あなたがいなくなるなんて、そんなのダメだー!!」

 マッツォ社長は叫んだ。


「いえいえ、そんな大した問題じゃないでしょ?」

 そう宥めるリック社長の言葉が、彼にとっては更なる重荷になってしまった。


******


 ヨーホーの空気は重かった。

 しかしそんなヨーホーテレビを後目に、「スプラステラ」の企画は動いて行った。


 ナントカ氏が推し込んで来た若手脚本家、パルファン氏の打ち出した物語は…


 何と、男女二人が合体変身して人間を超えた超人になるというものだ。

 新たなヒーロー、スプラステラ。

 それは、男性の強さ、女性の優しさを超えた、まさに超人という存在とされた。


 そして敵は、この世界とは別の空間に住む「異空間人」、人間の悪の心を好む邪悪な存在とされた。

 奴らが繰り出す怪獣も、異空間人の手で複数の獣や機械と合体した、怪獣を超えた「創獣」とされた。


「うーん」

 とても魅力的な発想ではあった。しかしこれにリック社長が難色を示した。


「非常に面白そうだし、志は高いねー。

 でも、やり切れるのかな?」


 まさかの反応にパルファン氏は驚いた。


「あのね、パルちゃん」

「パルちゃん?、ですか?」

「あ、ごめん、ヨーホー映画の癖で」

「ならそれでいいです!」


「じゃあ意見させてもらうよ。

 先ず。


 テーマが抽象的すぎる。

 あなた一人なら兎に角、あなた以外の脚本家と、意志が共有できます?」


(これ、「トニトアビス」や「ケントゥリオ・ルーバー」でも難しかったんだよねー)


 リック社長は、マギカ・テラの若い作者たちとのやり取りをしみじみ思い出しつつ、目の前の脚本家を案じた。


 更に

「二人を主人公にするのは子供のごっこ遊びの障害にならないかなあ。

 女の子もごっこ遊びに入れるのはいいけど、変身したら遊びから追い出されるんじゃないか?」


 複数の主人公が合体して一人の英雄になる物語はショーウェイの「カムスヒーロス1」、そしてまさに製作中の「トレスヒーロー」がある。


 前者は喧嘩ッ早いが仲間想いの二人の少年が変身後の英雄の両眼の中で会話する、そこに葛藤や友情があった。


 後者は変身すると無人格の超人となりひたすら戦う。

 一応兄妹の絆という設定はあるのだが。

 それに合体前に活躍して、それなりにごっこ遊びで満足も出来る。


 しかし普通の男女となると、それでは済まない。


「それ、全部綺麗に楽しんでもらえる様にします!」

 指摘を受けたパルファン氏は燃えた。

「お、おう」


******


 パルファン氏、パルちゃんは何と翌日には50本分のプロットを描いてきたのだ。

「うわあ」


 リック社長がその熱気に宛てられつつ読んでみると。


 異空間人が人間の醜い心を利用する、物語重視の話。

 過去怪獣や過去英雄が客演するイベント的な前後編。


 そして、変身した後、スプラステラの心の中で励まし合う二人。

 それも恋愛とは違う、微妙な話。


(あ。ごっこ遊び対策か。女の子が男の子を励まし続ける訳ね)


 中には女に化けた異次元人が哀れを誘うが、変身後のヒロインの心情が前に出てスプラステラを惑わす敵を張り倒す!

 という「女を敵に回すとコワいなあー」なんて話まで用意されていた。


(女を敵に回すとコワいなあー)

 リック社長は黙って読み進めた。


 そして最後は。


 異空間人最後の創獣を倒し、結婚し引退した二人に子供達に扮した異空間人の怨念が復讐しに来て、二人は死を覚悟で最後の敵を倒す。

 新たな命が宇宙へ迎えられ、第二のスプラステラになるという話だった…


 だったのだが。


「死を美化するのはよそう。

 1年放送してたら何が起きるかは解らないよ。

 でも、子供が未来に希望を持てる話にしようよ。

 英雄も、赤ちゃんも死んじゃダメだよ」


 そう指摘され、パルちゃんは黙って最終話のプロットを持ち帰った。

(自分の力では、リックさんにはかなわない!)

 若い彼は無念を抱いた。


 しかしその一方で。

「よっしゃ、これならいけるかあ!

 やっぱ若い人の頭は凄いね!

 最後の話も、考えてくれるよ!」


 後日パルちゃんはリック社長の承認を知って、口から魂が抜けそうになったという。

 こうして、男女合体、敵は人間の心の悪という実に画期的なヒーローが誕生する事になった。


******


 ついに「スプラステラ」の撮影開始。


 地球防衛軍VDTの電探基地が各地で停止する中、ゴルゴード西部の都市に突如、珊瑚と古代竜が合体した様な怪獣が現れ、攻撃を始めた!


