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「……やっ……だっ……!」
「お前……やっぱり……ランスと……」
「違うっ……って…んっ……言ってんでしょうがよっ!」
___ガッ!___
空いてる手で拳を握って頬を殴った。
「……ウッ!」
「……目ぇ……覚めた……?」
殴られた拍子に隣で倒れ、起き上がるのを見ながら声を掛けた。
「………覚めた………多分…‥」
多分じゃ困るんだけどなぁ…
「ったく……私とランスは違うって言ってんじゃん!私が好きなのはね……アンタなんだよっ!無理やりしようと……すんなっ!」
自分も起き上がって横に座ったウィルの襟首を捕まえ、思い切り引き寄せてキスをした。
「……レ…んんっ……!」
「プハッ!今度こそ分かったかっ!!」
「………分かっ……た……」
口を腕で拭いながらウィルに確認すると、顔を真っ赤にしながら返事をした。
………あれ………これ………何かどっかで聞いたシュチュエーションだよなぁ………
***レイチェル劇場(BL漫画)***
『……お前はアイツの事が…好きなんだろ……』
『いやっ……違…』
『でも……それでも…俺は『だから違うって!』』
『○…○……?』
『俺が好きなのは…お前だって…!どうしたら分かるんだよ!!俺はお前以外になんか…キスもしたくねぇし…っ…抱かれたくねぇんだよっっ!!!』
___ガシッ!(抱きつく)___
『○……んっ…』
(○○から首に腕を回してキスをする)
『……………はっ…ぁ……これで……分かったかよ…』
『………分かっ……た……』
***************
あぁぁぁぁあああんっ!!!
これぇっ私が死ぬ前に読んでたBL漫画ぁぁぁぁぁっっ!!
………で……その後………
確か…そのまま…初エッチすんだよねぇぇぇぇ………
「ひゃぁぁぁぁあああっ!!!」
「レイ⁉︎」
頭に血が昇って思わずキスしちゃったけど……私がウィルと⁉︎
いやいや…転生前にはそれなりにしたさ!大人だったしな!
でもこの身体未経験じゃんっっ!
何なの心臓バックバクするぅっ。
「大丈夫か⁉︎レイ!」
___ボンッ!___
「いいいやぁあ…大丈夫く…ないぃ…?」
何の音って?私の赤面する音でございます。
ウィルって…こんなにイケメンだったっけ……?
見晴らしの良い丘の上……キラキラと輝く柔らかかった髪が風になびいて………甘い瞳が私を写す………
「今日の所はこれにて失礼つかまつりまするぅっ!」
「お前……っ…本当に大丈夫か⁉︎」
「大丈夫だか…うわっ!」
逃げようとした所でウィルに腕を掴まれて引き戻された。
「……俺…逃さねぇ……って……言ったよな………」
声は普通だし…見た感じ笑顔だけど……
………目が笑ってません…王子様………
「えっと……その……私……」
「俺を好きだって言ったよな……」
「言ったよっ!言ったけど……んんっ!」
腰を引き寄せられて唇が重ねられる。
逃げようと藻掻いたが全く歯が立たなかった。
「…ん……レイ…嬉しい……」
唇が離れて目が合うと、その目は蕩ける様に甘い本当の笑顔があった。
「いや……ん……その…………恥ずかしぃぃぃ……」
「……そんな顔……出来るんだな………」
「……え?」
「その顔……ランスにも見せるなよ………」
「……どんな顔よ?」
「………抱いて欲しいって……顔だよ……」
耳元で囁かれて腰が砕けた。
「………んぅ………っ!」
「おっと……」
ウィルが私を横抱きにする。
「フフッ……感じやすいんだな……今から楽しみだ♪」
「楽しみにすんなっ!私はお付き合いしてから少なくとも半年は触らせないからなっ!!」
横抱きにされて威張って言えるセリフじゃないんだけど。
「ふ~ん…半年後なら……良いんだ……」
「……んっ……ウィルッ…ワザと耳元で言ってんでしょ!」
「当たり前だろ?好きなヤツの弱点見つけたんだ…普通……攻めるだろ?」
耳元で囁かれて更に腰に来てしまった。
「嫌いになってやろうかぁぁ……っ!」
嫌いになんてなる訳がない。
「そんな事……俺が許さない……」
だって……こんなにドキドキしているから……転生前でもこんなにドキドキした事はない。
「明日からもっと攻めるからな…覚悟しとけよ。」
不敵に微笑みながらウィルは私を軽々と家へ連れて帰った。
家に到着し……
「母上っ!俺はレイを嫁にしようと思う!」
___キャァァ!___
横抱きにされながら裏口ではなく店の扉から入って接客中の母に報告した。
悲鳴は勿論お客の女の子達。
「あらあら……じゃぁ……まずはランスに報告ね♡」
ピシッ……と、石の様にウィルが固まった。
………あ、丘の上での事……どう言おうかなぁ…‥…
___カランカラン___
「そうだね……じっくり聞かせてもらおうかな………君達を偶然見掛けた女の子達が勢い良く俺の店に報告しに来てくれてねぇ………いやぁ……やっぱりさ…こういう事は本人から聞かないと………ねぇ……」
「………あ………ラン…ス……」
ダラダラとウィルが汗を流し始めた。
過ごしやすい季節だけど…暑いのかな?
「………僕の可愛いレイチェルに……下手なプロポーズとか……してないよね………あ、何か疲れてそうだね。レイチェル、こっちにおいで。」
「ゴメン、重かったよな!うん、ランス……私…今腰が立たなくて歩けないんだ。だから……」
私は手をランスの方へ向けた。
「…………ふぅぅぅん……腰が立たない………ウィル……後でゆっっくり……聞かせてね………」
「…………はい…………」
___キャァ♡___
……ん?
あれ?また何かBLのシュチュエーションみたいな事あった⁉︎
ちょっと疲れて顔色の悪いウィルに……何か怒ってるランス……どこにも無いと思うけどなぁ。
恋愛は全く関係ないと思っていたけど…まさか転生して経験出来るとは思わなかった。
普通の可愛い恋愛では無いけど、私らしいちゃあ私らしいかな♪
……王子に好かれてる私……モブ希望だったんだけど…これって…モブじゃ…ないよな……ラムエル……最初に伝え間違った?
でもまぁ…王子様云々は置いといて、私は私らしく恋愛を楽しもうっ!
………あ、勿論……BLもね!!
___END___