お約束そして、援助
次の日、朝からギルドの中にあるレストランで飲み物だけ頼んで、座って青の稲妻が来るまで待つことにした。
1時間くらい粘って諦めようかと、ギルドの依頼ボートに移動して、依頼書の確認をしていると、ギルドの扉が開いた。
そこには、嫌々ながら引っ張られて入ってきたラズとそれを引っ張ってるオズ、カイト、マサラがいた。
ラズ達が入ってきたのが、わかった優舞は、足早に近寄る。
「あの、オズさん・・・どうしたんですか?ラズさんを引っ張ったりして・・・」
「いやーちょっとな」
「それより、話があって待ってたんですけどちょっといいですか?」
「あぁ構わない、俺たちも話があってここまで来たんだ」
と言われ、もう一度レストランに入り直し、飲み物を頼む。
ラズは座るなり、頬を膨らませ、そっぽを向いている。
話を先延ばしにしたいのか、優舞は、ゆっくりと飲み物をもう飲み干し、氷を口の中に入れ、ワザとしゃべらないよにしていた。
オズもオズで同じく話を先延ばしにしたいため、ゆっくりと飲み干す。
先に口火を切ったのは、優舞で、でもゆっくりと伝えた。
「あの・・・カドの子のことなんだけど・・・あの子が、あなた達と冒険をしたいと・・・だから条件付きで連れていってくれませんか?」
「えっ・・・まさか、そんなことってあるんだなラズ喜べ、お前の希望が叶うぞ。ユウさん、俺たちの話は、そのコカドの事で、預かりたいとお願いしに来たんだんだ」
「ユウさん・・・ほんとにいいの?コカドちゃん私に預けてくれるの?」
ぽろぽろと涙を流して優舞の手を取るラズは、優舞を見つめる。
「うん、あの子が、望んでるし、それにあなた達には、あの子の名前もつけてもらったし、条件付きで預けたいのいいかな?」
「その条件って?」
ラズが、聞き返してきたので、昨日子牛ーー、コカドに言った条件を全て伝え、承諾をもらえた。
「もちろん、少し待つだけで、コカドちゃんと一緒にいられるなら嬉しい限りよ。まぁ2年って短いかもしれないけど、それでも嬉しい!」
ラズが、オズを見上げてにっこり微笑むとオズは、ラズの頭を優しく撫でた。
「よかったな、じゃあ4週間後に・・・まぁ屋台出すならちょこちょこと顔を出すよ。それから、ありがとう」
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それから数日が経ち、屋台通りにて屋台の準備を始めた。
午前中は、三杯程、しか売れず、サイルに昼食用意して、裏手で食べさせていた。
そこへ、ワンダール領でみた事が、ある顔が前に立った。
「いらっしゃいませ・・・あれ?」
「いやー疎遠してきてよかった、これに入れてくれ」
そう言って、前に出会った旅人風の人は、牛の絵が書いてあるマグカップをカバンから取り出す。
「うん!うまいもう一杯」
お金をテーブルの上に置くと、牛乳が注がれる。
「俺は、冒険者で依頼で昨日オーラスタムに着いたんだが、まさかまたこの乳にありつけるとは・・・依頼が終わるまで毎日くるよ・・・あれ?新商品出したんだこれは?」
「これは、チーズと言って・・味見してみます?」
「ぜひ!」
アイテムボックスから切れた薄切りのチーズを皿に乗せて、冒険者に差し出した。
冒険者は、チーズを持ち上げると、パクりと食べた。
「うっまー、なんだこれ!4分の1で銀貨1枚・・丸々だと4枚か!?」
「一個だと、銀貨3枚と銅貨5枚で少し割引になってますよ」
「マジか!?じゃあチーズ五つくれ」
袋にチーズを五つ入れると、冒険者に手渡し、
「金貨1枚と銀貨17枚でいいわ」
「そうか…じゃあこれで、ありがとう」
袋を手にした冒険者は、カバンに袋を入れ、それじゃといい去って行った。
それを、見ていた他の客たちが、列を作り、牛乳やチーズが売れて行き、全てが無くなった。
昼前には、店を片付けて、サイルと一緒に宿へ戻った。
帰ると、マーサが、チーズを作っていたので、その近くで、搾乳をはじめる。
搾乳が、終わると、優舞は2人に、断って、ドンを連れて街の散策へ向かった。
街中を歩いて、パン屋や雑貨屋に入り、たくさんの商品を見てまわり、いいものが、あれば買ってを繰り返し、歩いていると、街外れに来ていた。
家が数軒建ち並んでいて、教会の様な建物もあった。
