トンネル内の最後の封印
美紀は寮たちと共闘し、封印を再び行い橘家の使命を全うしようとしていた。
次の封印場所が控えている中で、私は彼らとともにまたひとつ祠の封印を終えた。だが、休む暇もなく、仲間たちとともに次なる封印に挑まなければならない。橘家に受け継がれた封印の術があったとはいえ、このところの連戦続きに、美紀も疲労を隠せなくなってきた。しかし、私が怯むわけにはいかない。この地を守るためには、どれだけの力があろうとも使い切る覚悟で臨むしかないと思い馳せていた。
「これで祠の封印も残りわずか……」そう呟くと、寮が疲れをこらえながら皆に声をかけた。「あと少しだ。皆、頑張ろう」その言葉に皆も再び気力を振り絞ってくれた。
次の目的地となる公園の封印が、この戦いの最後の要だということは美紀もわかっていた。橘家の歴史の中で最も重要で、最も難解な封印が必要とされるこの場所。これを成し遂げなければ、かつて先祖が成し得なかった封印の成就も危うくなる。そう考えると、美紀の中で再び大きな責任感が沸き起こっていた。
***公園の封印準備***
数日後、全員が再び集まり、最後の封印に向けた準備を行った。寮、瑞希、鈴木、由香、國府田といった、これまで共に戦ってきた仲間たちに加え、霊視や呪文に精通した陽菜や春香、山田も合流してくれた。彼らが私を信じて協力してくれることが、本当に心強い。
「今回が最後の封印よ。気を引き締めて臨みましょう。もし何かが起きても、必ず乗り越えられると信じて」皆にそう伝え、私は心を決めた。みんなも頷き、それぞれが持ち場についた。由香はタロットを引き、最後の占いをしてくれた。「…今のままでは成功する確率は10%しかないわ」との結果に、全員が緊張の色を見せる。
「全員が一丸となって、強力な結界を張り、封印を守り抜きましょう」と瑞希が告げ、美紀たちは全ての準備を整えた。そして、冷たく張り詰めた空気に包まれた公園の中心で、封印の儀式が始まった。
***最終戦と封印の儀式***
封印の呪文を唱え始めると同時に、周囲の空気が一層冷たく重苦しいものに変わっていくのを感じた。「…来たわね」その瞬間、地面が揺れ、黒い影が次々と現れた。公園の端から押し寄せる悪霊たちに、皆がすかさず応戦する。
瑞希と葵が浄化のお札を放ち、鈴木と國府田が結界を固め、由香が霊視で悪霊の動きを察知しながら指示を出す。私は封印の儀を続けながら、仲間たちが悪霊を阻止してくれることを信じ、呪文に集中した。
その時、強力な黒龍が現れ、美紀たちの前に立ちはだかった。寮や瑞希、葵の浄化術や春香のお経もまるで効果がない。苦しい展開だったが、陽菜が強大な霊光弾で黒龍を貫き、周囲にいた悪霊も一気に消し去ってくれた。
「この機会を逃さないわ!」私は全力で封印の呪文を唱え続け、祠から光が広がるのを感じた。「青龍、白虎、玄武、鳳凰よ、この地を守り給え!封印!」光が一帯を包み込み、最後まで残っていた悪霊たちも光と共に消え去った。
***怪異の終息とさらなる調査***
「やっと…終わったのね」私は深く息をつき、仲間たちも無事に封印を終えた喜びを分かち合った。地域全体の封印が完了したという達成感と安堵が、私の中に静かに広がっていく。
だが、寮が小さく呟いた言葉が、私の心に新たな覚悟を呼び覚ました。「…この封印だけで解決したとは思えない。トンネルの内部に、まだ何かが潜んでいるかもしれない」その言葉に、美紀の中にも再び不安が芽生えた。
橘家の使命として、この地域を完全に守るには、トンネル内部の根本的な原因を突き止め、封じなければならない――その思いが私の中に強く宿った。そうして、寮たちと私はトンネル内部の調査へと進む決意を固めたのだった。