 防衛軍の目を盗んで暴れ、病院や極大魔法跡地の平和祈念塔を体内のロケット弾で破壊する、半分機械の様な怪獣。

 子供達や病人を逃がすため、孤児院の運転手と看護婦が命を落とした。


 しかし2人の勇敢な命は宇宙警備隊の新鋭、スプラステラによって、また今まで地球を守って来た4人のスプラルジェントたちの力を受けて新たな命を授かり、大いなる力を持った指輪を授かった。


 VDTは学術警備団ASC、エキスペクラリの研究を受け継いで、新たな騎士団、VICを結成した。


 そこに今度はレイソンに半機械の怪獣、VICの科学隊員によって「創造された怪獣=創獣」と命名されたそれが出現した!

 創獣は神殿を破壊し、学校を狙ってきた!


 VIC隊員となった男女二人は空中で一回転、指輪を合わせると、まばゆい光と共にスプラステラに変身!


 古代帝国のヘルムを思わせる頭の新英雄は、華麗に宙を舞い、七色に鮮やかに光る光線で創獣を爆砕した!


******


 流石安定のスプラシリーズ。


「トレスヒーロー」では長男が弟妹をひっぱる隊長を務め、三人の個性は薄いスタートだったが、「スプラステラ」は男女二人同格の主人公とあって、今後の展開に期待を集めた。


 だが、撮影当初はセットの広さのあまり、格闘シーンを充実させようと考えた。

 その結果、王都の真ん中に広大な空き地が出来、そこでスプラステラと創獣が戦うという珍妙な絵になった。


「あー、もっとカメラ下げないと。空き地映っちゃうとよくないねえ」

「すまない!主!」

 リック社長の指導で鮮やかな格闘と、低い視点からの撮影という課題が改めてデシアス監督にのしかかった。

 例え天井の高いヨーホー映画0番スタジオであっても、ギリギリホリゾントの上を入り込ませない必要がある。


「今まで通りで問題ないよ」

 しかしこれにデシアス監督は、「帰って来たスプラルジェント」や「エキスペクラリ」で試行した技法を発展させた。


 即ち、低い視点でカメラをレールに乗せ、手前の精巧なミニチュア越しに撮影するという方法で動きのある画面を作り出した。


 これにはミニチュア大好きリック社長も

「うほー!うほうほ!ひょほー!!」

と人間の尊厳をかなぐり捨てて感動した。


******


 そんな特撮班の苦労も、余程のマニアでなければ「凄かった」「迫力があった」で終わってしまう。


 完成試写の喝采の後、パーティーでは過去のスプラルジェント早々の勢ぞろい、そして主人公二人の行く末に話題が集中した。


 アイディー夫人が

「『帰って来た』の主人公ね、ちゃんと恋が実って結婚させたかったんだよね」

と漏らした。

 無論リック社長も知っていて、無念の末悲劇的な終わりにしたのだ。


「だからね、今度はちゃんとお話しを終わらせてね」


 アイディー夫人はパルちゃんにこの物語を託した。

 パルちゃんは深く頭を下げた。


 当初数話は創獣の怪奇性や異空間人による製造工程が描かれ、今までの怪獣との違いが浮き彫りにされる。

 

 当初局側、いやナントカ氏は、人間の心をもてあそび、異空間を駆使して主人公をVICの中で孤立させる敵と、彼を信じ続けるヒロインという図式にしたかったみたいだ。


「それだとVIC、馬鹿集団になっちゃうよね」

 リック社長のご尤もな指摘に、パルちゃんは主人公が無茶しつつ超常現象のカギや痕跡を見つけ出し、VIC隊員たちが敵の尻尾を掴む図式に変えていった。


 それでも主人公の無許可の行動や無茶を隊長や先輩が厳しく諫め、主人公の人間的な成長も描かれた。


 そして、子供達が期待する様な、創獣と地球怪獣、更に宇宙人が戦う話も用意され、また謎が多かった宇宙警備隊長センティアと一緒に戦う、そして各クールの終わりには5人のスプラルジェントが力を合わせて戦う話も予定されていた。


 こんなイベント盛りだくさんのシリーズが始まった。

 もし楽しんで頂けたら、またご感想等などお聞かせ頂けたら大変な励みとなりますのでよろしくお願いいたします。


 なお、活動報告・近況ノートにてモデルとなった実在の作品についての解説を行っていますので、ご興味をお持ちの方はご参照下さい。

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― 新着の感想 ―
色々原作から改善点が加わって完成が楽しみです。
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