表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/53

39話 姫様大決戦


「よーしよし。また一人救ったな。わし偉いぞ」


 またプレイヤーを一人救済したルーリーは、視界にあるデフォルメされた鬼のようなマークを脳内でクリックした。

【魂喰プレデター・体力55%】


「そろそろHP5割というところか。やはり回復ソースを絶てば脆いな」


 ルーリー達プレイヤーの視界には常に様々な情報が表示されている。

体力などの自分の状態。今いる場所のマップ情報。装備情報。アーツ情報。等々。

ゲームをする上でどれも必要な物だが、全て同時に表示されているとかなりわずらわしい。


 情報を全てオンにしプレイする。それは曇りガラスのまま車を運転するようなものだ。少しだけ前は見えるが得られる視覚情報がかなり絞られる。

見えている小さな隙間からその瞬間に求めるだけの情報を得るには、体の角度を変えたり余計な負担がかかる。

なのでプレイヤーは自分が求める時以外それらの情報を小さくアイコン化し、視界を確保していた。


 ボスとの戦闘時限定のアイコン、尖った耳が二つと鋭い目そしてギザギザの口をした赤くて丸い顔。

そのアイコンを選択すると、ボスの残り体力(見えない敵も多い)、現在確定している報酬、現在発生している特殊状況、等の情報を知ることができる。


 情報を整理していたルーリーはふと、一緒に来ていたもう一人のフレンドが今何をしているのかが気になり、クイドへとボイス通信を送ることにした。

彼女は蛇姫に執心し、ボス戦へ挑むタイミングも一人だけ早かった。

現在地がこの闘技場ということは彼女はまだ食われずにどこかに居るはずだ。

長いコール音の後、『はい?』とクイドが出た。


「おーもしもし、クイドか? お主はいまどこにおるんじゃ?」

『えっ? なに? 今アタシ忙しいのよちょっと待ってて!』


 少し焦ったような声のクイド。

少し聞こえる周囲の音もバタバタと騒がしい。


「う、うむ? 何があったのじゃ? ボスの動きが変わったようには見えぬが」

『違うわよ! 今パチモンが来てるの! ッチ! 全く邪魔くさい』

「はぁ。ぱちもん? 何の事じゃか」

『ほっとゴメン! 今マジで無理なの』


 そういうとクイドはブツリと通信を切ってしまった。

残されたルーリーが首をひねっていると、今度はキュータルからの着信。

先ほど話したときは人魚姫と行動を共にすると言っていた彼女たち。

それが大して時間も空けずになんの用だろうか。

 ルーリーは首をひねりっぱなしのままキュータルとの通信を開いた。


『ルーっち! さっきぶりのおひさー』

「キュータルか? そっちでも何かおこったのか」

『起ったっていうかー。起こした? あっ私らがじゃないよ。姫がだよ』


「なんじゃなんじゃ? お主も要領を得ない言い方をしおってからに」

「えとねー。ルーっちって人魚姫と蛇姫の仲がよくないのしってるー?」

「知らぬ。……いや、どこかで見た覚えがあるな」

『それが出会っちゃったんだー。むしろープレイヤーが焚きつけて誘導した? 

不仲は有名だし合わせて反応みたいーって! 私もちょっとその気持ちわかるけどね』


 少し興奮しながらそこまで言ったキュータルは『ハハハッ』と乾いた笑いを残し通信をプツンと打ち切った。

二人とも言いたいことだけ言い切りさっさと通信を切ってしまい、残されたルーリーは事態がさっぱり分からなかった。

ルーリーに理解できたことは、クイドの慌てようも今の話が理由なのだろうということくらいだった。


「何が起こってるんじゃ? んー大勢いるのは分かるが微妙に見えぬ……おおそうだ、遠眼鏡があった! 蛇姫も見えたのじゃ」


 人魚姫が中に入っている水色の大きな塊。それを目印に遠眼鏡を使い、球体の近辺を探るルーリー。

遠目には同じようなシルエットに見える人魚種とナーガ種。それが何人かずつ集まり向かい合っている。


──────────


『パイシス。ヨの前に現れるなと言ったろ。なんの用だ。早く帰れ』


 蛇姫アナークが手に持った矛を人魚姫に向け、自分から離れろと言う。

その顔には怒るというより呆れの色が濃い。

呆れながらもアナークは、周囲でピリピリとした雰囲気を出しているナーガ族の護衛に落ち着くよう合図を出すことも忘れない。


『うっさいばーか! お姉さんぶるな! わらわがどこで何しようがわらわの勝手だもーん!』


 人魚姫パイシスが挑発するように水球のなかでクルリと縦に回る。

人魚族の護衛は、指示を守っているナーガ族の護衛とは違い、武器を降ろしもせず二人の姫の間で壁を作っている。


『勝手ではないだろう? お前にはお前のやるべき事があるだろ。お前のことだ、子供らの言葉に乗せられてしまったのだろ? そんな変な玉に入っているからそうやって簡単に流されるのだ。お前はもっと姫としての自覚を持て! バカタレ!』


