257.ヘンシーン!変身時代来る!
「帰って来たスプラルジェント」が開幕高視聴率をはじき出した一方で、先に放送を開始した「エキスペクラリ」は苦戦していた。
如何に必殺技を強化しても特撮の見せ場を増やしても、孤独な戦いが飽きられてきている。
「社長。後半に強化策が必要です。
いっそスプラルジェントの様に、先代エキスペクラリの助力があっても」
「うーん、既に死んだ父が復活するというのもなあ…
それならASCに新戦力を加えてみよっか」
科学者集団で怪事件の捜査隊だったASCに、スプラ・アシビターの様な合体分離戦闘機を持たせるというアイデアだ。
既にデザイン画まで描いていた。
「それでもダメなら助演させよう」
ASCの研究所が四次元人に攻撃され、全員死亡。
泣き崩れる主人公だが、謎の飛行機が彼を拉致する。
そこで待っていたのは、死んだはずの恩師とASCの仲間達。
四次元人の襲撃を予測し、第二研究所としてのフェニクスジーガズを建設し、襲撃と同時に避難していたのだ。
四次元から出現した透明宇宙船群と分離合体可能なフェニクスジーガスの戦い。
四次元獣をエキスペクラリが倒し、透明宇宙船をフェニクスジーガスが撃破し、戦いは新たな局面を迎えた。
もちろん完成済玩具に組み立て模型も発売。
50%以下に落ちて来た視聴率が60%台近くに復帰し、1年を完走する事になる。
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その後、「帰って来たスプラルジェント」も4大英雄集結で視聴率が70%を記録した。
4局競走の中、大人気の英雄達が三人、それも変身前の隊員服と変身後の姿で集う姿に、食堂や酒場ではどよめきや拍手まで起きた。
更に「スプラルジェント」の最終回で印象的に登場した宇宙警備隊長センティアを含め4人で凶悪宇宙人の艦隊を粉砕、スプラルジェント二世を地球へ送り返した。
本作もいよいよ残り3ケ月となっていて、次回作の撮影寸前となっていたのだ。
更に、当初こそ人気が今一つであった「ペルソネクエス」。
「変ー身っ!トオーッ!」
の掛け声とポーズと共に登場するエクエスの空中乱舞と、
「これ本当に拳入ってんじゃね?」
とリック社長が心配する、王都剣闘会による迫力あるどころじゃ済まない肉弾戦。
ちなみに本当に入っていたそうだ。
文字通り体を張ったアクション、変身のプロセスをスっ飛ばし理屈抜きになった活劇、更に増えた女性レギュラー陣。
ここに来て、国内の有力領都で王立やヨーホーの様な全国網とは違う、各地で独立した放送局の開設話が立ち上がった。
元々それをショーウェイが応援し、地方鉄道や大商会と協力して資金を用意していたため、続々開局した。
「ペルソネクエス」を含めショーウェイテレビの人気番組がほぼ王国全土で放送される様になったのだ(一部地域を除く)。
その地方局での放送開始に合わせるかの様に、最初の主役俳優が復帰した。
2号エクエスはこれを機に交代、お役御免を申し出たが、番組の窮地を支え人気を爆発させた恩人の退場など、情け深いトレート部長が許す筈はなかった。
暫くは1号エクエスと2号エクエスの共演が続く事になり、子供達は大興奮。
その熱狂が王国全土、そして輸出された各国のテレビに広がり、リック社長が恐れた通り子供達はペルソネクエスごっこに夢中となったのだ。
これに地味ながらも人形特撮「SPX9」が追いかける。
いまや就学率が8割に達し、日中の殆どを学校で過ごす子供達。
その学校を終えた休前日から休日の夜は、まさに子供達の夢の時間となった。
但し、余程親がチャンネルを独占しない限りは、だが。
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このヨーホー、キリエリア2、ショーウェイの三つ巴の空想変身英雄合戦。
しかしこの合戦、他社も黙っていなかった。
先ず、あのコワい御仁が言い出した。
「世界を内乱や差別で争わせてはいけない、世界を平和にする虹を掛けるのだ!」と。
彼とその会社は、キリエリア2へ「スペクトラルクス(七色の門)」という英雄番組の企画を持ち掛けた。
過去の戦いで王国兵に家族を惨殺された被害者が復讐を誓い、キリエリア社会を政治経済から破壊しようと企む…しかしその被害者、と言うのは全くのウソ。
裕福になった王国人を差別し、社会の分断を狙おうとする他国の悪徳商人だ。
それも怪人を放って破壊工作、ではない。
他国でキリエリア人の優秀な国際競技選手に法外な懸賞金を与えると称し、殺人競技で見世物にして殺す。
人間に快楽を与え依存させ、最後は発狂させる薬をバラまき、王国貴族を堕落させる。
世界の不安を煽り、病人や死者の家族の救済を唱える宗教を反映させ、洗脳した信徒に巧妙な偽金貨をばらまき、通貨危機による物価高で王都民を餓死させる。
…なんというか、のっけから色々問題マシマシな企画であった。
更に主人公はチンピラで、かつて自分が怪我させた妹の手術費用を稼ぐために剣闘に身を投じたという欲望丸出しの俗物。
最強の英雄を求め、大陸内部の戦乱の地域に身を投じ、戦死者の屍の山に争いの虚しさを痛感する。
そして最強の英雄、実は太古の聖人の薫陶を受け、虹色変化の術を会得して超人となる。
超人の力を得た主人公は偽善的・差別的な悪徳商人と対峙し、彼のキリエリア壊滅の陰謀と戦う!
