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家に帰ると母から祭りの出店について相談された。
「祭り」って言われると…日本の屋台を想像しちゃうんだよねぇ…
りんご飴、焼きそば、お好み焼き…
「クレープ………」
「くれ~…ぷ?」
あ、こっちにそういう言葉が無いって事は存在してないのか。
「あ~……前に学校の調べものの文献で読んだ事あってね、小麦を使う料理だから覚えてたの。イメージ的にはかなり薄いパンケーキの上に色々乗せて巻いたお菓子って感じかな……お肉とか野菜を乗せて昼食にも出来るよ。」
「良いわね♪あっ…でも、最初から作って用意出来ないか…」
「そうなんだよねぇ…」
大体この世界の祭りの食べ物はすぐに出せる物が多い。
肉とかなら焼いて出すだけだから良いんだけど…クレープは食材選びながら置いて巻くしなぁ…時間掛かるのよねぇ。
パン屋らしいものかぁ……あっ!
「プチカップケーキは?……あ、でもそれランスの食堂と被るか。」
「良いんじゃない、それ。ケリーとマシューに相談してみるわ♪それなら人も増えるから助かるし。」
「じゃあ、明日手伝いに行くから聞いてみるよ。」
___翌日___
「プチ…カップケーキ?」
ランチも終了してすぐにランスが先生に用事で出掛けたので、先におじさんとおばさんにまかないを一緒に食べながら話をした。
「そう。カップケーキの上にデコレーションするの。色付けしたチョコを上から掛けて固めたり…」
痛チョコみたいに書くのも…アリだよね?
「どう…かな?」
「良いんじゃない?」
あらかじめ沢山用意しとくのもアリだし、状況によっては仕上げだけデコレーションもアリだよね。
そのままプレーンでも渡せるし。
「そうだな。知らないヤツとでもないし、ブレンダとロビーなら俺は良いぜ。」
おじさんとおばさんの反応も良かったので即決定となった。
カップケーキは我が家が担当しチョコレートなどのデコレーションはランスの家が担当する。
「………て、事になったんだ。」
先生の家から帰って来たランスにも報告。
おじさんとおばさんはディナーの準備の前の休憩や買い出しをすると言うので、おばさんが用意してくれたお茶を持ってランスの部屋に移動した。
「レイチェルは壊滅的に料理は難しいからねぇ。」
「パンはどうにか出来るもん。」
「食パンだけはね。何でだろ?」
そう。
何故か食パンだけは誰にも負けない。
違いは何だ?発酵か??
「パンも良いけど…お店と変わらないしねぇ。」
「まぁ、人が増えれば当日楽になるのは確かだし…俺達もゆっくりと祭りを楽しめるから良いんじゃない?」
___祭りを楽しめる?___
***レイチェル劇場***
『……○○……その…一緒に祭り…行かないか……」
『え?…△△……お前…アイツと……』
『俺はっ!』
△△が顔を真っ赤にして○○を見つめる。
『お前と………お前じゃなきゃ…楽しくないんだよっ……』
___トクン…ッ……___
『△…△…っ。』
***************
カッハァァァ!△△――――――‼︎
ってか、アイツって誰ぇぇっ!
「レイチェル?」
「ハッ!あ……ゴメン。」
「はい、お茶。当日はウィルも来ると思うよ。」
「ありがと……何で?お城にいなくても良いの?」
お城のバルコニーから私達市民に手を振って~…とか、なかったっけ?
「あるにはあるけど、第1王子じゃないしね。ある程度済んだら来るって言ってたよ。」
「そっか。じゃあ、今年はランスも心強いね。」
去年の祭りはランス目当てに来た客(男)に釣りを渡す時にどさくさに手を握られて大変だったもんなぁ。
「それ言わないでよ…それに、何でウィルがいるから心強いんだよ。レイチェルがそばにいないからじゃん!……でも、あの時レイチェル…目をキラキラさせて俺を見てただろ……俺、知ってんだからなっ!」
「アハハ、ゴメ~ン。」
イケメンに次々と手を握られては顔を真っ赤にしてるランス……いやぁ…あれは実に良い目の保養だったぁ。
「触り方が気持ち悪いヤツは追っ払ったでしょ~?」
「俺からしたら、好きでもないヤツに手を握られるのはみんな同じ!」
「じゃあ、誰ならいいのさ。」
「えっ…それはぁ………いやいやっ!何言わせんだよっ‼︎」
「えっ⁉︎いるの?マジで?」
思わずランスに飛び付いた。
「い~な~いってばぁっ!俺はレイチェルを嫁に出してから探すよっ‼︎それより………」
話を逸らされた気もするが、祭りの話しが楽しすぎてそんな気分は忘れてしまった。
祭り…やっぱり祭りは沢山で楽しむのが良いよねぇ♪
「じゃぁ…カップケーキはプレーン・デコレーションは数種類…で、ホイップがプレーン購入からの好みのデコレーションで追加料金をもらうって事で…」
「うん。ホイップは1人1個ね…で…それも、俺達の事を考えて数量限定……って事かな。」
それなら前半に私達が店番をすればウチの両親やランスの両親にも負担は無いだろう。
「あ、今日のまかない食べたんだよね?」
「うん。ランスは?」
「良かった。俺も先生とこで食べたんだ。」
「……何?…そんな美味し…いや…楽しそうなお昼ご飯……私も呼んでよ!」
隣で見たいからっ!
「魔術とかの話ばっかりだよ?今日は氷の魔法の話だったし。」
「え~……」
「ハイハイ。じゃぁ、また今度ね。」
またもや上手くはぐらかされたような気がする……
___ドンドンドンッ!___
「ランスッ!レイチェルッ!いるのかっ‼︎」
「うゎおっ!」
「もぅ……人騒がせだなぁ…いるよ~。」
ランスが扉を開けると凄い形相のウィルがいた。
「お前らっ……2人…きり…かよっ!」
………ピーーーーン………
はい、キタコレ!
『俺のものなのに……!』
ヤキモチパターンか‼︎
カッハァ!萌えるねっ‼︎
「フッ……ウィル……ランスは大丈夫だよ☆」
まだ誰のものにもなってね~ぞ☆
ウィルの肩にそっと手を置いて親指を立てた。