261.「ゴドラン・トルドー・機械怪獣軍 極大魔法殲滅戦」
業界最大手のヨーホー映画と、既に倒産したジャイエンの合作。
権利関係などの条件交渉だけで1年はかかると言われた折衝を僅か数日で終わらせたリック監督は、あっという間に企画を纏め上げた。
製作費6千万デナリの低予算怪獣映画「ゴドラン・トルドー・機械怪獣軍 極大魔法殲滅戦」。
なんとか35mmパノラマスコープ、4チャンネル音響で撮影出来る様、トリック特技プロのミーヒャー専務が助っ人として苦労して見積もった。
本編監督は、元ジャイエンのアッカリダ監督。
スタッフも元ジャイエン組だ。
これにヨーホーでテレビ撮影を嫌がって休眠中の本編スタッフが助っ人に入る。
特撮は「一刻も早くゴドランを!」との劇場主の要望で、ヨーホー特殊技術部と元ジャイエンのチームが分担する。
しかし、辛うじて残っていたジャイエン怪獣はボロボロ。
中には水中で溶けて消えたという設定のため、無残に足から切り刻まれたものまであった。
「これは、映画遺産の大いなる損失だ!」
その惨状を悼んだリック監督は独力でこれを修理し、人気が高かった超音波怪獣オンザーを前座として登場させる事にした。
そして迎えたクランクイン。
リック監督がアッカリダ監督と会ってわずか1ケ月後だった。
南方の森林で大地震が観測されるが、軍が調査に向かう。
しかしそれは地震ではなく、極大魔法実験と思われる爆発で、森林が消え高濃度の放射線が確認された。
そこに海からアモルザスが上陸、棲み処を追われた蝙蝠っぽい怪獣オンザーがこれを攻撃、荒野となった場所で激突。
上空からのオンザーの超音波カッターをアモルザスは背中のトゲで反射させてよけ、低空で頭を狙って来るオンザーに向かって体を丸めて体当たり!
しかし突如別の絶叫が響く。アモルザスがその場を去ると、代わって登場したゴドラン!そしてプテロス!
飛行怪獣同士の戦いにゴドランが地上から放射火炎を浴びせ、オンザーが倒される。
怪獣決闘で起きる周辺の火災は、今度はトルドーを呼んだ!
「怪獣地獄だ!」調査隊は支援を呼んだ。
プテロスを体当たりで跳ね除け、ゴドランと対峙するトルドー。
回転するトルドーだが、かつては高価な特殊火薬を仕込んだのだが、予算が無いので安価なガスを噴射させ、電球で光らせ炎の様に見せる方式にしている。
「こういう仕掛けも、リックさんならではだなあ!」
「へっへっへ、貧乏人の知恵ですよー」
ゴドランの白熱線を甲羅で弾き、体当たりと同時に火炎噴射!
それを尻尾で薙ぎ払うゴドラン!
互いを強敵と認め合う二大怪獣王!
序盤の怪獣決闘やこの辺の技の出し合いは、両監督に加えショーキさんもアイデアを出し、「セプタニマ作品みたいな素早い展開でいこう!」とコンテを切った。
「しかしこうもカット割りが細かいと、無駄になるフィルムが…」
「序盤で観客を引き込まなきゃ!」
「やっぱりヨーホーさんは違うな…」
緒戦は空軍が火災を鎮火しに来て消火弾を投下、意欲を失ったトルドーは去り、ゴドランも不満そうに帰っていく結末となった。
この特撮セット、広大な原野でしかもテレビ用の流用だ。
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王都は二大怪獣出現と謎の極大魔法爆発の知らせで不安が募る。
一方、王立学院では学校の見学会。
蒸気機関、ガソリンエンジン、電気モーターの仕組みを模型で教わる子供達。
身なりの良い子供がゴドランを倒す兵器は作れるかと質問する。騎士団の子だった。
巨大な機械を動かすには極大魔法並みの力が必要、だがそれは人の手に負えない自滅の技だと説明する学士。
「トルドーだけでも倒せないかな?」
という騎士の子に食って掛かる平民の女の子。
「何言ってんの?!トルドーは子供の味方よ!」
「どっちも王都で暴れたら国が亡びるんだ、備えが必要だろう!
これだから平民は!」
「何ですって?!
