寂しさと切なさと・・・
オーラスタムのギルドでは、3人で薬草採取の依頼を受けて、門を出て近くの平原へやってきた。
「ユウさん、来週からは、屋台でまた販売するんですよね?私は、どうしたらいいですか?今までならサイルだけで十分でしたけど、王都となると人も多いし、暇になるなら、裏でチーズ作りでもいいですが」
「そうだね。1週間くらいは店に立ってくれる?それからおいおいみて、大丈夫そうなら宿屋でチーズ作りをすれば良いと思う」
「わかりました。そうしますね」
優舞の鑑定で薬草を見分けると、昼を前にギルドへ戻る。
ギルドで依頼達成を完了すると、余剰分を精算してもらい、優舞は、牛達をサイル達に任せて、商業ギルドへ足を向けた。
屋台の申請をすると、ここのギルドマスターも1ヶ月分の乳の代金を払い、毎朝届ける依頼を受けた。
時間も余っていた優舞は、屋台通りに足を運んで、何が売っているのか、見て回った。
食べ物もあれば、剣や装備品、日常品まで低価格で売っていた。
野菜や果物も大量に買い込んだ優舞は、アイテムボックスに入れて、徐にこの世界で初めて出す携帯を取り出した。
「そういえば、これも使えるんだよね・・・なんかメールきてる・・えっ・・・マジか」
いつものように、スマホを操作して、メールを読むと、そこには、女神からのメールが届いていた。
屋台通りから抜けた広場の噴水の縁に腰掛け、メールを開いてみる。
そこには、感謝の言葉とプレゼントのことが書かれていた。
「マーサ達の事ね・・助けて仲間にしたから、褒美として、キャット・シーを贈ります・・・?キャット・シーって猫のことだよね?それから、次の中から選んでください・・なるほど、誰にしようかな?ブタネコはないな、やっぱりツヤコかシマコだね。どっちにしようかな」
メールをスクロールすると3つの名前が書いてあり、その名前は、以前牧場で飼っていた、猫の名前が書いてあった。
「ツヤコ・・・最後はかわいそうだったな、一本足無くなって・・それ見るのも辛いから、やっぱ、シマコかな、シマコなら、寿命で死んだからそれ程苦ではないから」
よしっと言って、シマコの指を押そうとした時、誰かが優舞にぶつかってきた。
それは、近所の子供達で、走って遊んでいて、優舞がいる反対側から噴水の縁にのり、追いかけっこをしていて、優舞が見えておらず、ぶつかってしまったのだ。
「すみませーん」
と子供達が、謝って広場から去っていった。
そこへ、魔法陣が現れ、キャット・シーが現れた。
「・・・あーーーー!!??なんでお前なんだよ!?お前、1番ないと思ってたのに!」
「にゃーにゃーにゃーオイラはキャット・シー、ブタネコにゃ、主早く撮るにゃ、今度こそニャンチューバーにゃるにゃ!」
「やらねーよ、撮らねーよ!なんでこんなかなしゅーことあるかいな・・・1番無いわ」
置いて帰るってと言って立ち上がると、足早に宿へ向かう優舞、その後ろを早足で追いかけてくるブタネコ、宿に着くと、従魔小屋でサイルとマーサが、子牛と遊んでいた。
「おかえりなさい・・・ユウさんそれどうしたんですか?キャット・シーですよね?」
「えっ・・・?なんで着いてきてんの!?シマコじゃないなら置いてくって言ったじゃん!」
「わーい新しい仲間だーわーい」
「ブタネコにゃんよろしくにゃん」
サイルは、ブタネコを抱き上げて、プラプラとあそんでいる。
「ユウさん、また従魔増えたんですね、今回は、手もつかえるので、役に立ちそうですね、売り手として」
顎に指を置いて、考えるように、ブタネコを睨みつける。
女神様からのプレゼントだし、文句言わずに受け取ろうと思い、ブタネコに声をかける。
「ブタネコ、いい?あんたは売り子なんだから、もし嫌がったり牛乳勝手に飲んだりしたら、追い出すからね!」
「大丈夫にゃんオイラに任せるにゃん!」
ドンッと胸元を叩き、偉そうにそり返るブタネコを冷ややかな目で見ている優舞は、ドンに抱きつき、頭を擦り付けた。
そんな、優舞に子牛が、声をかける。
「主ー、ボク・・・ボクねお願いが、あるりゅの」
「どうしたの?」
ドンから離れると少し、屈んで子牛に目を合わせる。
「あのねボクね・・・あにょー・・・」
そう歯切れの悪いように伝えようとしたが、俯いて、カドに頭を擦り付ける。
「我が子よ、ちゃんと言わないと、主に伝わりませんよ。それに主は、あなたが、今から言うこと、聞き入れてくれますよ」
「主ー、あのね・・・ボク、冒険者しゃんのお姉ちゃんに着いて行きたい!ボク、ラズお姉ちゃんと旅がしたいにょ!ボク、もっと成長したい。でもおかしゃんや主といると、ボク甘えて成長できない!じゃからお願い!」
寂しそうに、子牛を見ると頭を撫で、ぎゅっと抱きしめる。
「そっか・・・やっぱりか・・・わかった約束事を守れるならあの人達に着いて行きなさい」
「うん!」
そうして、優舞は、一つ一つ丁寧に子牛にこれからのことや約束事を伝えていった。
まずは、産まれてから1週間程しか、経っていないので、牛乳から粉ミルクに変わるまで今まで通り生活する事、牛乳から粉ミルクにかわるのは、生後1ヶ月が、経ってから、そして無闇矢鱈に魔法を使わない事、それはラズだけで判断せず、オズが決める事、そして乳が搾れる時期になれば、こちらに戻ってくる事、それは生後2年とくらいと決め、それを守れるば、預けることにすると言った。
「じゃあ明日にでもギルドに行って探してみるか」
「うん!」
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その頃、青の稲妻の拠点である家には、ラズがぐったりとしていた。
「ラズ、いい加減にしろ!仕方ないだろ!従魔は、諦めろ」
「私は、あの子がいいの!コカドちゃんと一緒にいたいの!お兄お願いしてきて!」
「無理に決まってるだろ!助けてもらいながら、そんな図々しい願い」
「じゃあ私、冒険者辞める・・・コカドちゃんがいないなら冒険者やる意味ない!」
椅子から立ち上がると、バタバタと足音を響かせながら、自室へ入り、バタンっと大きな音を立てて、ドアを閉めた。
「一回ダメもとで頼んでみたら?ラズの頼みじゃん、結局ああ言ってても頼むつもりなんだろ?」
「カイト・・・確かに、コカドがいれば、チームにとっていいかもしれないだが、助けてもらった恩人にそんな事言えるわけない」
「オズ、聞くのはタダだ、明日、ギルドで出待ちでもして待ってみようぜ」
「・・・そうだな、そうしてみる。断られたらそん時だよな」
ラズが、消えたドアを切なそうに見つめ、握り拳をつくる。




