とってもやさしいこ
赤ずきんの改変です。
とある森の近くに、小さな女の子とお母さんが暮らしていました。
女の子は、お父さんに買ってもらった頭巾をいつも被っています。
とてもよく似合っており、女の子を見た人から褒められていました。
ある日、お母さんが女の子に言いました。
「このお皿と、マシュマロと、ハンカチが入った籠をもっておばあさんに届けてほしいの」
女の子は笑顔で頷きます。
「うん!早くこの赤い頭巾を見てもらいたいね!」
おばあさんの家は、大きな森のむこうにあります。
おかあさんと「ちゃんとおばあさんに渡すこと」を約束し、女の子はさっそく出かけました。
すると、森のなかでオオカミに出会いました。
「やあ、赤いずきんがとってもすてきだね。どこへ行くんだい?」
オオカミがきさくに話しかけてきます。
女の子は聞かれたことに答えてしまいました。
「森のむこうのおばあさんの家へ、届け物に行くの!」
しかしそう答える女の子の近くには誰もいません。
オオカミは心配して言います。
「お母さんと一緒にはいかないのかい?一人で大丈夫かい?」
「うん!大丈夫だよ!」
「今日は辞めてまた明日にでもお母さんと一緒に来たらどうだい?」
「でもおばあさんにこの頭巾を見てもらいたいの!」
赤い頭巾を指さしながら必死に訴える女の子を無理やりにお家に返すことは難しいと感じたオオカミは一つ提案をします。
「それならオレと一緒に行かないかい?オレもおばあさんに用があるんだよ」
女の子が気を使わないように嘘をついてまでついていこうとしたオオカミに女の子は顔をこわばらせ、オオカミの申し出を断ります。
「でもおばあさんも同時に二人も来たら迷惑だと思うの」
「オレの用事は直ぐに終わるから大丈夫だよ」
「だからわたしはお花を摘んでくるね!」
その間に用事を済ませてねと言外に言った女の子は返事を待たずに駆け出してしまいました。
ここから追いかけても一緒に入ってくれないだろうと思ったオオカミは先におばあさんの家に向かうことにしました。
「こんにちは、おばあさん。オオカミだよ、開けてくれないか?」
「はいはい、ちょっと待ってねぇ」
オオカミが声をかけるとすぐに返事が返ってきました。
おばあさんは扉を開けてオオカミを家に招き入れました。
「おばあさん。貴方のお孫さんがこちらに向かっていてね、何か聞いているかい?」
「あの子がかい?聞いてないねぇ」
「そうか、今はお花を摘みに行ってるから少し時間はかかるだろう。それまでオレも待たせてもらえないか?」
「構いませんよ」
オオカミはおばあさんと一緒に女の子を待つことにしました。
そこに赤ずきんがやってきます。
「おばあさーん、こーんにーちは」
「……はぁーい、ちょっと待ってねぇ」
女の子はおばあさんの家の様子がいつもとちがうような気がして、首をかしげました。が、そんなことはどうでもいいとおばあさんに荷物と途中で摘んできた紫と白とオレンジ色の花束を渡します。
おばあさんは床に膝をつくと荷物を受け取りました。
「はいこれ、おかあさんから。それとね、この花束はわたしから!」
「……ありがとうねぇ。お茶でも飲んでいくかい?」
「ううん、いらない。それよりもね」
女の子は自分が被っている赤い頭巾を指さします。
「この頭巾、とってもいいものだよね!」
「っ!そう……だね、そうだねぇ……」
女の子は最後に頭巾をおばあさんの手に渡すともう一度きちんと見せます。
「ちょっと黒くなってるけど、綺麗な赤だよね!」
おばあさんからの返事はありませんでした。
おばあさんから頭巾を返してもらった女の子はそのまま帰ってしまいました。
いつまで経っても戻ってこないおばあさんを心配したオオカミが様子を見に行くと、おばあさんは小さく震えながら蹲っていました。
赤ずきんが持たされた荷物はお皿の上にハンカチに包まれたマシュマロ。
お皿は割れることから仲が割れるの意味。
マシュマロはすぐになくなってしまうことからあなたのことが嫌いの意味。
ハンカチは漢字で『手巾』と書くから手切れの意味。
花束はオレンジの百合、クローバー、アザミの花束。
オレンジの百合は憎悪
クローバーは復習
アザミは報復の意味の花言葉を持つ。