とくにもかくにもカドが立つ
もうすぐこちらの世界に来て4週間が、経とうとしてる。
ステータスウィンドウを開いてレベルを見ていた。
「ドンちゃん、もう時期レベルが10になるよ、いつになったら次の牛来るんだろ?まだまだなのかな?」
「妾にどのくらい上がれば、来るかどうかは分からぬ、気長に待つと良い」
そうだねっと呟く、店番をしているサイルの後ろ姿を見つめる。
あれから、牛乳の売れ行きは、忙しいが、なんとか1人で回せるようになっていた。
お昼には、販売は終わりいつものように、従魔小屋の前に来る。
サイルにサンドイッチを渡しなが、
「サイル、来週ねこの町を出ようと思うの、悪いけどそれまでよろしくね」
「うん!わかった・・・僕も旅に出たいな〜ギルドに登録できる歳になったら、僕も旅をする!」
食べ終わると、帰るサイルを見送り、ドンの背中の上に寝転ぶ。
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ドンの上で昼寝をしていると、さっき帰ったサイルが、息を切らしながら走って従魔小屋に入ってくる。
「お姉ちゃん!?どうしよう!マーサお姉ちゃんが!?」
「えっ!?」
サイルの手を引いて、走ってマーサのいる2人の家に向かう。
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「マーサお姉ちゃん!?大丈夫?」
「サイル・・・大丈夫よ・・・ただ、クビになっただけよ・・・」
項を垂れるマーサは、顔を真っ青にして答えた。
「あっあのマーサ?どうしてクビに?なにかあったの?」
「・・・・・・まぁクビになったしいいか・・・実は・・・」
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マーサが、働いている所は、小さな食堂屋ーーー
そこで、ウェイトレスをしていたマーサは、いつもように、お客から注文を受けていたその時、パリーン!!と突然、厨房の方から、何かが、割れる音が聞こえた。
慌てた、マーサはお客に頭を下げ、急いで厨房に戻った。
厨房の横の通路にあったオーナーの壺が、割れていた。
確か、あれオーナーが、高い壺を買ったって自慢してたやつだ・・・
そう思っていたら、オーナーが、上から降りてきて、突然、厨房にいた女が叫んだ。
「マーサよ!!マーサが、割ったの!?」
「はぁ?えっ?」
「マーサ!本当か!こっちに来い!」
オーナーは、マーサの腕を掴むとオーナー室に連れて行かれた。
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「そのあとは、なにを言っても、聞いてもくれず、今月の給金もなしで、そのまま解雇だって・・・」
「お姉ちゃん!マーサお姉ちゃんを助けてよ!お願い」
うーんと腕組みをして、悩んでいると、少しして、閃いたように手を叩いた。
「あのさぁ、マーサ、チーズ作ってくれない?少し、販売をセーブしてチーズ作りたいと思ってたの!お願いできる?一個作る度に銀貨1枚だけど大丈夫?」
マーサは、顔を上げ、涙目で優舞に抱きつく。
「いいの?弟まで迷惑かけてるのに・・・ごめんなさいありがと」
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次の日、販売が終わり、サイルが、帰った後、旅を出る時用に買った、ローブを身に纏い、マーサが、働いていた食堂の前までやってきた。
中は、まだ営業中だが、客は、マダラで繁盛していない様子であった。
「・・・あんまり角が立つとこしたくないけど、冤罪だし・・・」
そこへ、1人の客が入ろうとしていたので呼び止める。
「あぁあのねぇちゃんの事?そうだな・・あのねぇちゃんが、いるから来てるようなものだから・・・」
「・・・?聞いてないんですか?先日、解雇になったって」
「はぁ?なんで?」
昨日聞いた、話を客の男にすると、真っ赤な顔になって怒っているようだった。
「ふざけな!あの時、ホールにいただろうが!俺の注文取ってたんだぞ!」
「だから、それを暴こうと・・・協力してくれませんか?今日は、普通に入って・・・」
客の男は、しっかりと頷くと、いつもの様に店に入っていく。
優舞も遅れて、入る。
中には、3人の客と髭を蓄えたウェイターがいた。
ウェイターが、さっきの男のところへ注文をとりにいっている。
優舞は、ローブを取り、男と目が合うと、ゆっくり頷く。
ウェイターが、優舞に注文をとりに来る。
「・・・ではそれで・・・後、聞きたいことがあるのですが・・・」
「はい、なんでしょう?」
「いつもいるお姉さんは、どうしたんですか?いつも、本日のおススメとか、言ってくれるので助かっていたのですが、今日は、ないので、テキトーに頼みましたが・・・」
