22話 工事現場と遊びのお誘い
「ルーっち! ルーっち! なにしてんのー?」
ガキンガキンと地面を叩く作業をしているプレイヤー達。それと尻尾を上下左右に振りながら彼らに檄を飛ばしているルーリー。
そんな彼女にキュータルとカノエが近づいていく。
周囲には大きな音が響き、足音などの小さな効果音はかき消されてしまう。
「もっとじゃ! もっと力を──ん? キュータルにカノエか? どうしたのじゃ」
「……お誘いに来た、でござる。明日暇?」
肩が触れる距離まで二人に近づかれ、ようやくルーリーが二人の存在に気付いた。
彼女は時折ずれるヘルメットを直しながら首をかしげる。
ちなみに、ルーリーの頭に乗ったヘルメットは厳密に言えば彼女に装備されていない。頭の角が邪魔で入らないせいで装備不可能となっている。
なので、それっぽく見せる為だけに頭の上に置いた飾りオブジェクトと化したヘルメットは、彼女が頭を動かすと簡単に落ちてしまう。
「明日? 今ではなくか? ああ、もう夜も遅いようじゃな。気づかなかったのじゃ。おっと明日じゃな。うむ、これといってやりたいこと、目標などは無いぞ」
「よかったーえっとねー。お昼ので20になった人たちのグループでマップ踏破してみないかー? って」
「……人が少なそうなルームに集まって、みんなで、ババっと一気に走り抜ける。貴女が来てくれたら拙者、心強い」
「ふーむ? 明日も暇じゃから良いぞ。集合場所はどこなのじゃ?」
20になった人というのは昼に起きたマーマンイベントをルーリーらと共に戦ったプレイヤーを指すらしい。
イベント後すぐ抜けたルーリーと違い彼女ら二人は残ったメンバーと交流を深めていたのだろう。
「……クエスト受付場で集合」
「そんな感じでよろー!」
「あそこか。わかったのじゃ」
「あれ? 今更だけどルーっち服変えた? かわいー絵! もしかしてユーザー製?」
「うむ。そうじゃ! 二人こそ装備はそのままで行くのか?」
下手くそな白蛇の描かれたルーリーのシャツを顎で指し、キュータルが訊ねる。
その問いに頷いたルーリーは、逆に二人が未だ最初のままの姿なことに気づき逆に質問を重ねた。
「……店売り。忍者服なかった。武器だけは買い替えた」
「わたしすっぽんぽんのセクシーなカメだし」
「うむ。わしもペットに服を着せるのは反対派じゃ。だが、わしのこれを作った者ならば忍者服は作れると思うぞ。行ってみるか?」
「ほんと? いくいく! あっごほん。行くでござる」
「わたしも興味あるしいこーかな」
「うむ。しばし待て! ……まだインしておるな。連絡をしておくか」
────────────
ルーリーがクイドにメッセージを送るとすぐに、「店で待っている」という返事が戻ってきた。
それを確認した彼女はヘルメットを片付け、二人にPT申請を送る。
PTに加えた二人を連れ、職人通りへと移動を開始するルーリー。エリア移動のファストトラベルと徒歩で数分。
昼過ぎよりはいくらか人通りが減った道を歩いていくとすぐ目的の店舗が見つかった。
「いらっしゃーい! あなた一日に二度も来るなんてアタシのファンになっちゃったわけー? 素材を置いて行ってくれるなら何回来てもいいけわよ」
下の蛇の体をうねらせ、上の人の体をくねらせ、クイドが三人を出迎える。
「用があるのはわしではない。こっちの二人じゃ。カメの方がキュータル。忍者の方がカノエじゃ。
二人とも、こやつはクイド。変な趣味だが、今の段階で店を構えてるのは珍しいじゃろう。他が出てくるまで使ってやるくらいの気持ちで接してやってほしいのじゃ」
狭い店内の、しかも入り口で体を震わせている巨大なオブジェを押しのけたルーリーが二人を中の方へと招き入れる。