***トンネル内部への挑戦***
それから数日後、準備を整えた私たちは、トンネルの入り口に立った。不気味に口を開けるその暗闇の奥には、一体どれだけの霊的な力が潜んでいるのだろうか。
「これで、本当に終わらせる」そう心の中で決意を固め、一歩を踏み出す。暗いトンネルの中、霊的な冷気を感じながら、仲間たちと共に一歩一歩進んでいく。すでにここに恐れはない。ただ、私の使命を果たし、この地を怪異から解放するための強い意志だけが、私たちの歩みを支えていた。
そして、その暗闇の奥で待ち受ける未知の危機と真実に向き合うため、私たちは進んでいった。
古びたトンネルの暗闇の中に足を踏み入れた瞬間、私は肌にまとわりつく重々しい空気に身震いした。鈴木が取り出したLEDライトが、冷たく青白い光で古い壁を照らし出し、私たちは慎重に奥へと進んでいった。
「ペンデュラムの反応が…トンネルの中心で強まってるわ」
先頭を行く寮のすぐ後ろで、由香がかすかに震える声で教えてくれる。私も周囲の霊気の気配を感じ取りながら、冷静さを保つよう努めた。
「悪霊の気配は予想より少ないようね」葵が浄化スプレーをまきながら、心強い声で続ける。
「それは封印の効果です。でも、油断は禁物です」と美紀は静かに応じる。このトンネルに足を踏み入れてから、ずっと背後に薄暗い不穏さを感じていた。
不安そうに國府田が口を開く。「もし奥で囲まれたら、どうするんですか?」
「その時は私が霊光弾で対処するわ」陽菜が即座に答え、春香も静かに頷く。「私も読経で支援するから、安心して」と言ってくれるのを聞き、私は少し心が落ち着くのを感じた。
慎重に一歩ずつ進んでいくと、ついに中心部にたどり着いた。そこには、異様な光景が広がっていた。壁面に浮かび上がるのは巨大なポータル。鈴木が小さく声を漏らす。「これがポータルか…」
「かつて橘家はこのポータルを通じて式神を使役していました。けれど、次第に制御が難しくなり封印せざるを得なかったのです。この結界が弱まり、ポータルの完全な封印ができなかったために、式神や魑魅魍魎が溢れ出していたのです」
寮が眉をひそめながら尋ねる。「それじゃあ、なぜ今になって封印が崩れ始めたんだ?」
美紀はポータルの文様に手を当て、深刻な面持ちで答えた。「おそらく、ポータルの力を狙う者が現れたのでしょう。このポータルを越えた先には、式神と契約を結ぶための祠があると伝わっています。でも、その力を制御するのは並大抵のことではありません」
その時、ポータルが不気味に震え始め、由香のペンデュラムが激しく揺れた。「強力なエネルギーが…迫っているわ!」
霊的な冷気が空気に満ち始めたと同時に、トンネルの奥に黒い影が現れる。私は息を飲んだ。「まさか…」
その不気味な影が、低く笑いながら私に語りかけてきた。「橘家の末裔よ。私はこの力を手に入れる者だ」
「この力は人のために使うべきもの。封印を解くべきではありません」と、美紀は震える声を抑えながら言い返した。
しかし、男はただ冷たく笑うだけで、黒い靄が彼の周囲に渦を巻き始め、やがて人の形を超えた、巨大な影のような存在に変わっていく。「さあ、橘 美紀。あなたの血に眠る力を解放してみないか?」
美紀は決意を固め、古の呪文を唱え始めた。「天地の力よ、我が血に応えよ!」その声に呼応するように、金色の光が現れ、炎をまとった鳳凰が目の前に姿を現す。勇壮な鳴き声と共に、鳳凰は影の存在に向かって突進するが、影の存在は片手を上げただけで、鳳凰の炎を吹き消してしまった。
「そんな…」美紀は言葉を失った。背後で寮が私を見つめ、「美紀さん、このポータルを完全に封印する方法は?」と尋ねる。
「…あります。でも、時間が必要です」私は少しだけ躊躇したが、心を決めて皆に告げた。寮は私に頷き、「みんな、美紀さんを守ろう!」と声をかけ、皆が結界を張り、霊光弾や読経で影の存在の動きを牽制し始めた。
