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23話 二日目朝の運営達

テスト2日目・朝



 現在の時刻は朝9時。運営チームのみが入れるゲーム内特殊ルームでは、夜勤担当者と日勤担当者の間での引継ぎ確認が行われていた。

メンバーは、総合責任者であり司会進行を務める、活力のある緑色の藁人形アバターのササキ。

そして5つの陣営担当者が昼夜それぞれ5人ずつ。



「えーではテスト初日、夜間に起こったことを報告してください。みなさんお疲れでしょうから簡潔にでかまいません。詳細な報告書はそれぞれ読みますので。

それではどこから行きますか。人間担当のアイザワさんからいきます?」

「あっ自分からいいっすか?」

「えーっとキクチさん? はい。あなたは【ドールズ】担当ですね? 問題が?」


 最初に手を上げたのは戦車が二足歩行している風のロボチックなアバターの男性だった。

彼は全身に武器を装備しているようにみえるが全て飾りだ。運営用アバターにゲーム的楽しさをもたらす機能はついていない。

そんな彼が見た目の堅さとは裏腹に緩い口調で話し始める。


「うっす。えっと明け方近くから【マザー】が何度も【セーフモード解除】申請を送ってきてます。

俺の方で毎回却下してたんで、却下出し続けるか根本的な部分弄るか判断おねがいしまっす。以上っす」

「マザーって三台ともですか?」


「はい。全部っす。最初はプレデターからでしたがこれ、あーミーティングの直前に他二機も。理由は、昨日のダイアモンド素材、競売で流れてきたあれをドールズのプレイヤーが協力して買い集めてマザーに貢いでるのが原因っす」

「強い素材を貢がれたマザーが他種族プレイヤーの繁栄度を勘違いし、脅威に感じている。という感じですか?」


 ササキの問いにキクチが頷いた。

マザーというのはドールズの街を管理する三基のNPCだ。

一基がドールズ所属の1種族を担当し、ある程度の自己判断による権限開放を許されている。


 彼女らに許されていることの例を一つあげるとすれば、名前を持った戦闘用NPCの製造とそれらに対する指揮権。

世界の進行度に則したレベルのNPCを武力として使いモンスターの討伐や他の街への侵攻を行える。


 構成される3種族全てが無機物キャラクターであり、それらを生産統治する意志を持つ工場。それがマザーだ。


「セーフモードってなんだっけ」「必殺技の二次機能開放だよ」「魂喰らい、魔導機関開放、第三の手ですよ」

「さすがに早すぎですかね」「他と足並み揃えてほしいからね」「てか魂喰らいってOKなんですか」

「ゲート開放前に魂喰らいなんてさせたら勝手に蟲毒になって崩壊するだろ」「それはそれで見てみたいw」


【魂喰らい】

 この効果によって死亡した対象は復活しない。

【魔道機関開放】

 一時的に身体能力を著しく向上させる。

 終了時に術者から放射状に爆発ダメージを与える。

【第三の手】

 指定したアタッチメントポイントから腕を出現させる。

 腕は自動で行動を行う。


「魂喰らいはともかく第三の手くらい使わせて良くないですか?」

「そこに許可出すなら他のロックかけてる種族必殺全部開けないとフェアじゃないだろ」

「そこらが使えたら一気に個性出せて楽しくなりそうですよねー」

「まあ……ただ名前つけただけの技よりは見た目に差が出るんでね」



「あのーみなさん、私からも一ついいですか!」


 キクチからの報告に対し喧々諤々意見を言い合っていると、二足歩行で黒い獣アバターの女性が手をあげた。

彼女のキャラは太く長い尻尾が特徴のビントロングという動物をモチーフにしており、ずんぐりとした体形と黒い毛皮に安っぽい皮鎧を身に着けていた。


「ワタナベさんも? 聖樹でもなにか起こったんですか」

「樹王が早く他種族との交易をさせろと催促のメッセージをよこしてます。聖樹生長イベントですね」


 ワタナベと呼ばれたその黒い獣人のGMは、聖樹を守る【セントガード】という国を担当している。

夜勤明けで眠たいだろうに彼女の目はギラギラと輝いていた。


「生長ですか……そっちも早すぎます。それって確かどのルートを通ってもレイドボス出てきますよね? イノウエさん」

「ええ。ワタナベからデータを貰ったので確認しましたが、今回はレプティリアンの市場活性化によるイベントですので対象は【赤底の泥】運搬になります。この場合は泥に付着していた沼ヒルが聖樹の力を吸って巨大化という事態になります」


 ササキに話を振られたイノウエという女性のGM。彼女の見た目は赤い花を満開に咲かせた歩く木の化け物で人間的要素はない。

そんな彼女はセントガード担当チームのトップである。

自チームの状況は当然把握しており、他グループのGMたちが求める答えを彼女はすぐに開示した。


「ヒル、カマキリ、アリジゴク、ヤゴですね。順不同でイベント進行によって後半のボスが強化されていく」

「はい。50、55、60、70レベルと刻む設定です。テストでは最後まで行く予定はありません。せいぜい二体目です」

「そうですね。個人で達成するクエストではありませんし必要納品数の増減でコントロールも可能でしょう」


 お題が替わり、再び輪になってあーだこーだ言い合うGMたち。


「50って昨日のダイアモンドと同じだな」「あっちは倒されるためのボスじゃないだろ」「ゲートがあくのが最短で一週間後、それからクエストで数日だから終盤も終盤ですね」

「ん? それを前倒しするって話じゃないんですか?」「するわけ無いだろ」「今日明日に開けたってセントガードの方は平均レベルまだ10もいってないだろ」


「そっちで倒せなくてもこのイベントだとレイドボスは産地に戻りますよね?」「それだと戦力が昨日のメンバーに偏る。得するの昨日のでレベル上げれた奴だけじゃクレーム殺到」

「はーい! ノトリスと同じく樹姫出せばいいんじゃないの」「馬鹿いうなよその姫が生まれるためのイベントだぞ」「そうだっけ?」

「そうだよ。4体のレイドボスを倒したら聖樹が成長し開花、一番大きな花からお姫様誕生って流れ」

「その時インしてる全プレイヤー対象の強制カットイン映像だからな。めちゃくちゃ気合入ってるぜあれ」


「はいはい! みなさん! お静かに! 盛り上がっているところ申し訳ないんですが。そもそも種族間開通は次の土曜日と決まっているので今日は絶対あけませんよ!」


 ササキが、パンパン! と拍手エフェクトを大音量で再生し部下たちの騒ぎを鎮める。

アバターも同じく両手を叩き合わせる動作を行っているが、草の束でできた彼の腕はガサガサとしか鳴らない。


「両方却下ってことですかー?」

「当然です。今出た二つの担当者はちゃんと縛っておいてください。では次の方報告を、えっとお待たせしました。人間担当の──」


 ワイワイガヤガヤと運営達の報告会は続く。

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