「いつもの・・・あぁあのものは、解雇しましたよ」
「どうしてですか?辞めたのならわかりますが、解雇っていつも来ていたのにそんな人では、なかった様な気がしますが・・・」
ウェイターは、嫌そうにしたが、この口ぶりから常連なのだと
思ったのか、イヤイヤしく答えた。
「昨日、私の大事な壺を割ったんですよ。それに、嘘をついて割っていないって・・だから解雇にしたんだ」
近くに座っていた、客は、勢いよく立ち上がり、
「なっ!?あのねぇちゃんを解雇したって!?こんな、上手くもない飯屋になんのために来てると思ってんだよ!?あのねぇちゃんのおかげだろ!だいたい、昨日なんか割れた音した時、あのねぇちゃん、ホールで俺の注文受けてたぞ!」
違うテーブルで、食べていた客も立ち上がり、援護射撃をしている。
「なんでよ!今日それでいないのかよ!じゃあここに来る意味ねーな、俺だって昨日居たぞ!」
それぞれ文句を言うと、半分くらい残っている食事をそのままにはじめからいた3人の客は、怒って店を出て行った。
ウェイターは、焦り出したし後を追いかけて行ったが、すぐに肩を落として戻ってきた。
「なんと言うことだ・・・まさか、マーサを辞めさした事で、客が逃げてしまった・・・じゃあ誰が壺を割ったんだ・・・」
「あんた、オーナーだろ?最近の飯食った事あんのか?この数ヶ月、味落ちてるぞ。」
「えっ・・・厨房は、確かイライザか・・・」
オーナーは、急いで厨房へ、向かう。
オーナーは、厨房にいる3人従業員の中の1人を見つけると、マーサと同じくらいの女の子に近づいていく。
「イライザ!どう言う事だ!姪だからってあやまかしていたが、この店の味が、落ちてるとは、どう言う事だ!?数ヶ月前、マーサと対決した時、忠実に再現していただろう?それが、なぜ落ちる!?」
「そっそんなの知らないわよ!私は、レシピ通り作ってるんだから!」
2人が、言い合いしていると、残りの2人の内、1人がおずおずと手を挙げる。
「あのーじつは・・・」
「あんた言わないっていたはずよ!」
「イライザは、黙っておれ!続けろカイト」
「あの時、対決した時・・・イライザからお金もらってマーサのやつと交換しました・・・」
「言うなと言ったでしょ!」
「イライザ!お前は、黙ってろっと言ってるだろ!まさか、そんなの事をしていたとはな!まさかだと思うが、壺を割ったのもお前か!」
イライザは、フンっと言う様に、顔を背けてカイトを睨んだ。
「カイト、モダンどうなんだ?」
「壺を割ったのもイライザです・・・すみません!イライザが、昇進の手伝いをしてやるって・・・でも!数ヶ月経ったのにまだヒラだ。結局イライザの事を聞いてたらマーサが、クビになった。だったら隠してる意味もないだろ」
イライザは、ギリギリとカイトを見るが、カイトは、イライザを無視して、オーナーへと駆け寄り、コック帽を脱ぐと頭を下げた。
それを、ホールから見ていた優舞と協力してくれた男は、ゆっくり気配を消して店を出た。
「ありがとうございます。多分これでマーサの冤罪も消えるでしょ」
「いや、俺だってあのねぇちゃんのためだ。あのねぇちゃんが、作ってくれる時は、すごく美味しんだ・・・前もあの子もウェイトレスやってたんだが、マーサちゃんに酷くてな、オーナーの姪だから好き放題やってたわけか・・・じゃあ俺は、これで・・俺も常連終わりか・・・」
ふっと笑うと、哀愁を漂わせて男は去っていった。
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その日の夕方、オーナーは、マーサの家へ向かい、頭を下げた。
「あの店は、休業にするよ・・・また、一からやり直して自分で、提供することにした。あの3人もクビにすることにした。もしよければ、戻ってきてくれないか?」
「・・・謝罪は、受け取りました。オーナーの事は、許します・・・ですが、少し考えさせてください」
そう言って、マーサは、軽く会釈をして玄関の扉を閉めた。
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帰ってきた、優舞はドンに抱きついて、今日あったことを伝えた。
「よかったなぅ、冤罪が晴れた様で・・・妾は、主が、心配じゃったが、悪い方向に行かなくてよかったのぅ」
「うん・・・余計な事に、首突っ込んでごめんね・・・」
次の日、まだ夜が明けない従魔小屋の前にドンが残した、サイレージをむしゃむしゃと食べる黒い影ある。
ドンは、チラリと見上げたが、気にせずまた、目を閉じた。
「お主が、きたからまた、主が喜ぶのぅ・・カドや」
カドと呼ばれた、黒い影は、何も言わずに、ただひたすらにサイレージを食べていた。




