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意図の先は

―スパイシー城・宮殿・廊下―夕―

 「クラルさんは、あ~しの声が聞こえない!」

 ズバーン――!

 論破の音が鳴り響く。

 そして、決まったぜというあ~しのカッコイイ羽を広げたポーズ!

 偽者よ、あ~しと会話のキャッチボールをした時点でアウトだったのだよ。

「そーかよぉ……!ならば、活きのいい鶏はフライだなっ!」

 クラルさん(仮)の口から糸がピュッと吐かれた――!


―スパイシー城・宮殿・廊下―夕―

 ~前回のあらすじ~

「そんなモノはねぇ!」

 クラルさん(仮)の口から糸がピュッと吐かれた――!


―スパイシー城・宮殿・廊下―夕―

 ~ここまでの『截断の女神画』~

「だから!そんなモノはねぇって!」

 クラルさん(仮)の口から糸がピュッと吐かれた――!


―スパイシー城・宮殿・廊下―夕―

 ~今からでも間に合う『截断n……

「くどいっ!」

 クラルさん(仮)の口から糸がピュッと吐かれた――!


―スパイシー城・宮殿・廊下―夕―

 ~総集編『截d……

「総集編出来る程話数ねぇだろ!w」

 クラルさん(仮)の口から糸がピュッと吐かr……ない!?

「なっ!?」

 困惑したクラルさん(仮)の虚を突いて、あ~しはその顔目掛けて羽ばたいてドロップキックをかます!

「っぐぁ!――」

 後方へよろめくクラルさん(仮)を、そのまま飛び越す様にして逃げ――

 ――メチャァ……

「!……」

 あ~しの顔面は何かに突っ込んだ。

「なんだこr……」

 蜘蛛の巣――。

 こんな所に?

 見えてなかったぞ……。

 そのまま地面に蜘蛛の巣ごと床に叩きつけられ、デシ!っと胸と腹に鈍い衝撃が走る。

「ぅ……っ」

 苦痛が殆ど声となって出ない。

「鶏ぃ。お前もソレに引っ掛かるタイプかい?」

 後ろからクラル(仮)の声がする。

 内側からの無理と外側からの拒否で、逃げたくても逃げられない。

 顔を辛うじて後ろに動かし、視界に奴をギリ入れ見やる。

 もはやクラルさん(仮)の顔ではなく、それは複眼よろしく蜘蛛の顔。

 クラルさんの胴体はそのままに、蜘蛛の顔が乗っかっている様相で。

 要するにクモルさん……。

「張って置くもんだよなぁ」

 と、クモルさnいやクモルは、巣に引っ掛かって身動き不能のあ~しを素早くグルグルグルっと慣れた手つきでまわs……オェッ!……

「ぎもぢわるぃ……」

「あーそうだろう?だがもうすぐそれも感じなくなる」

 クモルさんの左手先が糸状にニュルニュルと蠢くと、鋭利に尖った。

 あー……。

 察した。

 短い人生?いや鶏生?ん?使い魔生だったわ……。

 たった五話での退場とは。

「さて、どんな声で鳴くのかねぇ」

 断末魔の事か。悪趣味だな。

 尖った左手先が迫る。

 あ~しは覚悟……。

 奴の囁くような声がする。

「さ・よ・な・r――」

 ――ドゴッガァーーーーーンンンンンッ!!!

 爆音と衝撃が同時にした。

「――ぐぇっ……っ」

 ご希望の断末魔が出た。

 全身がもれなくなんやかんや痛いし、瞼を閉じなくても視界がブラックアウトしていく……。

 意識が……魂が……飛……ぶ……。

 お望み道理の鶏のフライよ……。

 ……あぁ。

 何処からか川のせせらぎの音がするし、早速、誰かがあ~しの毛を毟っている感覚がする……。

 そういえばあの世、サンズリバーとかいう場所では、奪衣ババアという脱がし屋がいるらしい。

 あ~しの逝き先もそこだったんだろう。

 そうよねぇ……。

 まずは毛を処理してから……。

「やさしくして……」

 あ。断末魔は既に言い終わったので、これはじゃあ……遺言ということにしといて。

 いて……いててて……。

 ちょ、やだ……このババア!

 なんか荒々しい!

「だから、やさしく毟って……」

 遺言テイク2。

 いっだっ!

 いだだだだっ!

 なんだこのババア!

 下手クソにもほどがあるぞおいっ!

 チェンジだチェンジ!

 うっわ!

