野宿で出産
地平線に夕日が、沈んでいく頃、小さな林を背に、野営の準備をはじめる。
テントを立てて、火を起こすと、昼食作りをはじめる。
温かいスープとチーズを挟んだパンを2人に配り、優舞は、食べる前に、乳搾りを始める。
終わると夕食をとり、すぐテントへ潜った。
「乳搾りって私たちはできないの?」
「出来るけど・・・明日の朝やってみる?朝早いよ?」
「うん!やってみる!明日の朝起こして」
次の日の朝、起きるとマーサを揺り起こす。
マーサは、飛び起きると、カドに出してもらった水で顔を洗う。
一から乳搾りを教えて、乳搾りを終えると、サイルが、起きてきた。
「おはよーお姉ちゃん達早いね」
「乳搾り教えてもらったの。楽しかったわ。次は夜よね?」
「うん、旅の間は、2回にしようと思って・・・ご飯食べたら行こうか」
ーーーーーーーーーー
パカポコと歩いていると、カドが不意に止まる。
「どうしたの?
ねぇユウさん、カドさんが!」
先を歩いていた優舞を呼び止めると、優舞が振り返る。
「カド・・・もしかして始まったの?」
「はい・・・こんな時にすみません主」
「2人とも降りて、野営できる所探して!」
2人が、さっさっとカドから降りると、探索へ向かう。
優舞は、カドのお腹をさすり、宥めている。
2人が、見つけた野営地は、大きな岩があり、そこへカドを誘導した。
着くと、カドは寝たり起きたりを繰り返していた。
「お姉ちゃん・・・カドどうしたの?具合悪いの?」
「出産するんだよ、新しい命が生まれるの。カドと初めて会った時、もう既に中にいる事に気づいては、いたんだけど、こんなに早いとは、思ってなかった」
パタンと寝転ぶカドを見るとお尻の辺りから白いものが見えてきた。
「出てきたよ。見えてるの足だよ。多分前足」
「ほんと!?すごい、もう出てくるんだ」
キラキラと目を輝かせて聞いてくれるサイルは、カドの出産を見守っている。
その間にマーサと一緒に野営の準備をして、マーサは、時間がある為、チーズ作りをはじめる。
数十分が経ち、カドのお尻から、半分は子牛の身体が出ていた。
「もう出るの!?カド頑張って!もう少しだよ!」
スルッと出てきた子牛は斑ら模様の可愛い子牛だ。
ヌルヌルとしているので、カドの前に持っていくとペロペロと舐め始める。
そこへ、ドンもやってきて一緒に子牛の身体を舐めてくれる。
「私たちは、昼食にしよう。子牛が乾くまで、時間があるからね」
昼食を食べ終わると、マーサまたチーズ作りを再開させる。
サイルは、近くを歩き回っている。
優舞は、ドン達を見ている。
「主、ありがとうございます。主のおかげで、この子を産むことが、できました。あの時、私と一緒に逝ってしまったこの子を主に見せることができ、私は嬉しいばかりです」
「カドが、頑張ったからだよ。カドの赤ちゃんまた、見せてくれてありがとう」
優舞は、カド達に近寄ると産まれたばかりの子牛の頭を撫でる。
もう、ベタベタはしない子牛を抱きしめて鼻にキスをする。
「名前何がいいかな?アボカドは、次女の名前だし、何がいいかな?」
「あの子は、元気ですか?」
カドを少し見て子牛に目線を下げてフルフルと首を横に振る。
「・・そうですか・・・」
「長女のオヤジはいるよ・・・まぁ今はわかんないけど・・よく、アボのこと覚えてたねー忘れてると思ってた」
「主が、あの子が私の子だとずっと教えてくれていましたから、だからあの子のことは、覚えているんです。いつか、あの子も来てくれるのでしょうか?」
だといいねっと呟いて、名前は先送りにすることにした。