そこに隣接するこぢんまりとした建物の前に、シスターとガラの悪い男3人が、揉めている様だった。
なんとなしに近づいて行く優舞ー、近づくにつれて、話し声が、聞こえてきた。
「すみませんすみません!もう少しお待ちいだだけますか?」
「シスターさんよ、毎回それでもうずっと待ってるんだよ。今日こそ払えねーってんなら、教会と孤児院封鎖してもらうが」
「すみません!まだ子供たちがいるのでここを閉めるわけには、なのでどうか、お願いいたします」
男は、1枚の紙をシスターにヒラヒラと見せて、それを見たシスターは、何度も頭を下げる。
その紙をゆっくり歩いてきた、優舞が見ると、借用書と書いてあり、金貨100枚貸付と下の方に書いてあった。
「金貨100枚ねぇ…じゃあこれで少し多めに入れてるので、いままでにまたしてすみません」
「あっあんたなんだい?かっ金が返ってくるならなんでもいいけどよ」
「あー私、最近ここのオーナーなったんで、今日、今、だからこれでいいですかね?」
優舞が差し出した袋の中を慌てて確認する男達は、150枚入ってるのを見て50枚返そうと優舞に差し出す。
「いえ、これは今までの迷惑料です。もう何回も見逃してくれたでしょ?利子も取らず、貸した分だけ返す、私の世界…国ではあり得ないこと、だから受け取ってください」
「そっそうかじっじゃあ遠慮なく…じゃあまたのご利用を」
そういうと、男たちは、そそくさと帰っていった。
「ドンちゃん帰ろっか!」
踵を返し、来た道を帰ろうとすると、シスターが、慌てて止める。
「あっあの!どこのどなたか分かりませんが、ほんとうにありがとございます。
あっあの少し中でお話しできませんか?」
「うーん…ドンちゃんは大丈夫?」
「妾は大丈夫じゃ」
「じゃあ少しだけね」
ドンを中庭につないで、中に入ると、ボロボロの孤児院の院長室に案内され、寂れた椅子に腰掛けた。
「こちらを…」
シスターが、1枚の紙をテーブルに置き、ペンを横に置いた。
「ん?これって?」
「こちらの所有権です。教会、孤児院、裏の畑…約50坪程、教会が30坪を占めており、残りが孤児院と畑となっております」
「で?だから?これをどうするの?」
「孤児院の借金をお返し頂いたのに、何もできませんので、責めてここの土地を貴方様に…出来ればこのまま孤児院を続けたく、お願いしたいのですが…」
「そもそも貰う気なんてないよ?確かに、さっきテキトーにオーナーなんか言っちゃったけどなる気も貰う気もないけど?」
「いえ!そこをなんとか!金貨150枚など、お返しできるわけもなく、他にお渡しできるものもなく、これしかないんです!」
優舞は、院長室を見回すと、やはりボロボロで人が住むにはギリギリの場所である事を考えていた。
そこへ、孤児の子たちが、院長室に飛び込んできて、優舞の前で頭を下げて、手を差し伸べてきた。
「お願いします。パンのカケラでもいいので分けてください!お願いします」
「こら!貴方たち!部屋に戻りなさい!」
優舞は、子供たちの数を心の中で、数えてシスターを見上げる。
「子供たちは、ここにいるので全部ですか?」
「いえ…まだあと大きい組が、10人程…」
ここには、すでに15人いる子供たちに、優舞は、さっき買ったパンと先ほど出来上がったチーズを薄く切り、パンに挟み、1人一個ずつ渡して行った。
「シスター、貴方の分ですよ」
「いえ!そんな私は…この子たちに渡してくれるだけで…」
シスターのお腹が、シスターの言葉を遮る様に音が鳴り響く。
優舞は、無理やりシスターに持たせて、食べる様に促した。
「さてと、畑はどうなってるの?ここの地域は、年中暖かいって聞いてるけど」
シスターが、食べ終わるのを見守り、そう口火を開いた。
「畑は数年前から使い物にならなくて…何も植えれてません。
お金もなく、あるパン屋から2日ほど経ったパンを無償で頂いています」
「わかった、まずは畑に行こうか」
外へ出ると、中庭にいる、ドンを引き連れ、裏の畑へ向かった。
畑は、雑草が、生えて手入れは全くされていなく荒れ果てていた。
「ドンちゃん頼むよ」
「御意」
ドンは、無造作に畑に入り、雑草を食べ散らかして行く。
「じゃあ次は、厨房へ案内して」
ドンを畑において、優舞は、シスターに厨房へ案内させた。
厨房に入ると、埃まみれで、とてもすぐには使えそうになかった。