 文句言ったら今度はめんどくさがって首を外しに来た!

 あー!

 首は!首はスパッと鉈で一瞬で介錯でしょうが!

 いてて!いでで!

 やってらんねぇ!

「やめろこら!ババア!」

「誰がババアだゴラァ!」

 ……え?

「心配させやがって!」

 声の主はサッカ様だった。

 しかも涙目?

「鬼の目にもなm……」

 首がさっきより締まる……。

 遺言がマジでそれになるぅっ……!

「まだ朦朧としてんな?一度サンズリバーで顔洗って来い」

「う、うそですってば……げほっ」

 く、首から手を放して!

「おい!生きてるか?」

 陛下の声がする。

「はい!」

 と、サッカ様は答えて、あ~しから手を離すと、立ち上がって声の方を振り向いた。

 いまいち状況が読み込めないでいるが、生きているのは確か。

 サッカ様の足下には蜘蛛の糸が纏まって落ちており、そこに水が染み寄せている。

 サンズリバーだと思っていたのはこの生温い水か?

 しかしながら暗い。

 これはあ~しの意識レベルが低下中だからではない。

 さっきの衝撃で廊下の近場の照明が複数吹き飛んだからだろう。

「ニワ動ける?」

 と語り掛けた、サッカ様を見上げる。

「ええ。なんとか。……え?」

 暗闇に少し目が馴染んでくると、状況のマズさに気づく。

 サッカ様……。

 何故に一糸纏わず生まれたままのお姿なんですか?

 つーか陛下まで!

 ラッキーかアンラッキーかは置いといて、今あ~しの視界にあるのが二人の後姿というのが唯一の救いか。

 あと、不自然に漂う湯気がグッジョブ!

「いやぁド派手なご登場で。シユ」

 陛下の先、暗闇の奥で、うっすらシルエットのクモルが語った。

「どうやってここまで入った?」

 陛下がゆっくりと身構え対峙する。

「ふふふ……。知りたいですか?そっちの娘を交換に、お教えいたしますが?」

「……そういう魂胆か」

「まあ、当初の予定通りならばシユあなたでした。しかし、状況が変われば価値も変わる」

「予定だと?」

「あ、話過ぎましたね!」

 と、クモルの口から糸が陛下の足下へと吐かれるが、バックステップで躱す。

「何奴!」

「陛下!」

 あ~しの後ろから聞いたことのない女の声二つ。

 すると我々の頭上に小さな燈火が緩やかに発生した。

 その二つの声の主は侍女、あの侍女二人組が駆け付けたのだ。

 頭上の燈火は目の慣れに応じるかの様に段々と大きくなり、周りの状況が把握可能となった。

 廊下の横壁が壊れ、その先にある浴場のお湯が足下に少しずつ流れ出てきているのだ。

 そうか。大幅カットされた陛下とサッカ様の入浴シーンがあったんだったな。

 それは置いといて。

 今は目の前の状況。

 非常にマズイ……。

 クモルと陛下のバトルが始まったのだ。

 この明るさの中で!

 やめてっ!

 折角のバトル描写が陛下の隠し切れないアレやコレやで文字化できないっ!w

「切り伏せる!」

 太刀持ちの侍女から受け取った抜き身の太刀でクモルさんに振りかぶって行く。

 陛下の臀部が丸見え――

 ――ない!

 陛下の後ろの扇の侍女が扇で大事な所を隠してくれている!

 ナイス侍女!

 クモルが口から連続的に糸を吐き出すが、陛下がことごとく太刀捌きで切り払う。

 その払った糸がサッカ様とあ~しの周りの壁や床に突き刺さる。

 ヒェッ!

「きゃ!」

 サッカ様の足下にも突き刺さる。

 硬質化も出来るんやったわーコイツの糸……。

「お前ら!退け!」

 と、こっちを振り向いた陛下のおっぱ――

 ――セーフ!

 太刀持ちの侍女が太刀の鞘でギリギリガード!

 そう。この世には見えてもイイ首と見えちゃイケナイ首があるからね!

 サッカ様はあ~しを抱きかかえて、浴場側に逃げ込み、陛下の方を心配そうに見ている(はず)。

 そうなのだ。主も主で、今はガン見してはいけない。

 描写下手なのでお忘れなきよう。

 主もまたマッパなのだ。

 その主の二つの膨らみを背中に感じつつ、侍女二人を応援するあ~し!

 扇の侍女!行け!

 太刀持ち侍女そこだ!

