262.次なる変身英雄登場!
リック社長が「ゴドラン・トルドー・機械怪獣軍 極大魔法殲滅戦」の下準備に走り回っている頃、トリック特技プロの二大看板作品は次期作品に取り掛かろうとしていた。
先ずヨーホーテレビ、光り輝く鏡の鎧をまとって戦った「エキスペクラリ」の後番組。
地球で平和に暮らす三人の兄妹が秘密の防衛組織で二輪自動車、電算機を搭載した高速自動車を駆って戦い、等身大の英雄に変身、更に三人が合体して巨大化する「トレスヒーロー」。
企画ウケはよかった。
しかし。
更なる低予算番組で視聴率を稼ぎ、自分の出世の原資にしようと企んだプロデューサーが、マッツォ社長に内密にリック監督に
「5分の穴埋め番組で毎週5回、今の予算の半分で出来ないかね?」
と言い出した。
彼は直接マッツォ社長に
「最初からそう言ってくれればそれなりの企画を出しましたけどね。
今の企画をそこまで削れって言うんなら俺はもうトーホーテレビに参加しませんよ」
と怒る。
「そのプロデューサーをクビにしろー!」
この顛末を後で知ったマッツォ社長は激怒した。
「リックさん申し訳ありませんー!!
こういう不心得者はいくらクビにしても次から次へと湧いてくるんです」
そう聞いて、リック社長はにっこり。
「これは、人事の問題だねえ」
「人事も役員は罷免して刷新します!」
(こりゃあ果ての無い戦いだねえ)
映画業界の不況を他所に、同じヨーホー系列でもヨーホーテレビは人気が鰻登りだ。
今まで愚かな発言で自らの首を刎ねてしまった愚か者たちがどれだけいただろうか。
目の前のテレビ人気しか知らない愚か者どもにはそんな事には関心がない。
成功している会社は、余程人事がキッチリしていない限り口八丁手八丁、社内営業の得意なヤツしか出世せず、いずれ会社を中から蝕む。
(人事は組織の要なんだけどなあ)
リック社長は古巣が人的に堅牢になって欲しいと、心の底から祈った。
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一方安定のトリアンアワー、安定のスプラシリーズ。
大人気が続く「帰って来たスプラルジェント」の続編は、宇宙警備隊の新たな守り手、「スプラステラ」と題された。
商品化で同じ名が使われていない事を確認して命名した後、取引のある玩具会社が自分の商品名だと文句を付けて来た。
しかし登録されていなかったのでこの主張は法廷で却下された。
かといって馴染みのある商会なので、下請けで安価な玩具を発注する事にして手打ちにした。
「『ステラ・スプラルジェント』なんてタイトルも語感がイマイチだしねえ」
リック社長は肝を冷やしたそうだ。
一難去ってまた一難。
ナントカ局長が
「ウチの若手に脚本をやらせる事にした」
と唐突にネジ込んで来た。
「じゃあスプラシリーズじゃなくて別でいいんじゃね?」
「貴様!スプラシリーズに決まっているだろうが」
「それは我が理解者であり我が社の脚本家、アイディーの役目だ!」
愛する妻の今までの苦闘を、頭ごなしに否定された。
リック社長はちょっとキレた。
「今のまんまじゃいずれスプラシリーズは飽きられる!」
「ほほう!じゃあ、ヒットさせる発想をお前達が持って来たって言うのか?
お得意の根性論以外にさあ?!あ?」
「俺は編成局長だ!抵抗するつもりか?」
「気に入らなきゃ抵抗でも撤退でも何でもやってやるさ!」
何度目かの撤退の言葉にトリアン薬品の宣伝部は慌てた。
「おい!スプボンテ君!トリアンアワーに穴をあけるつもりか?!」
「もういい!この男をクビに…」
大事なお得意様の宣伝部長が言いかけたその時、
「お願いします!」
と叫ぶ声。
若手とは言いつつ、過去何作かでアイディー夫人のプロットを脚本に仕上げたパルファン氏だ。
「全力で頑張ります!どうか私を使って下さい!」
彼の言葉でその場は治まった。
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先ず「トレスヒーロー」から撮影が始まった。
地球で暮らす長男、次男、長女の三兄妹。
しかし彼らは平和的な宇宙人による秘密防衛組織、COSMOPORITANUS COETUS VIGILANTIUM=CCVのレイソン支部隊員だった。
彼らは侵略者と戦い、ついに故郷の星を占領された放浪者なのだ。
兄妹が自宅の地底にある基地で、宇宙警備隊の指示を受ける。
そう、スプラルジェントたちの属する宇宙警備隊だ。
「エキスペクラリ」の最終回でも、取ってつけた様ではあるが、四次元人を倒し地球を救った主人公は、他の星の危機を救うため宇宙警備隊の依頼に応じ、地球を去った。
トリック特技プロ作品はどこかでつながっている、そんな秘密の設定を作品感で共有する試みが始まったのだ。
「いつかみんなが共演する映画に出来たらいいねえ」
のんびり語るリック社長だった。
その宇宙警備隊からの指示は。
悪辣な宇宙傭兵軍団デモノメリが地球に向かった、それを撃滅せよ。
三兄妹は海底に潜む宇宙船トリニティで敵母船と戦い、撃破する。
しかしその首魁は地球に侵入してしまう。
傭兵軍団の長は部下の隊長に命じ、戦車(自動車改造)軍団で王都を襲撃する。
妹の駆る電算機搭載の司令自動車が急行して敵を察知、兄二人はバイク2台で侵入を阻む。
軍団員はグレーの軍服、白いヘルム、隊長は黒い軍服に頭は怪物的な被り物に上半身に機械的な装置を付けている。
どことなく、安上がり感がにじみ出ている。
戦車(自動車改造)軍団を次々と撃破し、敵は格闘戦を挑む。
三兄妹は戦闘形態、ゴムスーツの英雄に変身する!
