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27話 交易所


 テストプレイ開始5日目のある水曜日。時刻は夕方。

ルーリーは一人で職人通りを見て歩いていた。

彼女の今日の装備は上下セットアイテムの黒いチャイナドレス。体に巻きつくように一匹の龍が描かれていた。

これはクイド個人の好みで制作し、完成してから自分と蛇姫には足が無いと気付いた悲しみの傑作である。


 初日から遊んでいたプレイヤー達はだいたいが現在の上限である20レベルに達し、店を開く余裕がある者も増えてきており、通りには活気が満ちている。

華やかな喧騒の中には武器や防具の店だけではなく家具や飾りの雑貨などの店もいくつかあった。

店以外に個人が拠点を持つ手段はテスト段階の現在はない。そのためのアイテムは完全な無意味な物。

なので、店外から売られている物を眺める者は居ても中へと入っていくプレイヤーはゼロだ。


 作っている物に需要が無く売れないというのは制作側のプレイヤーも理解している。

何故売れもせずテスト終了と同時に消失するものを作っているのか。

それは、今回のテストプレイで制作したアイテムはデザインやレシピを個別に引き継ぐことが可能となっているから。

つまり彼、彼女らが行っているのは商売ではなく今後のための試作だ。


「交易所……他の街の素材を買える場所か。入ったことがなかったな」


 街の所々にあるコンビニサイズのお店【交易所】。不要なアイテムを出品したり欲しいアイテムをピンポイントで買える店だ。

売買の形式は自分で値段を指定して出品するものと最初の値段だけつけるオークション式の二つ。

雑魚モンスターのドロップ品などは数個から数十個まとめて出品することもできる。

プレイヤーだけではなく、ゲーム全体の進行度に応じNPCもアイテムを出品するようになるらしい。


 売買リストを見るとなん十種類ものアイテムが並んでいる。

どの街でも攻略が進んでいる証拠だ。


リストの一部にはこういったアイテムがあった。


懐郷の短剣。

短剣ガイコツの落とした古い短剣。

懐郷の片刃剣。

片刃ガイコツの落とした古い片刃剣。

懐郷の短槍。

短槍ガイコツの落とした古い短槍。


 全体的に古い武器に関係があるモンスターが出現する人間族の戦闘エリア【始まりの古戦場】。

そこの全域に武器ガイコツ系ドロップ品。

人型ガイコツモンスターで名前の通りの武器を手に持っている。



海の砂利。

カイテイツブテから剥がれた砂利。

海の石。

カイテイコロリの砕けた石。

海の大岩。

カイテイキョガンの破片。


 人魚系の戦闘エリア【海底登山口】に出現するカイテイガンセキ系のドロップ品。

道を歩いていると山の上の方から転がり落ちてくる。

戦闘による危険よりも突発的な事故による危険の方が高い。




追い求めるモノのハチマキ。

求道サルの敗北の証。

追い求めるモノのタスキ。

求道キツネの敗北の証。


 聖樹信仰系の戦闘エリア【勢力圏】に出現する特殊モンスター求道アニマルのドロップ品。

体に目印となる布を巻いた獣のモンスター。

倒しても敗北の証以外の素材を得ることは出来ない。



ガラクタV1。

なんにでも使えるガラクタ!食用可。

ガラクタV2。

用途が限られたガラクタ!食用不可。

ガラクタV3。

ほぼ使えないガラクタ!飲用不可。

ガラクタV4。

所持禁止なガラクタ!飲食可。


 ドールズ系の戦闘エリア【愚者の宝物庫】に出現するモンスター全般が落とす共通アイテム。

数字によってレア度の違いがあるわけではない。



 他にもたくさんの種類の素材たちが次々出品されすぐに買われていく。

リアルタイムで更新されていくそれらの情報は他の街のプレイヤーの存在を強く感じられた。


「ログを見るとドールズの方からの買い注文が多いようじゃな。……特別プレイヤーが多いというわけでは無いと思うが。もしや自分で食べるのか? そんな金のかかる育成方があるか?」


 ルーリーが取引画面を眺めていると名前の横に同じアイコンを付けたプレイヤー達が素材を買い集めていた。

そのアイコンの意味は所属する街の種類だ。デフォルメされた工場を背景に三つの歯車が並んだそれは、彼らがドールズたちの街【ファクトリー】に所属していることを表している。

 

 ルーリーが知っている唯一のドールズ種プレデター。この一番嫌われている種族は倒した相手の体を丸のみして捕食。

体内に取り込んだ得物を溶かし【因子】と呼ばれる要素を集めて腹に蓄積する。

そうして一定以上集まった因子を消費し進化していく。


 ぺんおんでもプレデターは似たような育成形態でドロップ素材を食べるのかもしれない。

ならばこの買い占めも理解が出来る。それでも人数の多さは気になるが。

ドールズの他二種も同様の成長を行うというのであれば全部解決なのだがルーリーにはそこまで分からなかった。


「まあどうでもよいか。どれだけ買占めが起こり値上がりしようがわしには関係ない」


 彼女は武器を装備していない。防具も制限が厳しい。

これは遊びの幅が狭まるデメリットが大きいように見えるが、装備を更新する際に求めらる素材の量が圧倒的に少ないというメリットもあった。

なによりテスト期間中では彼女の持っているダイア素材より上のアイテムは出ないだろう。


 長いスリットの入ったチャイナドレスの裾と尻尾を揺らし、ルーリーは交易所を後にする。

 彼女がこの買い占めの理由を知るのは翌々日、テスト開始から7日目の事だった。


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