 わっ!陛下がジャンプしやがったぞっ!

 跳べ!扇の侍女!

 あ!

 危ないっ!

 扇の侍女もっとこっちに寄って!戻って!戻って!

 ああ!戻りすぎて収まってない!ズレてるズレてる!

 見えちゃイケナイ首がー!あー!

 太刀持ち侍女、鞘をもっとこう真横に!

 あ~しの心の応援虚しく、がっつり目の前に陛下とクモルが来ちゃた……。

 向かって右に陛下、そして左にクモル。

「チッ……」

 陛下が聞こえるか聞こえないかの舌打ちをした。

 間。

 その間に、侍女二人がクモルと陛下の真横を小走りで抜けて、陛下の上半身と下半身を鞘と扇で隠す。

 ……。

「知ってますよ、シユ。あなたは第ニの月が新月の時、魔力に綻びが生まれることを」

「……なに?」

 陛下が眉をひそめる。

「貴様……女か?」

 その問いに、クモルがニヤリとして巣を吐いた!

 あ~しらに向かって!

 それを瞬時踏み込んで真下に切り払う陛下。

「はい綻び――」

 陛下の右脇腹にクモルの鋭利となった左手が突き刺さった……。

 サッカ様が声を出せずにあ~しを強く抱き締める。

 目の前をキラキラした細かい何かが舞っている。

 そしていつの間にか強い香りが鼻腔にあり……。

 ……?

【マッタク。ガンコナムスメネ】

 目の前には、輝く金色の蝶がヒラヒラと舞っていた。

 今見ると、クモルの首がゆっくりスライドして、ボタッっと濡れた床に転げ落ち、糸屑と化し霧散していく。

 そして、首のないクモルがその場て両膝をガクッとつく。

 陛下が太刀を下す。

「いろいろと聞き出したかったが……」

【デモ、ワタシガタスケナケレバシユ、アナタシンデイタカモヨ?】

「精霊様。分かっております……」

 精霊様?

 陛下が「様」と言うたか?

 いろいろとこの目の前の状況に頭が追いつかないんだが。

「あ、あの……」

 サッカ様が心配そうに問い掛ける。

「サッカ、心配するな。刺されてはいない。一画に成るという事はこういう事」

 と、クモル。首元からニュルニュルっと糸を紡ぎ出し、生成した口元だけが喋る。

「なるほど騙されちゃったわ。うふふ……」

 ――斬っ!

 一瞬でクモルさんを袈裟切にする陛下。

 二つに分断された胴体が床に転がると、糸屑となり霧散を始める。

「此奴、どうやってここまで入ることが出来た」

 陛下が誰となく問い掛け。

【ソウイウコトネ】

 精霊様と呼ばれた蝶がそう返答をする。

 どういう事?と思っていたらば……。

 何かが糸屑の中から形を残して現れ……。


―スパイシー・湖~市街―夜―


 鶏って空を飛べるの?

 よく聞かれません?鶏の同士よ。

 普通、飛ぶというより跳ぶくらいが関の山で。

 ましてや、風に乗ってちょっと高く長く飛んだ日にゃあ「あ!フライドチキンだ!w」と言われる始末。

 フライドチキンは許す。

 だが草はやすな……(怒)。

 いやね、もうそれ散々食べ飽きましt……じゃなくって、聞き飽きましたってヤツでさーね。

 てか、ほらあ~しって鶏型の使い魔だからさ。

 生まれてこの方、その系の台詞は聞き飽きたっつーのよ。

 うまれてこのかた?

 まあいいや、それはさておき。

 今、あ~しはめっちゃ飛んでるし!めっちゃ速いっ!

 なんなら、あのサッカ様もあ~しの真横で飛んでる!