私達が酷い事をしなければトルドーはそんな事しないわ!」
教師が宥める。
その後、平民の娘は迷子になる。
教師の命で下なく探す騎士の子。
しかし娘は地下で過去の機械怪獣の設計図を盗む犯人を目撃し、追いかけていたのだ。
逆に捕らわれてしまう二人。
二人の子供達は喧嘩しつつメッセージを随所に残し、親の騎士はその後を追う。
平民の娘も、騎士の子も、子供暗号や秘密作戦などを書いた児童雑誌を読んでいたのだ。
この辺は子供を主人公にトルドーシリーズを撮影して来たアッカリダ監督、上手い。
「子供の扱いはテンさん以上だな、アッちゃん!」
「アッちゃん?」
彼は未だヨーホー映画の仇名呼びに慣れていなかったのだ。
犯人は大陸中央に秘密基地を構える秘密軍隊だった。
人知れぬ荒野で機械怪獣を製造していたが、この巨大な機械を動かす極大魔力炉の作成に難渋していたのだ。
各国から盗み出した技術で、ついに機動するゴレモル。
地底を掘り進み、その後にマキナカイエンが続く。
大陸横断特急の駅がある内陸部の街を襲う二大機械怪獣!
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大変な低予算ながらロケを生かしバシバシ撮影を進めるアッカリダ監督。
流石に秘密軍隊の基地内部を布に描いた幕にしようとしたのを、ヨーホースタッフが推しとどめた。
途中の大陸鉄道駅襲撃だけはミニチュア都市破壊があったが、これもスプラルジェントの流用だ。
「ショボい条件で申し訳ない。でもこれでも今のヨーホーの限界でしてねえ」
「いや、凄い、凄いミニチュアですよ!」
「え?」
「ウチは街のミニチュアも中々組めなかったんですよ」
「ええ~!?」
いくら何でも映画のミニチュアがテレビ並みって事は…
(そういや最後のトルドーって、敵怪獣もロクに格闘しなかったしなあ)
そう考え、それ以上考えるのをやめたリック監督だった。
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「こんな奴等をのさばらせたら世界の破滅よ!」
「よし、コイツラをやっつけよう!君は逃げろ!」
「イヤよ!また平民ってバカにして!」
「違う!君は、俺の姫だ!
君は俺より頭がよくて勇敢だ、俺のお姫さまだ!
姫のために戦うのが騎士なんだ!」
どうやら子供達の間に、小さなロマンスが生まれた様だ。
「では姫が命令します、二人で逃げよう!」
火事を起こし、混乱の中逃げるも包囲され危機一髪!
そこにゴドランが極大魔法を感知し、鋼鉄怪獣へ怒りの殴り込み!
基地に逃げる機械怪獣だが、炎上する敵基地には今度はトルドーが来襲!
二人が残した暗号をたどって、騎士の子の親を始め救助部隊が突入、二人は無事救助される。
厳しい予算のため、当初はノンスターで予定されたが、待ったがかかった。
互助会が今ではテレビなどに活躍の場を移したジャイエンスターに声をかけ、ノーギャラでもいいと申し出た俳優が主人公の父親の救助隊長や学士役を買って出た。
この話を聞いたヨーホープロも久々のゴドラン映画とあって軍隊役で出演。
何とも珍しい元二大映画商会のスター共演となった。
久々にスタジオに迎える両社大スターたちを、元ジャイエンスタッフは拍手喝采、そして涙で迎えた。
そして秘密軍隊の基地では、ゴドラン、トルドー、ゴレモル、マキナカイエンの決闘が始まった!
大陸横断鉄道駅のある都市襲撃はショーキさん、合成は古いオプチカルプリンターを引っ張り出してポリちゃんがモンさんと分担した。
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現場に顔を出さないリック社長はと言うと。
「子供達のために!」
と、トルドーや他の怪獣を含め、スプラルジェントやエキスペクラリも交え児童向け雑誌用に写真撮影を行い、宣伝面を盛り上げていた。
またゴドラン、トルドー以下登場怪獣の人形を柔軟な樹脂で再販し、何と「変身マキノイド1」を中に入れて動かせる様にして、これまたバカ売れした。
その利益は製作費に充填された。不足がちの予算が大いに助かった。
それでも音楽は過去の作品を流用せざるを得なかった。
ただ本編の応援に来たテンさん組の若手が
「諸国展示会のレイソン未来館の音楽!
あれ怪獣映画にもピッタリですよ!」
と言い出し、タイトル曲や最終決戦の曲に使った。
彼の情熱に気おされ、ナート師も編曲に協力した。
トルドー側の音楽はモノラルばかりで、止む無く他の映画を演奏中の楽師たちにトルドーやオンザーの主題、子供との交流の主題の楽譜を渡し、チャッカリ録音した。
流石に演奏中に楽師たちは気付き、苦笑しつつ演奏しきった。
クランクアップ、合成完了、編集、アテレコ。
なんと準備から試写まで3ケ月!