影の存在はあざ笑うように触手を伸ばし、結界に迫ってくる。私は祈りを捧げ、封印の呪文を唱え始める。「我が祖より受け継ぎし力よ、今こそ…」
その時、影の形が崩れ始め、光に包まれて消えゆくのを感じた。これで決着がついたのだと実感する。すぐにポータルを完全に封じ込めるための最後の呪文を唱え終え、強い光が周囲を包み込んだ瞬間、トンネル全体が大きく揺れ始めた。
「これは…儀式の反動です!」美紀は叫んだ。「この場所自体を封じる必要があります!」
トンネルの天井が崩れ始めたのを見て、寮が叫ぶ。「全員、急いで外に!」
美紀も最後の印を結び、崩れ落ちるトンネルを一目散に駆け抜けた。皆が無事にトンネルの外にたどり着いた時、巨大な岩がトンネルの入り口を完全に塞ぎ、全てを封じ込めたことを確信した。
「これで…すべてが終わりました」夕陽に照らされる岩の前で、私は静かに合掌し、長い歴史の終わりを心に刻んだ。
美紀は、橘家の残した使命を解決した事に安堵にほっとしていた。
寮が美紀に声を掛ける。「美紀さん、これで、君の使命を果たせたね。これからは、普通の生活を送って行く道もあるんだ」
美紀は、寮の言葉に一瞬、戸惑いながらも「いいえ、私の陰陽師としての道は、まだ始まったばかりです。他にもこれまでに橘家が封印した祠の結界が弱まった場所や、先ほどの影の陰陽師の存在も気になります。」と答えた。
寮は「もし、また何かあったら、僕達も協力するから、いつでも連絡してくれるといいよ。」と答える。
國府田が突然、「美紀さんもオカルト編集部で働いてみない?」と、問いかける。
美紀も少し、驚いたようだったが「私の使命を果たす為には、そこで働かせてもらえると助かります。今は、まだ、進学を考えているので、少し先になりそうです」と、答え、こうして寮たちと別れ自宅に帰宅した。
***天狗山への挨拶***
数日後、美紀は、橘 宝輪の結界を再構築し使命を果たせた事を天狗山に向かい祠で告げた。
天狗が現れ、美紀に向かって、使命を果たせたようだな。だか、おぬしの力で無く、他の者たちの力があったからこそ果たせたのだ。より精進し、再び橘家の力を高めるのがおぬしに課せられた使命でもある。だが、ここで、普通の生活を歩む道もある。と天狗が伝える。
美紀は、少し戸惑いながら、まだ、私も決めかねています。もうしばらく、陰陽師の学びを続けて答えを見つけます。と話、山を降りて行った。
***高校での会話***
授業が済んだ後、美紀は楓と真子、田中と話をしていた。
楓が「美紀、橘家の封印の使命は果たせた?しばらく忙しそうだったけれど。」
美紀は「なんとかね。でも、ほとんど助けられてだけどね。私の力はまだまだね。」
真子「でも、凄いね。本当に悪霊達を封印してしまったんだから。」
田中「そう言えば、美紀さんが知り合った寮さんといった人は、凄い人みたいですよ。以前、緑大学のオカルト研究部員として活動していてユーチューブでも人気者の一人だったそうです。今はオカルト雑誌のカリスマ編集者として人気が高まっているみたいです。」
美紀は「そうだったんだ。。。」と、少し驚いた顔をして「でも、何時でも何かあったら連絡してもいいよ。と、話し掛けられたの。」田中は「あの、寮さんと知り合ったなんて凄いですよ。今度、僕も合わせてください。」と興奮気味に話し掛けた。
真子が「寮さんってイケメンなの?だったら、私も会いたいな。」と話す。
楓も「私も会いたいな。美紀だけ、ずるいよ。」と、話が続いた。
学校が終わり、美紀は自宅の玄関に入ると祖母の「お帰りなさい、美紀」との声がし「帰りました。おばあさま」と返事を返した。
美紀は、これからも陰陽師としての修行を続けて行く決心を固めていた。
今回で一旦、ひと段落として一部、完といった形になります。ご購読、ありがとうございました。