 あ。もう全裸ではないのであしからず。

 ちゃんとメイド服着てますから。

 服着てるといえば、その我々の先を飛ぶのが太刀を片手に持ったシユ女王陛下で。。

 飛ばされてて、あ~しはすること無いから世界観の説明をちょこっとしておくと、魔術で飛行出来る人はそれなりにいる。

 高さや距離なんかはその人の魔術的センスと魔力量によるみたいだが。

 しかし、今回は桁違いというか別次元的というか、何だかよー分からん力によって飛行能力を得ているみたいで。

 視界を上にやると、ソレが解る。

 さっきの金色の蝶。

 精霊様と呼ばれた蝶があ~しらを超高速で移動させているみたいで。

 あ……。

 一瞬、精霊様と目が合った気がする……。

 こわ……。

「どこにいるクラル……」

 夜のスパイシー街上空に着くと、スピードが減速した。

 夜景が妖しげな雰囲気を醸す街。

「クラルさん……」

 白い布に包まれたモノをサッカ様は大事そうに抱いている。

 それはクラルさんの右腕……。

 そう。

 あの蜘蛛は擬態の内部にそれを内包し、宮殿内部までの侵入を成功させたらしくて。

 陛下から伝えられた内容が、あ~しにはよくは分からなかったが、精霊様の張ったセキュリティを掻いくぐることが可能な方法だったらしい。

 上空からぐるっと眼下の輝く夜の街並みを見下ろしても、気配も何も見つけることは出来ない。

 鳥目なめんな。

「降りて探した方が……駅!列車かもしれないですし!……」

 サッカ様が心許なく呟く。

「いや、待て。この魔力反応……っ!」

 格子状に街を縦に貫くように何かが一瞬煌めいた。

「何っ……?」

 と、サッカ様。

 一瞬、間があり、それは街中に忽然と現れた。

 ――巨人。

 あ~しらの視線と、こちらへと横を向いた巨人の視線がぶつかる。

【シユ。ハリコヨ】

 そう精霊様が話しかけた陛下の顔は、見たこともない形相をしている。

「ええ。分かっています。分かっていますが……」

 その巨人は夜景の街並みにそそり立つランドマークの様ていで、褐色の肌色に金髪と思われる容姿をしている。

 いやまあこの際、容姿などはどうでもいい。

「なんで服を着てないの……」

 と、さっきのシーンまで全裸だったサッカ様がポツリ言う。

「冒涜中の冒涜をしてくれおって……」

 ん?

「ぼうとく……?」

 サッカ様が陛下に尋ねる。

「あぁ。この巨人、姿は前王……。我が父の姿だ……」

「えっ」

 ゆっくりとその巨人は歩き出した。

「チッ!……」

 一層、険しい顔の陛下。

 口元が何か言いたげに小刻みに震えている。

 すると、鋭い眼差しでこっちを見て言う。

「サッカ!」

「はい!」


―スパイシー・市街―夜―


 降ろされた市街地は既に混乱が生じていた。

 一部では魔動車が事故で炎上している様子も見えて。

 見上げると、全裸の前王とやらがゆっくり闊歩していく。

「見つけないと……」

 サッカ様が呟くと、託されたクラルさんの腕を持って走る。

 でも……、

「待ってどこへ?」

「駅!」

「そうあの列車にきっと――」

 連続独り言のサッカ様。

「――サッカ様!」

 そう前方から声がし、見ると執事の白髪紳士さんではないか!

 お互いに駆け寄って、

「クラルさんは?」

 と尋ねるサッカ様に、

「?」

 と、顔をする紳士。

 すると、「!」という表情を見せ、ズボンの右ポケットから何やら取り出し、右耳へと押し入れた。

「クラル様は?ご一緒ではないのですかな?」

「は、はい……」

 間。

 遠くで何かの爆発音がする。

 二人とも、同時に巨人を見上げる。

「時間になってもクラル様がお戻りになられない上に、持っていくとおっしゃていたこの服もお忘れで、おかしいなと思ったらこの騒ぎでして……」

「クラルさん、大怪我をされているはずなんで、早く見つけてあげたいのですが」

「むむっ!怪我?それは真ですかな?」

 サッカ様は両手で抱いたソレを見つめて言う。

「これ……右腕です……」

「どういうことですかな?……」

「クラルさんの右腕……なんです」

「なんと……」

 察した紳士の眉が下がる。

 怒号と悲鳴を上げた人々があ~しらの横を掠めて行く。

 「?」とサッカ様の顔を見る紳士。

 「?」と返すサッカ様。

「今、何かおっしゃいましたか?」

 紳士が尋ねる。

「いえ……?」

「何かこう小鳥のさえずりの様な……」

 こんな時に何を言っているんだこのジーサンは。

 あ~しが仮に小鳥型の使い魔であっても、この状況下では呑気にさえずらんぞ。

「ほら、また!」

 ?

 紳士には何か聞こえていr……、

「サッカ様!」

 と、あ~しが気が付いて呼びかけるか否か、

「すいません!その右耳のを私に!私に貸してくれませんかっ!」

 と紳士に尋ねた。

 紳士は眉毛を跳ね上げると、察したのか、自分の右耳から外したソレをサッカ様へと手渡した。


~第5話・終わり~

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