ルーバーヒーロー(赤い英雄)・ビリディスヒーロー(緑の英雄)・アウランティカヒロイナ(橙の女英雄)だ!
三人は軍団員をなぎ倒し、共同の必殺技で敵傭兵隊長を倒す!
だが敵の隊長は自爆、その最後の熱量を利用して巨大化、街に迫る。
その姿は、等身大の軍服を黒いゴムスーツにして機械的な装具を増やしたもので、これまた安上がり感がにじみ出るものだった。
「俺たちの第二の故郷を守るぞ!」「おう!」「ええ!」
三兄妹は合体すると巨大化!
金と銀を基調に、赤・緑・橙の差し色が入った巨人、トレスヒーローとなって敵を粉砕する!
安上がり感があったとはいえその活劇は今までの巨大ヒーローにない躍動感あふれるものだ。
無論、ショーウェイの活劇に対抗すべく「エキスペクラリ」以来取り入れた跳躍台を駆使したものだが、高速度撮影を配して太陽を逆光にする様に撮影した数カットを秒以下で編集して高速感をマシマシにしたものだ!
怪獣の重厚感に変わってのアクロバティックな格闘、随所に挿入される安価なエリアル合成。
最後の必殺技は、やはり虹色のヨーホー・バーサタイルによる華麗な光線で出来を粉砕した!
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試写の反応はイマイチだった。
「随分活劇寄りになったわねえ」とセシリア社長。
「これは、私達の様な大人ではなく、子供にこそ喜んでもらえる作品なのだろうなあ」とマッツォ社長。
「ちょっとエキスペクラリが大人し過ぎたんで、派手にしました」
どこか恥ずかし気にリック社長は答えた。
ご指摘の通り、何しろ、第一回目は殆どドラマらしいドラマが無い。
あえて言えば、故郷を戦争で破滅させてしまい、平和な地球を守ると誓った三人の決意が描かれた位だ。
とは言え、変身前の隊員服でのバイク、カーアクション、更に変身後の等身大アクション、そして巨大化しての戦闘と飽きさせない。
また、前作の孤独な戦いも三兄妹の絆も描かれ、辛すぎない様に緩和されている。
特撮面では本編の被り物を複数作りつつ、ゴムスーツでの軽快なアクションが売りとなった。
特撮セットは例によってスプラシリーズと共有し合っている。
新英雄への最初の反応は、雑誌だった。
「トレスヒーロー」特集号は売れた。
三人の変身英雄が、更に巨大英雄へ変身するというアイデアが刺さった。
毎回ほぼ流用になるが、戦車(自動車改造)軍団が自動二輪軍団を従えた写真、主人公チームも司令自動車と二台の自動二輪で立ち向かうのも子供には新鮮に映った様だ。
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新番組シーズンより先に開局した故、「エキスペクラリ」は放送改変より3ケ月先に最終回を迎えた。
恩師でありASCの司令である名優の熱演の中、異次元人との戦いに心を合わせた地球人類の攻撃が、異次元の向うの敵に向けて放った攻撃を成功させた。
今まで自分に手出しできない下等な三次元人である地球を、自分に危害を及ぼす危険な存在と認識した異次元人は、最後の異次元獣を送り出し、自分の世界に逃げ帰った。
その異次元獣をも打ち破ったエキスペクラリは、故郷である二次元世界の復興のため、そして宇宙警備隊の求めに応じて侵略に苦しむ他の星のため、愛する人、恩師の娘に再会を誓って夕日に消えた。
そして翌週、活劇色の濃い「トレスヒーロー」が始まった。
宇宙での戦い、戦車と自動車の戦い、怪人軍団と変身英雄の戦い、最後は巨大化した怪人と巨大英雄の戦い!
戦いの連続に、子供達は食事も忘れて吸い寄せられた。
初回視聴率、60%台を維持できた。
「何とかつないだ感じだね」
「満足できてませんか?」
「まあね。予算少なかったしね」
アイラ夫人にそう呟きつつも。
どうしても全力勝負ではない弱さが見ている人には伝わったのだろうか。
そうであれば、もっと予算が無い「ペルソネクエス」の強みは何なのか。
だが、そう悩むリック社長に子供達から寄せられた声は。
「赤、緑、橙って、なんかキレイじゃないわ」
「やっぱそっかー!!でもなー!!」
赤青黄だと、オプチカルプリンターで合成する時、青が抜けてしまうのだった!
こればっかりはと嘆くリック社長であった。
もし楽しんで頂けたら、またご感想等などお聞かせ頂けたら大変な励みとなりますのでよろしくお願いいたします。
なお、活動報告・近況ノートにてモデルとなった実在の作品についての解説を行っていますので、ご興味をお持ちの方はご参照下さい。




