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37話 クビ狩り




 とぐろを巻くボスの山登りをしていたルーリー。

彼女は、ボスの頭のすぐ下の段ならタイミング次第では髪の毛が飛んでこない事に気がついた。

探知圏内にプレイヤーが居るので、ボスは自動で髪の毛を飛ばそうとする。だが、相手は自分の顎の下付近にいる。髪の毛は後頭部から生えているので顔の前には射線が通らない。

つまり、ボスが向く方角に合わせてとぐろの上を歩いていれば何も攻撃が来ない。


(ここ、安置かも)

 他プレイヤーの奮闘を高みの見物しルーリーはにやりと笑った。


「変な動きをした触手が……んー? なにか付いておる? 人?」


 ときどき振り返ってボスの顔の方角をチェックしながら下の戦いを見ていたルーリー。

彼女が一つの変な動きをしている触手を見つける。その触手は巻き取りタイプの古い掃除機のコードのようにシュルシュルとボスの体内に吸い込まれていく。触手の先端には死んだような状態の女性キャラ。


 シュルシュルシュルシュル、その触手がどこへ行くのか、先を見るため触手を目視でなぞるとボスの口に繋がっていた。

ラーメンのように口の中にズズズと入っていく。

あれ一本だけは、触手ではなく舌なのか。ルーリーはどうでもよいことに納得しうんと頷いた。


「口へとスルスルすすられて行く人。これが魂喰らいか! 外ではかみ砕かれる所しか映さぬから気づくのが遅れたわ」


 魂喰らいが発動していて捕食モーションに入ってしまったキャラクターがいるなら、それを止める方法はただ一つ。

食われる前にヤる。魂さえ無事なら全然大丈夫! ペンタグラムストーリーはそんな世界観でみんな生きている。

あのキャラクターを救うメリットはルーリーには特にない。だがボスを喜ばせる意味もない。


 ここで一度基本的な事を解説する。

ぺんおんでは、モンスターではないキャラクター同士が戦闘を行う方法が3つある。

1つは互いに同意をして行う決闘。もう1つが俗にいうPKだ。

PKはただ相手を攻撃すればよいというものではない。ちゃんとゲーム内で手順に沿った申請が必要だ。

それがこの方法。


 無表情で触手に捕まっている女の子をしっかりと視界に入れ、ルーリーがキーワードを呟く。

「ターゲット! 3・2・1・0。わしはお前の命を奪う!」


 PKをする際、実行するプレイヤーは被害者プレイヤーを3カウント目で捉える。

そして自分の口で対象を害することを誓う。

これを行って初めてゲームシステム側が両プレイヤーの情報を確認する。


 レベルなどが離れすぎているからといってシステムに止められることは無い。

だが制限は強くなる。


【対象が行動不能に陥っています・このまま続けるとペナルティーが増大します】

「うるさい! 奪われる方が悪いのじゃ!」

 

 シュルシュルシュルシュルシュルシュル。舌に巻きつかれた女の子が静かに引き上げられてくる。

ルーリーがジャンプし飛び降りた。タイミングは一瞬。交差した瞬間に一撃でヤる。


「死ねい! どりゃあああああ!」


 ぐったりした女性キャラの後頭部にルーリーの甲殻に覆われた足先がヒットする。

スコーンッ! 乾いた良い音が響き、女性は光となって消えた。

 

【他プレイヤーが所有権を保持している傭兵を殺害しました。あなたにペナルティーが発生します】

「傭兵? まあよい。それにしても。いやぁ今のかなり良い当たりじゃったな……またやるか」


 会心の当たりに気持ちが良くなったルーリーは同じことを繰り返すためにボスを再び登り始めた。

飛び降りた高さはそれほどでもないのだが、縦に楽をすることはできない。

ボスの皮膚がパンパンに張っており、登るためのとっかかりが掴めないからだ。


 ボスが捕まえた獲物が下から来る度、ルーリーはターゲットの指定をし、ペナルティーの警告文を聞き流して飛び降り、良いタイミングで思い切り足を振りぬく。スコーーーーーーン!

やればやるほど競技性が見えてくる。ルーリーはこの、キャラクターで良い音を響かせようゲームにハマりつつあった。


 そうなってくると競技に邪魔な要素も見えてきた。ペナルティーの説明を聞く件だ。

ターゲットをじっくりと見る部分は良いとルーリーは思っていた。理由は競技に集中できるから。

捕食用触手は捕まえた個体一つ一つで引き揚げる速度が違う。じっくり目標を見ないで空振りをしたら最悪だ。誰かのキャラクターがそのまま食われてしまう。


 この競技には目標をじっくりと見る必要がある。そういった点を加味するとペナルティーの方は邪魔だし迷惑だ。

せっかくルーリーが集中しているのに警告ウィンドウは毎回彼女へと話しかける。


「面倒じゃな。戦争するか? そんなのが有ったはず……これじゃな」


 ルーリーはメニューウィンドウを立ち上げ、設定画面を開く。そして一つの項目をオンにした。


 キャラクター同士で戦闘を行う最後の方法。

それはペナルティーの放棄宣言。一定時間、宣言者へ攻撃を行ってもペナルティーは発生しなくなる。

そして、宣言者から非宣言者へ攻撃を行う際のペナルティーの一律増加。


 この仕様の一般的な用途で代表的な物といえばバトルロイヤルだ。

参加者全員がこの宣言を行い、あとは好きなように戦って最後の一人を目指す。


 今この宣言を行っているのはルーリー一人のみ。レイドボスの最中にこんなことをやっているプレイヤーは他に居ない。

彼女の攻撃は、同じルームのプレイヤーとレイドボスによって実体化されている得物の全てに当たり、ルーム内のプレイヤー及び他ルームで発生したレイドボスへの攻撃は彼女に当たる。


【プレイヤーがあなたへ宣戦布告を行いました】


 ルーリー以外の全てのプレイヤーにそのメッセージが同時に届いた。


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