撮影だけで2ケ月!
「いやー、綱渡りだったなー」
「綱渡り過ぎる!」
「え?随分余裕があったとおもいますが」
「それは君の会社がおかしい!だから潰れるんだ!」
ショーキ監督が呆れた。
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そして、いよいよ完成試写を迎えた。
冒頭、ギャング映画用にリック監督とナート師が作曲した音楽が開幕を飾る。
濃紺の背景に七色の光を輝かせるヨーホーマーク。
拍手が沸き起こる。
それに続き、雲海の上に輝く今は亡きジャイエンマーク。
旧ジャイエン組から歓声が上がった!
レイソン未来館の映像の激しい曲と共に始まるタイトル!
そして繰り広げられる怪獣決闘、子供達の冒険活劇に、少年少女の淡い恋物語。
最後、大団円を結ぶ流用曲の中、両怪獣の叫び声と共に、エンドマーク。
かつて「ベヒモド」を低予算で撮影して以来、久々の低予算作品にヨーホースタッフは苦い顔をした。
しかし対照的にジャイエンスタッフは感動し、アッちゃん監督は泣いていた。
その姿に、ヨーホー映画スタッフ一同は、彼らの作品への愛を痛感した。
同時に、
(彼らが明日の我が身になるが。それだけは御免だ…)
そう思い、襟元を糺すだった。
試写後のパーティーは、ヨーホー半分ジャイエン半分だったが、現場の雰囲気が良かったこともあって大層和やかだった。
「ハヒー!コージーサマがー!キタハーサマがー!」
「妻よ…」
一部熱狂的なファンがいたが。
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その後の試写の反応は、映画雑誌上では芳しくなかった。
「壮大な『全怪獣総攻撃』に比べると低予算が明らかだ」
「まるでテレビ映画の様だ」
「折角素晴らしい栄誉を手にしたヨーホー特撮が」
「やはり子供が主人公では幼稚な印象は拭えない」
「…まあー、そうなるだろーねー」
酷評を甘んじて受けるリック監督だった。
「で、でもさ、がんばったよ。面白かったと、思うよ?」
「騎士の男の子、最初ヤな奴だったけど、最後カッコよかったよねー」
ノンクレジットながら脚本に協力してくれたアイディー夫人と、キャピーちゃんが言う。
なお、最初は二人の少年が活躍する予定だったが、平民の子を少女にしてちょっとロマンスを入れては、と提案したのは、アイラ夫人だった。
彼女はニコニコしつつ、一同に発泡ワインを注いでいた。
なお。
「物価高の中、アイデアでしのぐ苦闘の跡が垣間見える。
中でも子供目線の活劇としては貴族階級と平民の対立と和解、学校教育やテレビ、雑誌から得た知恵を生かす活躍、さらに少年少女の恋まで描く、非常に高品位な冒険譚となっていて見飽きる事がない」
と絶賛してくれた評論家もいた。
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そして各地の学校等で試写。
蓋を開けてみれば、招待されていない子供達まで集まり、やむを得ず立ち見を許す事態となった。
中には往年の熱気に感激し、招待客を着席させた後に劇場の入り口を解放してしまう小屋主もいた。
そして続々登場する怪獣と、決闘の連続。
二大怪獣巨頭の対峙に、
「「「トルドー!」」」
「「「ゴドラーン!」」」
子供達は思わず叫びだし、映画の音が聞えなくなる騒ぎだった。
この好況はヨーホー映画に希望を与えた。
封切りはジャイエン互助会の強い要望で先ず元ジャイエン系列劇場で先行上映を開始した。
これにリック監督も賛成したのだが
「いっそ、ヨーホーに鞍替えしない?」
とちゃっかり持ち掛け、劇場主はヨーホー参加に入り、統廃合に応じた。
そして先行上映だけでも大入り。
旧ジャイエン館だけで5億デナリ相当のヒットが見込まれた。
この事態に慌ててマッツォ社長は拡大興行を決意。
最終的に11億デナリの大ヒットという快挙を上げた。
そして廃れるしかなかったジャイエン系列の劇場を吸収するというオマケまでついてきたのだ。
2年ぶりのゴドラン登場、そしてまさかの、潰れたジャイエンのトルドー復活。
「怪獣映画は、まだまだ戦える・・・かな?」
リック監督はとりあえず、新たなテレビシリーズに意欲を見せた。
もし楽しんで頂けたら、またご感想等などお聞かせ頂けたら大変な励みとなりますのでよろしくお願いいたします。
なお、活動報告・近況ノートにてモデルとなった実在の作品についての解説を行っていますので、ご興味をお持ちの方はご参照下さい。




