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30話 運営回3 前日の大人たち 後編



「マザーの機能開放ですか? えーっとちょっとまってください。ええ、その予定は明日の工程に含まれていますね」


 ササキが自分の作業ツールを呼び出し工程表を調べる。

そこには今それぞれの代表者に説明をさせている内容が文章として全て載っていた。

緑の藁人形は多岐にわたるそれらの中から一つの項目をクリックし、中身を読んでから頷く。


「ですがカタシロさんもう少し詳しい説明をおねがいします」


 ツールを閉じ、ピンクの女性型マネキンへ再度問いかける。

有ることは有った。だが、足りな過ぎる。このミーティング後にデータは全て共有される。

だが、それを担当のチーフがちゃんと理解しているかどうかの差は大きい。


「了解した。あす、ファクトリーでは。マザーの機能開放。あと……っぁ、PKの開放。それと…………トレード商人解禁」

「うーーん。……はい。OKです」


 今喋らなければいけない3つの大規模変更点。その表題のみを答えたカタシロ。

彼女は物事を口で表現するのが得意ではない。それを付き合いが長い上司のササキも理解している。

ササキは長く唸ってから合格を与えた。


「あークルマダさん。代わりに頼みます」

「……はい。皆さま、自分クルマダが代わらせていただきます」


 カタシロの代わりに指名されたのは全身真っ黒で頭が煙突に置き換わった蒸気機関車のような人型アバターの男性。

種類はゴーレム種の物で見た目は彼の趣味だ。


「まずマザーの権限開放。ドールズ三種の必殺技制限が一部解除されます。ゴーレム種とマリオネット種は条件を設定しておりませんがプレデター種のみ別途ユーザー様による解除手順がございます。

次にNPCのトレード機能について。これは渓谷内にいる商人NPCとの一対一でのアイテム交換です。渓谷内では敵のドロップ品が限られますしドールズ種以外に使えない物も多い。なので他種族プレイヤーの方はリストに記載されたアイテムと交換していただきます。


最後にPKですが、現状プレイヤー同士で戦闘を行うには両者の同意が必要で細かいルールを設定した模擬戦闘という扱いになっています。

ですが明日の開放以降、相手に同意がなくとも街の外で有れば見知らぬプレイヤーを攻撃対象として選べるようになります。

これはプレデター種の特権ではなく全種族の方が行える行動です。

なお、これによって生じるユーザー間の諍い事ですが、それはドールズというよりもセントラル管轄になる予定ですので自分からは控えさせていただきます」


 クルマダの話を頷いたりしながら聞くGMたち。そんな中スッとカタシロが手を上げていた。


「……なんですか? カタシロさん」

 ササキが少し嫌そうに訊ねた。

 

「明日の解禁と同時にPKを狙う集団もいくつか確認している」

「うーん。あのーあなたは…………あんまり個人ログとか監視しないでほしいんですがね。私としては。

それに計画だけなら懲罰対象じゃないんで。というかPK自体も悪質行為ではないわけですし」

「そう。問題行動じゃない。彼らも、私も」


 表情のないピンクのマネキンが頷く。


「ん? いや違います違います。そのユーザーの方は問題じゃなくてもあなたは問題なんですよ?」

「……? いえ、違います。私にも問題はありません。既に準備も終わっています。クルマダ、あれをササキさんに」

「あれ? ああ数日前から作ってたあれですか? ──えっ今!?」

「そう、今。出してちょうだい」


 カタシロとクルマダの思わせぶりなやり取りに周囲も何を見せてくれるんだとざわめきだす。

ササキは諦め、両手を横に広げた降参のようなポーズをとりつつクルマダへ聞く。


「クルマダさん、彼女は何を見せてくれるんですか?」

「ええっとちょっと待ってください。……これです。名前は【闘技場D】見た通りただ広い戦闘ステージです」


 クルマダが全員に見せたのは固めた土のグラウンドとそれを囲む石の闘技場。

シンプルな作りだがよく見ると装飾なども施されている。


「えっとそんなエリア計画にありましたっけ? ちょっとまってくださいね」


 ササキが自分の作業ツールを呼び出そうとした。だが、それをカタシロが止める。


「これは私がかってに作った。自信作」

「かってに!? ああいえ趣味でなら全然良いのですが。それでその趣味の物がなんですか?」

「既にセントラルに実装済み」

「実装してある!? はぁ!? どこにですか!」

「ここ。裁判所の隣」


 カタシロが腕を何回か振ると部屋の中央にセントラルの地図が表示され、その一部が赤く光る。

赤く光った場所のとなりには【裁判所】空き地を挟んで反対に【お仕置きルーム】と書かれていた。


「そこは今後使うって言ったじゃないですか! 闘技場なんて各街にあるんですからセントラルにまでは要らないんですよ」

「明日必要になる」

「なりませんよ。解放宣言で城から花火打ち上げて終わりなんですから」

「なる。なぜなら魂喰らいの準備も完了しているから。これがそのログ」


 カタシロが画面を切り替えると、複数のユーザーによる情報共有のチャットログが流れ出した。

そこには所々に無駄が多く少し間違っているが試せば成功する、そんな状態で魂喰らい発動条件が揃っていた。


「え? 何故情報を把握されているのですか? ああ、貴女ではなくユーザーの方がです」

「私がマザーを通じて伝えたから。準備は出来ている。さっきそう言いました」

「言いましたけど! 確かに聞きましたけど! なんの準備ですか! もう!」

「魂喰らいが発動したらこの闘技場に飛ばすようにできている」

「ああそのための物ですか! 確かに街中で暴れられるよりは良いですね! じゃない! そもそもそんなサプライズ要らなかった!」


 疲れがピークに達したササキによってミーティングはここまでとなった。

残されたレプティリアン種と人間種について話している場合ではない。

ササキとチーフのみが残り他のGMたちは業務や休憩へと散っていった。


 レプティリアンの変更点。

必殺技の開放。

街の施設開放。

漁及び釣りの開放。


 人間の変更点。

必殺技の開放。

武器の残骸によるポイント交換の開始。

街の施設開放。

次からテストプレイ後半戦です

次からはもっとちゃんと主人公が活躍します


後半戦もどうぞよろしくお願いいたします



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