キュータルとカノエは軽く頭を下げながら「おじゃまします」とクイドの脇を抜けた。
「もうっ! 失礼ねルーリー! あら? 貴女たち昼間に見た子ね? それで、お嬢さんたちどんな服が欲しいのかしら。いまウチは材料持ち込みでやらせて貰ってるから気を付けてちょうだい」
「……家ノ右衛門。カノエです、でござる。あっあの、忍者服作れるでござるか?」
「忍者服……ええ材料さえあれば作れるわ。そっちのあなたは?」
カノエの要望に対し、顎に手を当て要望を叶えられるか考えるクイド。
だがすぐに頷き快諾した、そして目線を下げキュータルにも同じく訊ねる。
「んー? わたしは付き添いかなー愛されセクシー系だけどカメだし」
短い前足を少し上げてプラプラさせるキュータル。
「あら、アクセサリーも作れるわよ? 布から作れるタイプの物ならね。お揃いのスカーフとかどう?」
「アクセサリー? えーっとそれなら靴下ってつくれる? 店売りの足装備はつけられなかったけど、アクセサリースロットが【手】で4枠あったんだよね」
「ええ。そっちは簡単よ。アタシのデザインが好みに合えばね?」
「二人とも、こっちの機械で素材を作るのじゃ。付いてくるのじゃ」
「へー変な形だね」
客二人を機織り機へと連れて行くルーリー。
二人は機織り機という存在を初めて見たらしく、用途がいまいちピンと来ていなかったが、使い方はすぐに理解した。
アイテムを次々布板へ加工しクイドへ渡す二人。
キュータルの靴下はすぐ出来上がる、ほぼ見た目だけのアイテムなので気分で変えられるように何足かのセット。
カノエの忍者服は実物を作る前にデザインを本人に確認させ、納得したものができた。
他にも数点のアクセサリーを入手し二人ともご機嫌だ。
装備とアクセサリーの組み合わせお披露目会をしていると、キュータルが突然「あっ!」と大声をだした。
他のメンバーが彼女を見ると、キュータルは顔をクイドに向ける。
「クイドっち! お願いあるんだけど!」
「お願い? 追加のアクセサリー? じゃあなさそうね」
「うん。あとで片づけるからちょっと道具おいてもいい? 料理につかうの。買ったのはいいけど置ける拠点がないと試しにも使えなくって……」
「んーそのくらいなら全然いいわよ。えーっと設定でオンにしてっと。……よしっいいわよ」
「ありがとー! じゃあちょっと置かせてね! よいしょっと」
スペースが空いている部屋の隅に向かってキュータルがシステムを操作する。
すると、ボンッという効果音と共にルーリーと同じ大きさの何かが出現した。
「これは、コーヒーミルの様な機械じゃな。こっちの機織りといい微妙に古臭い機械なのはなぜなのじゃ? それに大きすぎじゃ」
「こーひーみるってなーに? コーヒーは飲むコーヒーだよね?」
「……コーヒーは黒くて小さい豆を粉々にするんだよキューちゃん」
「ふーん? 苦いから飲まないしわかんないや」
「実物は普通もっと小さいわ。ほら、使ってみせてちょうだい?」
「あっとっと! そうだった。えっと皮とかのモンスタードロップは入れられないねー。お魚と野菜セットとーあっ豆買ってたのあるよ!」
「魚をミルでひく……? 何ができるのじゃ」
キュータルの甲羅から人型の雲が浮き上がりミルに食材を放り込む。
ゴリッゴリッゴリッ!
「うーんとてもファンシーな見た目ね。あとその豆じゃコーヒーにはならないわよ」
「おおー出てきた。【食材ブロック・魚】【食材ブロック・野菜】【食材ブロック・穀物】だってさー」
だいたいの用事が終わり、翌日の集まりにクイドも誘ってこの日は解散となった。