「しまったなーカドも連れてくるべきだった。ここは、明日だな」
厨房の近くの食堂に入ると、テーブルの上に街で買った魔導コンロや食材をアイテムボックスから取りだす。
孤児院の子供に頼み、畑のそばにあった井戸から水を持ってくる様に伝え、優舞は、材料を切り始めた。
たくさんの切った具材を大鍋に入れて、煮込んで行く。
それからたくさんのパンを出して、チーズとレタスを乗せる。
煮込み終わったスープの鍋をアイテムボックスに入れ、入れ替えにフライパンとすり鉢、オーク肉を取り出だし、すり鉢にオーク肉を入れ、擦ってミンチにしていく。
できた、ミンチを卵と塩と削ったパンを少し入れ、油の引いたフライパンで焼いていく。
できた、ハンバーグもどきをパンに乗せてパンで閉じ、それを繰り返し、アイテムボックスへ入れていった。
「よし!夕食は出来たから、ドンちゃんところ、様子見に行こう」
他の道具を片付けるとドンのところへ向かう。
畑に行くと、ほとんど雑草はなく、畑のそばで座っているドンに話しかける。
「ドンちゃんどう?」
「大丈夫じゃ、堆肥もしといたからのぅ、あとは好きな物を植えればよい」
「よし!じゃあ…1番大っきい君買い物頼みたいんだけど、大丈夫?」
「ぼっ僕ですか?はっはい…なんでしょ?」
「お金渡すから、花屋さん行って、野菜の苗を買ってきて何人か連れてって畑に収まるくらいの苗を買ってくるのよ」
「わっわかりました、ソーヤ、タール行くぞ」
優舞からお金を受け取ると、頭を下げて、駆け足で、孤児院を出て行く3人。
それを、見届けた優舞は、シスターに振り向き、口を開いた。
「それじゃあ夕飯までこれからの事を話そうか」
そういうと、始めに通された、院長室に向かった。
2人が、椅子に座ると、ずっと放置されていた紙を優舞が、持ち上げ、文字を読んでいく。
テーブルに置くと、テーブルの上にあるペンを持ち、下のところに名前を書いた。
「オーナーは、しますが、名前だけで、貴方に今まで通り運営を任せます。もちろん給料も払います。1ヶ月…そうですね管理も込めて、金貨2枚でどうでしょ?それから消耗品や食費諸々合わせて1ヶ月金貨10枚、後、別途教会、孤児院の修繕費をお渡ししますので、業者はシスターで探してください。いくらかかっても構いません」
「そんな…そんなにもらえません!」
顔を手で隠し、その間からポロポロと涙が溢れおちていく。
「いいですか?私はここのオーナーですよ?それくらいしないとダメなんです。それに、こんなボロボロだと、信者も来ませんよ?来てないですよね?それは、女神様に対して失礼ではないですか?綺麗にして、信者を呼ぶそれが、貴方の使命です。それにかかるお金は気にしなくていい。これも女神様の導きなのだから」
ーとか、かっこいい事、言っちゃったけど、実はこのお金女神様がこっちの世界に来た時にもらったお金なんだけどね、まぁ返すと思ったら心は少し軽くなるよー
と心の中で呟き、シスターを見ながら冷や汗をかいた。
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夕刻になると、大きい組の子供たちが、街から帰ってきて、苗を頼んだ子達も帰ってきた。
優舞は、食堂に1席一人前の料理を並べ、総勢25人の子供達を席に座らせた。
「みなさん、私は今日からここのオーナーになりました。まぁ裏の院長ですね。でも今まで通り、シスターが、貴方たちの面倒を見てくれます。それから、読み書きも覚えていいただきます。シスターがしてしまうと、シスターも大変なので、外部から呼んで授業を受けてもらいます。
それから、教会、孤児院を修繕しますので、一時的に孤児院を離れる時が、きますが、その時は、大事な物を持って宿屋に行きます。忘れないでください。
後、裏の畑は、皆んなで交代制で見る事!これ大事です。私は、旅に出たりします。毎日この様に、ご飯を作る事ができなくなります。この中で料理できる人に、教えていくので誰か、料理を学びたい人は、後日私のところまで来てください」
そう言い終わると、みんなに食べる様に、進める。
子供たちは、涙を流したり、笑い合ったり、おしゃべりしながら、パンやスープを口の中にいれていく。
それを見たシスターも涙を流し、ゆっくりとパンを噛み締めた。




