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40話 たんぽぽ地獄事件



 人魚姫パイシスの必殺魔法により大穴が空いたレイドボス。

ルーリー側からみたその体は、とぐろを巻いた形状も相まって巻貝のように見えた。

太く長いボスの体がとぐろを巻いてなお貫通するその威力は流石の人気キャラの強調整。


 ルーリーがボスのHPを確認すると、今の一撃で大きく削れて残りは2割を切っていた。

「そろそろ終わりじゃな。わしも最後に一発くらい当てるとするか!」


──────────


 ルーリーが動き出すほんの少し前。

カノエはキュータルとクイドに相談事をしていた。

姫二人の諍い(いさかい)でナーガ陣営と人魚陣営はごちゃごちゃに混ざっており、カノエたちがクイドに接触するのも簡単なことだった。


「今のでボスかなり削れたでござる。ここらが拙者の必殺を切るところかと思うのでござるが、二人はどう思うでござる?」

「ちょっと待ってねー。えーっと残り20%くらい? うん良いんじゃない?」

「……だよね。クイド殿はどう思うでござる? 蛇姫殿と一緒にいて思ったことを教えてほしいでござる」


「アナーク様と一緒に居て? まあ単純に幸せだったわ。やっぱり画面越しに見るのとこうやって直接見るのではぜんっぜん違うわ。

まずカメラ角度の自由度が段違いよね。ローから狙ったり上から狙ったりでカメラが勝手に回ったりしないのがこんなに素晴らしいなんて思わなかったし、そもそも今までのカメラワークがダメなんてあんまり思ってなかったもの。

さっきの一本背負いだって今までの作品でならただの技よ? コマンド選んでカウンター発動してもらってって、ね。

それをあんなに気合を入れてやっていたなんて想像しなかった! 

白鳥が水面下では足を必死に動かしている、みたいな話よね。簡単に技をやっているように見えるけど息遣いとか力の入れ方とかほんと凄かった! もっと色んな角度で後世に残すべき映像よあれは! 

アナタたちもさっきの映像撮ってたらアタシにちょうだい! リアルマネーで買うわ、もちろん二人別々に買うわよ。──それで、えっとなんの話だっけ?」


「……え? あっえーっと。ボスがそろそろ倒れそうだから必殺技切るのがよいか、という話でござる。拙者の必殺は広範囲効果力技なので」

「ああそうそう。まぁそうね、必殺なんて切っちゃっていいんじゃないの? 範囲って言ったって他プレイヤーに迷惑になるわけじゃないし。

あっ違ったあの子には当たるのか。うーんでもやっていいんじゃないかしら。向こうは向こうで好きにやってるだけなんだし」

「だよねー。ルーっちは勝手にがんばるよ」


 カノエはその後いくつかの不安点を二人に話し覚悟が決まったように「よしっ!」とつぶやいた。


「じゃあアタシはアナーク様見るので忙しいから」

「まってまって! 蛇姫様の方見てていいからあとちょっと協力してよー」

「……なにをよ。貸せても片手くらいよ?」


 カノエとキュータルが顔を見合わせ頷く。


「……拙者にMPエーテルを分けてほしいでござる。拙者の必殺はMPの限り続くので」

「世界をお花畑にかえちゃおー!」


 これが後に運営を震撼させる、たんぽぽ地獄事件の始まりだった。

──────────


 再びボスの上まで登って行こうと走り始めたルーリー。だがすぐに彼女の足が止まる。

彼女の視界にいくつものお手玉のようなものが降ってきせいだ。それは茶色で、サイズは拳より少し小さく、でこぼことした表面をしていて、フワフワの気球がついていた。

その正体はカノエの必殺技なのだがルーリーは知らない。使うと長いCT(クールタイム)が発生する関係上いままで見る機会が無かったのだ。


 その爆弾の種をボスの攻撃と勘違いしたルーリーは警戒して距離をとる。

彼女の見ている前で、綿毛のパラシュートが種をゆっくりとボスの背の上に落とした。


 ボンッ!


「あぶなっ! なんじゃ!? はぁ!? 爆発するんじゃが!?」


 ルーリーは知らない。これがカノエの必殺技であり、MPの続く限り止まらないことを。

そしてキュータルやクイド、周りにいたプレイヤー達が面白がって、カノエにじゃんじゃんMP回復用の青色エーテルを投げ与えていることを。

MPエーテルを消費する速度は今はまだ十秒で1つ程度、爆弾が増えれば消費スピードも上がる。だが、まだまだ爆破祭りは終わらない。


 ボンッボンッボンッボンッボンッボンッボンッボンッボンッボンッボンッボンッ

爆弾が爆弾を産み倍々以上に増殖していくたんぽぽ爆弾。のんきに見れていたのは最初だけ。

既にボス全体がルーリーにとっては入ったが最後の即死爆発地獄と化していた。


「なんじゃこれは……近寄れぬ」


 ルーリーにとって幸いだったのはたんぽぽ爆弾は広がる範囲が決まっていたということ。

ボスから少し離れれば爆弾は飛んでこない。

安全ではあるが完全に蚊帳(かや)の外でもある。


『おー母上! 無事だったか!』


 呆然としていたルーリーに声をかけたのはノトリスだった。今回も顔の装甲はつけていない。

人魚姫と蛇姫が活躍をしたのにボスの攻撃を普通に食らって遠くへと飛ばされていた青い鎧の姫だ。


「ノトリス、お主もな。まったく吹き飛ばされたのを見たときは呆れたぞ」

『それは言わねーでくれよ。てか、母上も今吹っ飛んでたじゃん。面白かったぜ!』

「それこそ見て見ぬ振りが良い女じゃぞ。精進するんじゃな! それよりノトリス、お主良い所に来た。わしと一緒にこの祭りを締めくくろうではないか」

『ん? なにすんだ? おもしれえ事ならやるぜ』


 ニヤリと笑うノトリスにちょいちょいと手招きをするルーリー。

彼女視点では周りに誰も居ないのに雰囲気重視で内緒話をする。


「まずわしがお主の背に乗る」

『おお、それで?』

「お主が、3番のアーツを撃ち、わしがお主の顔に必殺技をぶつける」

『──3番アーツ。月星三枚おろし。ええ? なんでだよ』

「お主のその月なんたらで飛んで、食ったわしの必殺を吐き出し落下を止める。そしたらわしはまたお主の顔に必殺技をぶつける。お主の技で上に行く。二人でそれで空を飛ぶんじゃ。あの爆破を超えてな」

次でこのボス編は終わりだと思います

ルビ設定が間違っていたので直しました

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