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255.「帰って来たスプラルジェント」

 既に「新スプラ」の撮影は初期13ケ月分以上に進んでいた。


 何かとケチをつけるナントカ氏もケチをつけさせない様言質をとって撮影している。

 そしてケチつけてくる都度、言質を突き返している。

 余程納得いく意見以外は全部突っ返す。


 だが、このナントカ氏、もといスプボンテ編成局長、決して無能ではない。


 やはり人と人、考え方、ウマの合う合わないも含め、ガッチガチでゴリゴリの対立の物語となると、この男の指摘は腑に落ちる部分もあるのだ。


「これは人間ドラマだ!人物の発言が単調すぎる」

「いや俯瞰して社会ドラマとすべきだ!言いたい事も言えない不自由さが蔓延している筈だ」

「それでは視聴者の目線がぼやける!」

「それはあるかも…では言い訳じみた感じに」

「うむ」

と言い合うかと思えば


「この隊員の言葉は王家の代弁者に過ぎないはずだ!こんな情熱的に反論するのはおかしい」

「違う!彼は軍人というものの理不尽さを知っている、だから反発するんだ!」

「ぬううん。なら、彼の反抗心をどこか印象的な場面で表せないか?」

「偉大な先祖の肖像画を怒りの目で見つめるとか」

「それで行こう」


 喧々諤々。

「やっぱり仲いいわねえ」

「不思議だよ~」

 呆れる両夫人。


 初期3ケ月の中間に当たる、主人公の熱意がVIM全員の総意となる物語の前後編の試写、またしても4大怪獣の大盤振る舞いの試写が行われる。


 都市一つを丸々破壊する極大魔法兵器の使用を命じる軍、これに職を辞して抗う主人公。

 負傷した恋人を見舞う主人公、社長一家。

 社長一家は動く事の出来ない妹のため極大魔法の被害地域に残るという。


 たまらず主人公は隊長に訴える。

「VIMの使命は!

 人々の自由を守り、それを脅かす者と命を懸けて戦う、隊長!

 そのためにVIMはあるんじゃなかったんですか!」


 隊長は静かに答えた。

「私と一緒に来てくれ。共にVIMの誇りを守り、任務を遂行しよう!」


 隊長は軍の司令に極大魔法の使用を1日待つよう進言。

 VIM解散を賭けて怪獣撃退を誓った。


 4大怪獣の内残る強力な2大怪獣にVIMは地上から超接近戦を試みる。

 隊長が危機に陥り、スプラルジェント二世が登場、VIMと共同で目を潰し、足を撃ち、そこを狙う最凶怪獣もろとも止めを刺した!


 なんとも引き込まれる戦いだった。


「何とか形になって来たじゃないか」

「元から全然変わってねえよ」

「何だと?」

「やるか!」

「「「まあまあ」」」


 普通、映画にしろテレビにしろ監督は上とは和やか、現場じゃギスギスなのだが。

 リック社長の場合真逆だ。


******


 ついに迎えた第一回放送の休日夜。


 懐かしささえ感じるトリアン薬品のファンファーレと合唱。

 そして光の渦から現れるタイトル!

 広告を挟み始まる主題歌。


「スプラルジェント」の主人公は成熟した騎士だったが、本作は純真で誠実な、平民の若者。

 それがスプラルジェントと一心同体となり、戦う。


「68%!ヨーホーテレビをぶっちぎって70%に迫ってます!」

「「「おおー!!!」」」


 スプラシリーズ復活は大成功だった。

 同時試聴会場に歓声が沸き起こり、拍手喝采が続いた。


「見たか!お前達だけではこうはいかなかったぞ?!」

「俺たちだけでもこうだったぞ?