コワい人が作詞した悪の組織の挿入歌が
「殺せ!皆殺しにして焼き尽くせ!王国の豚をぶっ殺せ!」
とこれまた正気の沙汰とは思えぬ歌。
「スゲェのでてきたなあ」
リック社長が言う通り、余りにもスゲェすぎた問題作だった。
だが、この果てしなく泥臭い物語でも七色の化身が毎回交代交代で登場する発想は子供達に受けた。
トリック特技プロは特撮場面の撮影を依頼されたが、
「色々ダメ出しされそうでコワイよ!」
と速攻で断り、結局ショーウェイが変身場面で繰り返し使うバンクシーンを撮影した。
「もの凄くコワかったですよ!」
後年トレート部長がリック社長に泣きついたそうである。
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ショーウェイでは「ペルソネクエス」の成功で、変身英雄第二段、今度は空飛ぶ自動車に乗って来る英雄を企画し始めた。
この物語の肝は、大人が英雄に変身するのではなく、子供、しかも二人がケンカや不仲を乗り越えて心を一つにして変身するという異色のものだった。
二人の少年が変身、自動車で駆け付けるという新機軸もさておき、敵の怪人が人間の体の一部を妙に写実的に拡大した気味の悪いものであったのも印象的な作品となった。
人形特撮に協力してくれていた国際特撮映画商会も、自主作品で「異星怪人エイブ」の企画を始めた。
宇宙から追放された独裁者が、美しい地球を支配すべく黒い情熱を燃やす。
これに平和の使者、エレメンタム(元素)が戦うというものだが、何故か番組名は敵の首領の名だった。
流石にこれは後に「怪星怪人エイブ対エレメンタム」に変更され、更に番組後半でやっと「エレメンタム」と改題された。
どうやら、企画者が変身英雄よりも宇宙から追放された独裁者の方に感情移入したため、この様な変わり種が生まれてしまったらしい。
そして安価な特撮カット。
初期数話はまともに怪獣とエレメンタムが戦うシーンも無く、オプチカルプリンターも無い。
光線シーンは、何とかつて写実的な書割を描いた技師が、写真とガラスの上に描いた光線を重ね撮りして表現した!
セットの奥行きが乏しいため、爆発する度ホリゾントに影が映ってしまう。
実在の街のランドマークを襲うと、本当は数百m先にある建物も一緒に爆発する。
しかし派手さ、破壊のカタルシスに重きを置いて割り切った映像が繰り広げられた。
そのため、視聴率は最初こそ20%台だったが、徐々に50%に迫り、人気番組の一角に上り詰めた。
ほぼ毎日、子供達は新たな変身英雄に出会えるという時代がやってきたのだ。
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だが、いずれもトリック特技プロ作品より遥かに低予算だ。
「これ、そのままにしていいのか?」
「いつか事故が起きるぞ」
「作品の質も下がるでしょうねえ」
デシアス氏たちが心配を訴えて来た。
「うーん。
最低限の安全基準を守る様訴える事は出来ても、他のやることには口出しはすべきじゃないかも。
ウチが優位を確保するための妨害だって取られるからね」
王都剣闘会のマジ殴りを見て一同は納得した。
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ほぼ毎日、子供達は新たな変身英雄に出会えるという時代がやってきたのだ。
この、数年前であれば供給過多とも言える事象を、とある新聞社が
「毎日テレビでヘンシーン!変身時代来る!」
と揶揄した。
これが世間の人々の腑に落ちたのか、リック社長渾身のテレビ特撮は
「変身ブーム」「変身英雄」
というくくりで語られる事になった。
「はあ~。俺がやりたいのはヘンシンじゃないよ、特撮だよ!」
と、飲むたびに愚痴る様になったリック社長であった。
「うへへ。リックきゅんが始めたヘンシンだよ~」
アイディー夫人が揶揄い、アイラ夫人は苦笑するばかりであった。
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なお、活動報告・近況ノートにてモデルとなった実在の作品についての解説を行っていますので、ご興味をお持ちの方はご参照下さい。