 アナークは一度、人魚族の護衛や人魚姫のスクショ撮影に夢中なプレイヤーたちをジロリと睨んでから、人魚姫へ説教を始めた。


『うっさいうっさい! 偉そうにすんなって言ってるでしょ! あんまりうっさいと吹っ飛ばしちゃうわよ! いーの? 当たったらあんた泣いちゃうわよ?』

『ヨがお前に負けたことがあるか? 無いな。つまり泣くのはまたお前だ。やめておけ』

『ああああー! またわらわをバカにした! バカにするなって言ったでしょ!』


 人魚姫の腕に魔力が集まり、彼女の手首に付いたドーナツ状の腕輪がグルグルと回り出す。


『バカ! お前何してる! あーもう、こっちだ! こっちに打ちなさい!』


 パイシスが集める魔力量を測ったアナークはスルリと地面を這って少し移動する。

ちょうどレイドボスとパイシスが線で結ばれる位置だ。


「アナーク様!?」


 ナーガ族の護衛NPC(混ざっているクイドも)がアナークを守るため動こうとする。だが、それをアナークは止めた。


『こっちに来るな! 命令だ! ヨから離れよ!』


『水よ。水よ。水よ。

集まり、混ざり、乱れて、捩じれ。

全てを呑んで、底へと帰れ。

水よ。水よ。水よ。

穿ち、砕き、引き裂き、叫べ。

十の碇を大地に降ろし、深い底で眠りに帰れ。

大海を呑む渦烏賊カリュクイッド・スロー!』


 人魚姫が必殺の呪文を唱え終えた。

彼女が使えるいくつかの必殺級呪文の一つ、大海を呑む渦烏賊カリュクイッド・スロー

その効果は集めた魔力を水へと変え、イカの形で打ち出すというシンプルな物。

単純な能力だからこそ防ぐことは難しく、一度パイシスの手から離れたそれは何かを破壊するまで止まらない。

 

 その巨大なイカの狙いはアナークに向いていた。イカの大きな三角耳で彼女へと狙いを定める。


『長牙一本背負い!』


 水で出来た巨大なイカ、アナークはその耳の先に矛を刺し、石突きに自分の尻尾を絡ませる。

そして、自分の体を支点として術を投げ飛ばした。

次の狙いはレイドボス。そしてそれを止める者はもういない。



──────────


「はぇ~姫の必殺はすっごいのう。ノトリスたちのも早くみたいもんじゃ。…………あれ、これもしかしてわしに当たる? いやいやいやまさかな──退避じゃ!」


 まっすぐボスへと飛んでくる巨大すぎるイカ。ルーリーにはあの術の性能はわからない。だが、水を操作して作った物だ、当たった後大質量の水がどうなるかは想像がつく。洪水のように周囲にまき散らされるのは間違いない。

 

 慌ててボスの体を半周走って逃げたルーリーは、「ナムサン!」と叫んでボスから飛び降りる。

その直後、ドオオオオオオオオン! と背後からとても大きな音が聞こえ、彼女は思わずビクリと震えた。

今は、あれが自分に当たる設定だ。もし、当たっていたら自分はどうなっていたんだ。

いくつになっても雷の音を怖がってしまうように、本能に訴える恐怖は頭ではどうしようもない。


 ゴンッ! 着地に失敗し地面に叩きつけられるルーリー。

HPが大きく減ったのに、回復に使う緑のエーテルを取り出すことすらままならない。

ビービービービー! 彼女の心拍数が異常値を示し、デバイスが警告を伝える。

その機械音のせいで更に彼女はドキリとし悪循環に陥っていく。


「ふぅーーーー。大丈夫。ふぅーーーー大丈夫。大丈夫、大丈夫。よしっ大丈夫。わしは大丈夫」


 地面に寝転がったまま深呼吸を繰り返し、ようやく落ち着きを取り戻した彼女は濡れた体を起こして背後を振り返る。

あの大きかったレイドボスの体に大穴が空いていた。


最近ちょっと忙しくて投稿時間が遅くなってしまってすいません

明日はもう少し早い時間に投稿出来たらいいなと思っています

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