 逆にお前がジャマだったんじゃないか?」

「何っだとオ?」

「やるかぁ?」


 周りが一斉に止めた中マッツォ社長が

「ウチの方も70%目指してよ」

と情け無さそうに水を差した。


「はーい!がんばりまーす!」


******


 最終的に第一話は70%超え。

 続く第二話も若干落ちたが70%に迫る勢いであった。


 だが、それ以降は60%前後にとどまった。

 裏番組のヨーホーテレビも負けじとがんばった結果で、同じ会社が関わる作品同士が競走する皮肉な状況となった。

 ある程度は予測できた事ではあったが。


「復活一回目のインパクトはデカかったねえ」

「お前達の努力が足りないからだ」

「じゃあもうやめましょか」

「スプボンテー!お前いい加減にしろー!」


 もはやカコイー放送局長でも仲裁できない。

 二人の喧嘩は名物となっていた。


 とは言え視聴率向上の強化策として、14話目で宇宙怪獣が登場。

 強力な宇宙怪獣の猛威に二世の危機を救うため最初のスプラルジェントが駆け付ける話が企画され、既に撮影されていた。

 だが直接一緒に戦うのではなく、新たな必殺光線を伝授するという役どころ。


 それでも新旧スプラルジェントの共演とあって期待は増した。


 そして迎えた放送の日…

 その時、大地が揺れた。


 マギカ・テラ国境付近で地震があったのだ。

 放送は中断し、リック達は救護へ飛んだ。


 被害はマギカ・テラでは大したことが無かった。

 地震に慣れ体も頑丈なマギカ・テラの住民は家を失った程度で済んだ。


 むしろ地震がほぼ無かったキリエリアの方が、被害は多かった。


 災害に対するリックの献策もあって倒壊家屋は少なく済んだ。

 崩れた家も軍が出動し病院も稼働し、怪我人を迅速に収容した。

 家を失った世帯は学校に避難した。


 英雄チームの活躍もあって、被害は最小限に、死者もなく収まった。


 この翌週改めて放送され、被災地にトリック特技プロは炊き出しを行い、これに英雄達も加わって子供達を励ました。

 リック社長は破損した鉄道の復旧を指示し、物流を速やかに回復させた。


******


 世間では英雄チームの活躍を「現実のVIM出動!被災地を支援!」と賞賛した。

 しかしこれを偽善と批判する声も少なくなかった。


 だが、そんな心無い批判に立ち向かったのは、なんとナントカ氏であった!

「批判するものの中で現地の救護に向かった奴はいるのか?!」

「偽善大いに結構だ!

 たとえ偽善でも何も動かない奴より遥かに現地のためになっている!」


 彼はキリエリアテレビ2の報道でも自説を延べ、王立第一放送局にも押しかけて意見を放送させた。


 そして局内有志を物資補給に向かわせる様指示し、状況が落ち着くと人気番組の出演者による慰問団まで派遣した。

 もちろん撮影多忙な「帰って来た…」の一行もVIMの制服で、英雄チームも過去の隊員服で参加した。


******


「あんたは現場向きだよねー」

「ふざけんな!俺は上を目指す!」

「がんばってー、そーなったら俺キリエリア2から撤退すっから」

「勝手な事言うな!スプラシリーズは俺が仕切る!」

「やだべんじょー!」


「仲いいなあ」

「そうかなあ?」


 こんな事件もあって、「帰って来たスプラルジェント」は「エキスペクラリ」と並んで60%台の視聴率を稼げる人気番組となった。


 そして、各地の放送局に熱い要望が殺到した。

「スプラセプトは出ないの?」「センティア隊長は?」「みんな揃わないの?」


「来たねえ…」

 番組終盤へ向けての強化会議として、先のスプラシリーズとの共演が持ち出された。

「主人公喰っちゃうなあ」

「それに安易すぎる。

 今までスプラルジェント二世は努力して成長する主人公を見つめて来た。

 これは彼の成長する物語の筈だ!」

 ナントカ氏も熱弁を振るう。


 そこに悲報が。主人公の恋人役の人気女優がスケジュールの都合で3クール目で降板する事となった。


「いっそ、恋人の死を乗り越えて戦う…主人公は支えてくれる人を失いながら戦う、というのは」

 ナントカ氏が渋い顔で言う。


「あまり登場人物の死を美化したくないなあ。

 それに視聴者が求めているのは、悲愴な話じゃない。

 前向きな話だよ」


「そう言うなら、仕掛けの方はそっちの方が得意だろう、オモチャ屋さん」

「ああ。新旧怪獣対決、宇宙人と怪獣のコンビで行こうと思う」

「そんなヌイグルミ作ってる金と時間は出せんぞ!」

「旧怪獣なら流用できる。

 新造宇宙人はゴムスーツをベースに、スプラルジェントっぽいものを作る。

 これも改造して使いまわすよ。

 後」


「後?」


「番組でも何回か、あまり本筋に関わらない形で過去のスプラルジェントたちと共演させる。

 児童向け雑誌でも、特写で4英雄が揃った写真を掲載し、人気を煽る。

 最終回も3人がスプラルジェント二世を迎えに来る形にするよ」


「雑誌や最終回はいいだろう。何回か、というのは?」


「…主人公の恋人が死ぬ、いやスプラルジェント二世抹殺に執念を燃やす宇宙人が殺す。

 兄代わりの社長も殺される。


 主人公は敵の狙い通り心がくじけ破れ、宇宙へ連行され処刑される。

 それをセンティアたち3人のスプラルジェントが救い、励ます。

 いっそ、過去の主人公の俳優二人をゲスト出演させてもいい。


 そして勝利を収め、主人公は残された弟と二人で孤独に耐えて生きていく」


「それで行こう!」


 そうして既に仕上がっていたプロットに強化策が追加された。


 新たなるスプラルジェントの戦いは厳しいものとなり、同時に長い戦いとなる事が決まった。


 もし楽しんで頂けたら、またご感想等などお聞かせ頂けたら大変な励みとなりますのでよろしくお願いいたします。


 なお、活動報告・近況ノートにてモデルとなった実在の作品についての解説を行っていますので、ご興味をお持ちの方はご参照下さい。

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― 新着の感想 ―
>女優降板 こっちでもこうなりましたかー あの前後編は名エピソードですけどね。 ナントカ氏、仕事できるし悪い人じゃないけど石部金吉金兜なのがなー
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